東京都、新築戸建ての太陽光パネル設置義務化|住生活を支える新聞株式会社のWebマガジン
豆知識

2024.07.01

東京都、新築戸建ての太陽光パネル設置義務化

東京都、新築戸建ての太陽光パネル設置義務化
住宅メーカーの動き鈍く、直近1年で半数が「1割未満」に留まる

 -国民のためだと言うけれど、本当にそうなのだろうか・・・。家の値段は上がるし、一体だれが得するのか・・・」

 2025年4月から、東京都では新築戸建て住宅に太陽光パネルの設置が義務付けられるが、ここにきて、同制度を巡ってさまざまな不満が噴出している。義務化まで1年を切った中、今も多くの反対意見がくすぶる同制度の現状について、関係者たちに話を聞いた。
 太陽光パネルの設置義務化が決定したのは2022年の12月。あれからすでに2年半が経過し、実施まで10カ月を切ったが、現状、歓迎ムードは一切ない。それどころか、さまざまな数字が明らかになるにつれて、制度の実施を疑問視する意見が出始めている。
 小池百合子都知事の肝いりの政策がなぜ、この段階になって多くの反対意見にさらされているのか。その原因の一つとして考えられるのは、設置が義務付けられる新築戸建て価格の値上がりだ。6月、日本経済新聞は主要住宅メーカーに実施したアンケート調査の結果を報じた。それによると、41社のうち4割が、太陽光パネルの設置義務化に伴い、新築戸建ての価格が100万円以上上がると見込んでいると回答したという。100万円だ。同制度の実施によって、望む、望まないにかかわらず、購入者は100万円もの金銭的な負担を強いられることになるのだ。さらに日経新聞は同報道に先立ち、都内の新築戸建て住宅のこの10年間の平均価格も、資材や人件費が高騰している影響で約980万円上がっていると報道。つまり、10年前と来年4月以降では、新築戸建て住宅の価格は約1100万円も違うことになる。ただでさえ新築の購入のハードルが年々上がっているのに、今回の施策でそれをさらに高くしようというのだ。誰が納得するというのか。
 もちろん、小池都知事ないし都の言い分もわからないではない。日本が自前の化石燃料に恵まれていないことは事実であるし、それゆえに将来を見据えて家庭ベースで電気を賄える仕組みを整えていけなければならないということも、理由として十分納得できる。しかし、それにともなう負担が大きすぎる。都民を含め、国民の実質賃金はずっと増えておらず、それにもかかわらず税金負担は増える一方だ。ただでさえ家計事情が苦しいのに、新築戸建てを購入する場合はさらに100万円の金銭負担を求められるとなれば、誰も家を買えなくなる。
 一方で家を供給する側のハウスメーカーはどう思っているのか。これに関しても、最近日経新聞が住宅メーカーに対して行った調査の結果を公表している。その内容は「直近1年間で都内で供給した戸建て住宅の太陽光パネル搭載率」に関してのものだ。それによると、調査対象となったメーカーの41社の約半数にあたる20社が「1割未満」と回答したという。一方で「8割以上」と回答したメーカーは、全国展開している一部の大手を含む8社しかなかった。みんな、他社の動きを探っている段階なのだろうか。いずれにせよ、全体的に動きが消極的だという印象は否めない。住宅メーカーも他社の様子をうかがっている段階なのだろうか。アンケートに回答したというあるメーカーの関係者は、

「おそらく義務化が始まる直前に、一定の駆け込み需要があると思います。逆に4月以降は、制度がある程度定着するまで、家が売れにくくなると予想しています。当社はそれらを見越し、来年4月までは太陽光パネルを設置せず、価格を抑えて販売を継続する方針です」

と当面の方針については話す。

 今なお否定的な意見が散見される都の新築戸建ての太陽光パネル設置義務化。住宅販売への影響も懸念されるだけに、今後の動きにも注目したい。