マンション・ビルの資産価値を守る10の法則~第1回 クラック対策~|住生活を支える新聞株式会社のWebマガジン
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2024.07.22

マンション・ビルの資産価値を守る10の法則~第1回 クラック対策~

マンション・ビルの資産価値を守る10の法則~第1回 クラック対策~
クラックを放っておくとどうなるの?その原因と対処法

 コンクリートでできたビルやマンションは見るからに頑丈そうで、木造や鉄骨造の建物に比べて、長持ちしそうなイメージがあります。しかし、そんなどんなに頑強な建物も時間の経過とともに必ず劣化します。特に“クラック”と呼ばれる亀裂が発生した際は注意が必要です。クラックから雨水が浸み込むと、内部に埋め込まれた鉄骨は錆び、耐震性能が大きく低下します。当然、そうなれば地震で倒壊するリスクが高まります。今回はクラックの恐怖と対処法について取材しました。
 外壁のひびや破損は、実際に目で見て確認するしかありません。目の届く範囲であれば、定期的な点検で見つけることができますが、目視できない高い場所や点検に危険が伴うような場所については、大規模修繕などを行う際に専門業者にチェックしてもらわなければなりません。長年、マンションの大規模修繕を手掛けているS社は点検時のポイントについて次のように話します。

「ビルやマンションの劣化は、クラックと呼ばれる亀裂以外にもいろいろな症状があります。例えば、壁面に白いシミが浮き出ている場合は、内部に雨水が浸み込んでいる可能性があります。コンクリートは雨水などに触れると、中和されてアルカリ性から中性に変化し、鉄骨を錆びさせます。白いシミはアルカリ成分がにじみ出てきたものなので、雨水がどこからかコンクリート内部に侵入している証拠となります。一刻も早く原因を突き止め、処置を施さなければなりません」

 もちろん、ごく小さなクラックまでいちいち対処していたのではキリがありません。とはいえ、「クラックの一つや二つ、放っておいても大丈夫だろう」とお考えは危険です。
さて、問題はお持ちの建物に、ヒビや破損が生じたらどう対処すれば良いのかという点です。言うまでもなく、最善の策は専門の業者に依頼して直すことです。しかし、業者に頼めばそれなりの費用が必要です。小さなひびが見つかるたびにいちいち業者に頼んでいたら、お金がいくらあっても足りません。他に手立てないのでしょうか?
 お困りの方には補修用のキットがおススメです。実は小さなヒビであれば、わざわざ業者に頼まなくても簡単に補修することができます。ただし、これはあくまでも応急処置だということをお忘れなく。繰り返しますが、一番の理想は専門の業者に依頼して直してもらうことです。
 自分で日々を直すためのアイテムはいくつかあります。最もポピュラーなものは、セメントチョークという補修材を使った補修法です。これは細かいコンクリートの粉を固めて成型したもので、適量の水分を与えて、問題の箇所に直接塗り込みます。しばらくすると固まって、ひびを塞ぎます。割れ目の奥までセメント粉が入り込むように、コンクリート面に擦りつけるようにしながら作業するのがポイントです。
 似たようなものでスプレー式のものもあります。ヒビに直接吹き付けて補修するだけなので使いやすいです。あえてそれぞれの欠点を上げるなら、チョークは亀裂の入った部分だけにセメントを塗布することができる反面、それなりの力作業になります。スプレーの方はというと、作業は非常に楽ですが、吹き付ける際に液状セメントが亀裂以外にも飛び散ってしまいます。
 よりきれいな仕上がりを求める方には、少々手間はかかりますが、最初に防水と接着機能を併せ持った「樹脂スプレー」でヒビの補修を行い、さらにその上からセメントスプレーを吹き付けて、目の細かい紙やすりやスポンジで表面を仕上げる方法がおススメです。チョークないしスプレーだけで補修する方法と比べると、多少手間と時間はかかりますが、仕上がりの美しさは比較になりません。
 気候の変化が激しく、さらに雨が多い日本では、どんなに質の良いセメントを使っていても、ヒビや亀裂が入る可能性があります。初期段階で気付けば大したコストをかけずに修理することができますが、いったん内部に雨水が浸透してしまうと、元の状態に直すのは大変です。最悪の事態に陥らないように、建物の外壁には常に気を配っておいてください。外壁の状態が気になる方は、お近くの全国優良リフォーム会員にご相談ください。