闘将野村「弱小企業を一流へと変える新経営理論」(第52回)|住生活を支える新聞株式会社のWebマガジン
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2024.06.10

闘将野村「弱小企業を一流へと変える新経営理論」(第52回)

闘将野村「弱小企業を一流へと変える新経営理論」(第52回)
23 社員教育と後継者を育てる人心掌握術①

 野村克也監督が鶴岡一人監督に認められて頻繁に試合で使われるようになるまでには、入団から3年かかっている。会社にとって一人前の戦力として役立つようになるのには3年かかったということだ。当時、鶴岡監督からかけられた言葉を、野村監督は今でもまだはっきりと覚えているのだという。

 2000年代初頭までは、企業にも働く側にも暗黙のルールで終身雇用という認識が当然のごとくあったため、例えば会社で多少嫌なことがあったり、勉強・研修と言われても社員は下積みだと考えて乗り越えようという認識があった。それは『会社のために』という愛社精神にもつながった。
 しかし、今は違う。

「有給は何日ですか?」
「給料はいくらですか?」
「待遇は?」

など社員が気にするのは自分のことばかりで、会社のことではない。
 一方、ネットが飛躍的な進歩を遂げた今日においては、上場企業さえも20年後にどうなっているのかわからない。仮に同じビジネスモデルを続けているとしたら、5年後には存在していないかもしれない。
 スピード情報社会の中では、どんなビジネスモデルもすぐに真似され、やがて価格競争に巻き込まれてしまう。なおさら5年後にこの会社にいるかわからない人間に、愛社精神を求めるのは難しい話である。
 これは「雇用」というものに対する企業の意識が、一昔前と比べて変化したことも影響しているかもしれない。例えば「リストラ」は以前であれば最終手段であり、恥とさえ言われていた。しかし、バブル崩壊やリーマンショックで多くの企業が倒産していく中で、いつの間にか「リストラ」による人員整理や部署の廃止は、費用対効果が合わないので仕方がないというような風潮が広がってしまった。
 ただ一社員が損得勘定で動いてしまうのは、ある意味、仕方がないかもしれない。しかしこれが、その会社の後継者や経営側の役員ということになれば違ってくる。
企業は、長く経営すればするほどいろいろな局面に遭遇し、ときには倒産危機や資金繰りの悪化などを経験することもあるだろう。しかし経営者は、どんな状況に陥ろうとも、沈みそうな船を漕ぎ続けなければならない。だが、愛社精神のない社員は、船を降りてしまうだろう。では今の後継者や役員はどうだろうか。危機的な状況の中でともに会社を支えようという愛社精神はどうやって植え付ければよいのか?

(次号へ続く)