新築戸建住宅の販売不振続く~岐路に立つ住宅業界~|住生活を支える新聞株式会社のWebマガジン
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2024.08.05

新築戸建住宅の販売不振続く~岐路に立つ住宅業界~

新築戸建住宅の販売不振続く~岐路に立つ住宅業界~
ウッドフレンズ最終損益の赤字大幅拡大

 住宅業界が岐路に立たされている。新築戸建住宅の販売が極端に低迷し、業績不振に苦しむ住宅会社が続出。地方では廃業に追い込まれる業者も散見され、専門家の中には「市場はもう壊滅寸前だ」と分析する声もある。いったい何が起きているのか。
 7月11日、東証スタンダード市場に上場する戸建て住宅販売のウッドフレンズが2024年5月期の連結決算を発表した。その内容は非常に衝撃的で、最終損益が23億円の大赤字になるというものだった。前期も赤字だったが、その額は2億3000万円に留まっていた。短期間で赤字が急拡大したということになる。売上高も332億円と、前期から24%も減った。営業損益に至っては、前期5億4700万円の黒字から、17億円の赤字に転落した。同社の林知秀社長は会見で「非常に厳しい数字だった」と述べたそうだが、本音はもっと深刻な思いなのではないか。
 今、住宅業界に何が起きているのか。たまに、「東京の家の価格がどんどん上がっている」という話を耳にするが、これは都心部のマンションだけに限った話だ。それこそ23区内の新築マンションは億越えも珍しくなく、今も飛ぶように売れている。それこそかつてのバブルを彷彿とさせるほどの勢いだ。しかし、ちょっと郊外に足を延ばすと、状況は一変する。何カ月も「販売中」と書かれた幟(のぼり)や看板が立ったままの新築住宅があちらこちらに点在している。それでも、首都圏であれば値引き等をすれば何とか売り切ることができる。だが、がんばって売っても、赤字覚悟とまではいかないが、利益はほとんど残らない。売れ残るよりはマシだというところだ。
 首都圏でこんな状況なのだから、地方都市はもっと厳しい。値引き云々でどうにかなる問題ではなく、そもそも新築住宅が見向きもされなくなりつつあるのだ。だから売れない。冒頭のウッドフレンズの業績不振も、住宅需要の低迷が大きな要因だ。売れないから在庫が膨らむ、在庫が膨らむから割引する、割引するから収益性が悪化する、それでもまだ在庫があるから新築を控える、まさに悪循環だ。結果、総販売戸数が減少し、業績は悪化。ほとんど打つ手なしといった状況だ。
 一体なぜ、ここまで新築の住宅需要がなくなってしまったのか。最大の要因は住宅価格の高騰だ。本紙でもたびたび取り上げてきたが、コロナ禍を機に、建材価格は高騰の一途をたどっている。「ウッドショック」という言葉も生まれたほどだ。加えて、国の定める基準に合わせるため、住宅のスペック自体も以前とは比べ物にならないほど上がっている。当然、それはすべて販売価格に反映される。ある住宅メーカーの関係者によると、スタンダードなモデルの家でも、価格は10年前の1.3倍になっているそうだ。

「収入が増えないのに、家の値段が1.3倍って・・・」

消費者が以前のように手を出せる状況ではなくなりつつあるのだ。
 新築が売れなくなった原因は他にもある。そう、中古住宅の台頭だ。ここにきて手頃な価格で購入でき、しかも新築よりも立地条件に恵まれているものも多い中古住宅の評価が急上昇している。以前は「中古」というだけで嫌悪感を抱く層が相当数いたが、リフォーム技術が進化したことで、新築に見劣りしない中古住宅が数多く供給されるようになり、ネガティブなイメージは払しょくされた。最近は初めから新築ではなく、中古を求める消費者も増えている。
 以上のような事情から、新築住宅はどんどん売れなくなっている。本紙では5月号で、飯田グループホールディングス(東京都武蔵野市)の業績不振について報道したが、同社も、特に地方において、新築の分譲戸建ての需要が大幅に落ち込んだことが業績の低迷につながったと説明している。圧倒的な営業力をもった同社ですらこのような状況なのだから、中小規模の住宅会社ではもっと状況は厳しいはずだ。
 今後、状況は改善するのだろうか。現状を見る限り、難しそうだ。少なくとも、この2、3年でどうにかなるとは思えない。建材価格は高止まりしたものの、以前の水準に戻りそうな気配はない。住宅購入に欠かせない長期ローンの金利も上がっている。今のままでは割高感が否めない新築を買おうというマインドにはならない。むしろ中古住宅やリフォームの需要がますます上がっていくのではないだろうか。