リフォーム会社、工務店の残業時間に制限|住生活を支える新聞株式会社のWebマガジン
豆知識

2024.05.20

リフォーム会社、工務店の残業時間に制限

リフォーム会社、工務店の残業時間に制限
36協定を結んでも時間外労働は年720時間以内


 新年度を迎えた4月1日から、建設業において時間外労働の上限規制が始まりました。規制の内容については本紙でも以前に取り上げましたが、今回は改めてその影響について考察してみたいと思います。
 労働時間の上限規制は、2018年に公布された働き方改革関連法に基づく労働基準法の改正によって設けられたもので、翌年から業種や企業の規模などに応じて、段階的に適用対象が広げられてきました。この4月からは新たに建設業も適用対象となったため、建設会社や工務店、リフォーム会社などは規制に従い、従業員を業務に従事させなければいけなくなりました。
 それでは、上限規制の適用によって何が変わったのか、もう少し詳しく見ていきます。
労働基準法においては、労働時間は原則1日8時間、週40時間までで、毎週少なくとも1回の休日を取得するようにと定められています。もしもこれを超えて従業員を残業させたい場合は、雇用者は労使間で36協定を締結し、労働基準監督署へ届け出をしなければなりません。これにより、原則月45時間以内、年360時間以内の時間外労働に従事させることが可能になります。この点については、今回の上限規制適用後も変更はありません。
大きく変わったのは、建設業における例外規定です。建設業においてはこれまで、

-臨時的な特別な理由がある場合は上限を超えて業務に従事させることができる-

という内容の特別条項付きの36協定を結ぶことで、実質時間外労働の上限なしで、従業員を業務に従事させることができました。しかし、新たに適用された規制によって、今後はこうした例外的な措置ができなくなります。仮に特別条項付きの36協定を結んだ場合でも、時間外労働は年720時間以内、月単位の時間外労働と休日労働は合計100時間未満までとし、また、時間外労働と休日労働の合計は2~6カ月の月平均は80時間以内、時間外労働が45時間を超える月は年6回までに抑えなければなりません。
もしも上限を超えて従業員を働かせた場合は、厳しい罰則の対象となります。最悪の場合、労働基準法第36条6項違反とみなされ、6カ月以下の懲役または30万円以下の罰金が課されることになります。もちろん、時間外労働が規制内であっても、前提として36協定を結んでいなかったら法律違反となります。
気になるのが建設会社、工務店への影響です。もっとも懸念されるのは、残業時間が規制されることで工期が伸び、人件費や現場管理費などの負担が増すことです。特に働き手の少ない地方の建設業への影響は計り知れません。発注者が事情を組んで予算を増やしてくれれば良いですが、それはまず期待できません。建設業にとって今回の残業規制は、死活問題になりかねないのです。
 とはいえ、これが不要な規制かといえば、そうとも言い切れません。建設業が他の業種と比べて残業時間が飛び抜けて長いのは事実であり、是正が必要なのは明らかだからです。おそらくこの点を改善しなければ、人手不足問題は永遠に解決しないでしょう。
 ただ、長時間労働の改善だけに目を向けていては、建設業が抱える問題を抜本的に改善することはできません。一方で必要なのは、工期の適正化です。特に民間工事は、公共工事に比べてタイトなケースが多いので、早期の改善が必要でしょう。国交省は今年度から、国が発注する直轄工事については週休2日を確保することを前提とした工期の設定を推進しています。民間工事もこれに倣い、適正な工期を設定できるようになれば、労働者の負担はおのずと軽減され、人手不足も改善するはずです。工事発注者の理解を得るのには時間がかかるかもしれませんが、業界が一丸となって取り組めば、決して不可能ではないはずです。