大手住宅・リフォーム会社が大苦戦|住生活を支える新聞株式会社のWebマガジン
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2024.11.04

大手住宅・リフォーム会社が大苦戦

大手住宅・リフォーム会社が大苦戦
所得が増えないのに家なんて買えない!

 建築コスト上昇の煽りを受けて、業績不振に陥る住宅・リフォーム会社が続出している。
9月、東証スタンダードに上場する土屋ホールディングス(北海道札幌市)は、2024年10月期に関して、連結純利益を従来予想の5億5000万円から3億8000万円下方修正し、前期比27%減の1億7000万円になる見込みだと発表した。売上高、営業利益、経常利益についても、それぞれ1%減の342億円、49%減の2億円、42%減の2億5000万円と、大幅な減収となる見込みだ。また、同時に発表した23年11月~24年7月期の連結決算は、最終損益が8億5200万円の赤字だった。前年同期も6億8200万円の赤字で、苦戦が続く。
 一方、分譲住宅やリフォームを手掛けるウッドフレンズ(愛知県名古屋市)も長引く不振から脱せずにいる。同社の2024年5月期の連結決算は、純損益が23億6700万円の大赤字で、前年同期の2億3000万円の赤字からさらに赤字幅が拡大した。
 タマホーム(東京都港区)も苦戦気味だ。2024年5月期の連結決算は、赤字ではないものの、売上高は前期比3.3%減の2477億3300万円、営業利益は同5.1%減の125億8600万円、経常利益は同4.5%減の128億7700万円と、軒並み数字を落とした。
 なぜ、大手住宅・リフォーム会社がこれほどまでに苦戦しているのか。その原因は、「資材価格の高騰」と、「住宅価格の上昇に伴う消費者の購買意欲の低下」にあると考えられる。つまり、

資材の仕入れ価格が上がったから家の値段を上げたところ、高過ぎて売れなくなった

というわけだ。もちろん、資材価格の値上がり分を住宅の販売価格に転嫁すること自体は、正しい経営判断だ。そうしなければ利益を確保することができないからだ。しかし、今の世の中の消費者の経済状況では、これに対応することができない。なぜなら、所得が上がっていないからだ。住宅に限らず、生活用品、食料、ありとあらゆるものの価格が上がっているにもかかわらず、所得は一向に増えない。こんな状況の中で、家まで値上がりしたのでは、買う気が失せて当然だ。消費者は今の生活を維持するだけで精一杯だ。値段の上がった家を買うだけの余裕はない。
 果たしてこの状況はいつまで続くのか。今のところ、出口は見えない。

「日経平均株価が史上最高値を更新!」
「円高が進む!」

 テレビやネットでは、連日のように景気の良いニュースが飛び交っているが、残念ながら、消費者の生活が良くなる気配はまったくない。むしろ悪化している感さえある。状況が変わるとしたら、「資材価格が下がる」か「国民の所得が目に見えて増える」かしたときだけだろう。しかし、前者については、世界情勢も大きく影響しているため期待薄だ。木材の世界的な需要は相変わらず旺盛なままであるし、輸送コスト上昇の原因となっているウクライナ危機も、今のところ収束の気配は見えない。まだまだ続きそうな気配すらある。今後も、資材価格は上がっても、下がることはないだろう。
 後者については、石破新内閣に一縷の望みを託したいが、仮に国民所得を上げるための有効な施策を行ったとしても、成果が現れるまでには一定の時間が必要だ。しかし、業績不振に陥っている住宅・リフォーム会社には、そんな時間の余裕はない。
 住宅市場はどうなっていくのか。少なくとも、現時点で業績不振に陥っている会社は、何か抜本的な改革を実施しない限り、状況が改善することはないのではないか。住宅会社は新築よりも売りやすいリフォームに、もっと注力するべきだろう。一件一件の販売価格が下がるため、数をこなさなければならないが、今はそれが最善の策だと思える。