下の階の住人が糞の被害でクレーム
賃貸経営は「入居者からのクレームとの戦いだ」と言っても過言ではありません。程度の差こそあれ、クレームは日常的に発生するものであり、ゼロにすることはほぼ不可能です。ただし、だからといって暗い気持ちになる必要はありません。大切なのは、クレームが発生したときにどう対応するかです。「ピンチはチャンス」という言葉があるように、クレームが発生したときにすぐに問題を解決すれば、入居者との信頼関係は強くなります。逆に放置したり、いい加減な対応をしてしまうと、二次クレームに発展したり、最悪の場合、退去に至ることもあります。今回はクレーム対応に失敗した事例をご紹介します。
「すぐに適切な対応をしていればよかったのに・・・。忙しさにかまけて対処が遅れたばっかりに、大変なことになってしまった・・・」
こう話すのは、東京都大田区で5階建て総戸数25戸の賃貸マンションを所有する伊藤和夫オーナーです。一体何があったのでしょうか?
伊藤さんの携帯電話に、入居者からクレームの電話がかかってきたのは2021年の7月。かけてきた3年ほど前から4階の部屋に住むAさんでした。その内容は、ここのところバルコニーでハトを見かけることが多くなった。居つかれたら困るから何とかしてほしい、というものでした。しかし、伊藤さんはこのとき、たまたま他の部屋で発生した水漏れのクレームに対応したため、Aさんのクレームにすぐに対応することができませんでした。やむを得ず、
「もしかしたら偶然、寄り道しただけかもしれません。もうしばらく様子を見て、それで何かあれば対応します」
と言って電話を切りました。その後、2週間ほど経っても、Aさんからの連絡はありませんでした。
「やっぱりAさんの思い過ごしだったんだろう」
伊藤さんはAさんからのクレームは解決したと思ったそうです。
しかし、安心したのも束の間、クレームの電話から20日後、伊藤さんの携帯電話に再びAさん連絡が入りました。
「何ですぐに対応してくれなかったんだ!半月ほど出張している間にバルコニーがハトの糞だらけになってしまった。大切に育てていたパキポディウムグラキリス(塊根植物)も糞のせいで枯れてしまったじゃないか!いったいどうしてくれるんだ!」
Aさんは前回の電話のときとは打って変わって、とても興奮している様子だったそうです。
驚いた伊藤さんは、バルコニーの状況を確認するために、すぐにAさんの部屋を訪ねました。そしてそこで、とんでもない光景を目の当たりにしました。
「ベランダ中、ハトの糞だらけになっていました。おまけに梅雨前で気温が上がっていたため、異臭もしました。あまりにひどい状況に、しばらく立ち尽くすしかありませんでした」
伊藤さんはマンションから徒歩で約10分の場所に住んでいたため、入居者からのクレームは自分で対応し、大きなトラブルがあったときだけ、客付けを頼んでいる不動産会社に相談していました。今回のケースは自分では手に負えないと考え、すぐに不動産会社に電話しました。Aさんの部屋に駆け付けた不動産会社の担当者Sさんは現場を一目見るなり、伊藤さんに
「私も仕事柄、何度かハトの被害に遭った物件を見てきました。過去のケースから考えると、この部屋以外にも、ハトで迷惑している方がいるかもしれません。他の入居者からは同じようなクレームはありませんでしたか?」
と尋ねました。伊藤さんは最近の出来事を思い返してみましたが、他に思い当たることがありませんでした。
「そうですか。他に被害がないのであればそれに越したことはありませんが・・・。とりあえず、こちらの部屋に関してはすぐに清掃業者を手配し、その後、ハトが寄り付かないように忌避剤を撒きましょう。糞で駄目になってしまった植物に関しては、別途、対応を考えましょう」
しかし、3人で相談を始めたそのときでした。どこからともなく複数のハトの鳴き声が聞こえてきたそうです。Sさんはすぐにバルコニーから身を乗り出し、周囲を見渡しました。
「伊藤さん、原因が分かりましたよ」
数分後、伊藤さんとSさんは、Aさんの部屋の真上にある部屋にいました。
「Aさん宅の真上の部屋は1年ほど空きになっていました。Sさんと一緒に様子を見に行ったところ、バルコニーに複数のハトがいるのを確認できました。どうやら空き部屋になっている間に、バルコニーにハトが棲みついてしまったようです。Aさんの部屋のベランダで糞をしていたのは、ここに棲みついたハトだったんです」
伊藤さんはSさんのアドバイスを従い、5階の空き部屋のバルコニーにはハトが近づかないように専用のネットを設置しました。
「5階の部屋は海外留学中の娘が戻ってきたときのためにわざと空けていました。しかし、コロナ禍で帰国が延びてしまい、1年も空室の状態が続いてしまいました」
今回のハト被害で、伊藤さんはバルコニーの清掃代と忌避剤施工費、ハト除けネット設置費、Aさんの植物の弁償などで、総額約20万円を出費しました。最初にAさんから連絡を受けた際にすぐに対応していれば、もしかしたら植物への被害は防げたかもしれません。クレーム対応のまずさが被害拡大につながった事例だと言えるでしょう。賃貸経営に関するご相談はお近くの全国優良リフォーム会員まで。
賃貸経営は「入居者からのクレームとの戦いだ」と言っても過言ではありません。程度の差こそあれ、クレームは日常的に発生するものであり、ゼロにすることはほぼ不可能です。ただし、だからといって暗い気持ちになる必要はありません。大切なのは、クレームが発生したときにどう対応するかです。「ピンチはチャンス」という言葉があるように、クレームが発生したときにすぐに問題を解決すれば、入居者との信頼関係は強くなります。逆に放置したり、いい加減な対応をしてしまうと、二次クレームに発展したり、最悪の場合、退去に至ることもあります。今回はクレーム対応に失敗した事例をご紹介します。
「すぐに適切な対応をしていればよかったのに・・・。忙しさにかまけて対処が遅れたばっかりに、大変なことになってしまった・・・」
こう話すのは、東京都大田区で5階建て総戸数25戸の賃貸マンションを所有する伊藤和夫オーナーです。一体何があったのでしょうか?
伊藤さんの携帯電話に、入居者からクレームの電話がかかってきたのは2021年の7月。かけてきた3年ほど前から4階の部屋に住むAさんでした。その内容は、ここのところバルコニーでハトを見かけることが多くなった。居つかれたら困るから何とかしてほしい、というものでした。しかし、伊藤さんはこのとき、たまたま他の部屋で発生した水漏れのクレームに対応したため、Aさんのクレームにすぐに対応することができませんでした。やむを得ず、
「もしかしたら偶然、寄り道しただけかもしれません。もうしばらく様子を見て、それで何かあれば対応します」
と言って電話を切りました。その後、2週間ほど経っても、Aさんからの連絡はありませんでした。
「やっぱりAさんの思い過ごしだったんだろう」
伊藤さんはAさんからのクレームは解決したと思ったそうです。
しかし、安心したのも束の間、クレームの電話から20日後、伊藤さんの携帯電話に再びAさん連絡が入りました。
「何ですぐに対応してくれなかったんだ!半月ほど出張している間にバルコニーがハトの糞だらけになってしまった。大切に育てていたパキポディウムグラキリス(塊根植物)も糞のせいで枯れてしまったじゃないか!いったいどうしてくれるんだ!」
Aさんは前回の電話のときとは打って変わって、とても興奮している様子だったそうです。
驚いた伊藤さんは、バルコニーの状況を確認するために、すぐにAさんの部屋を訪ねました。そしてそこで、とんでもない光景を目の当たりにしました。
「ベランダ中、ハトの糞だらけになっていました。おまけに梅雨前で気温が上がっていたため、異臭もしました。あまりにひどい状況に、しばらく立ち尽くすしかありませんでした」
伊藤さんはマンションから徒歩で約10分の場所に住んでいたため、入居者からのクレームは自分で対応し、大きなトラブルがあったときだけ、客付けを頼んでいる不動産会社に相談していました。今回のケースは自分では手に負えないと考え、すぐに不動産会社に電話しました。Aさんの部屋に駆け付けた不動産会社の担当者Sさんは現場を一目見るなり、伊藤さんに
「私も仕事柄、何度かハトの被害に遭った物件を見てきました。過去のケースから考えると、この部屋以外にも、ハトで迷惑している方がいるかもしれません。他の入居者からは同じようなクレームはありませんでしたか?」
と尋ねました。伊藤さんは最近の出来事を思い返してみましたが、他に思い当たることがありませんでした。
「そうですか。他に被害がないのであればそれに越したことはありませんが・・・。とりあえず、こちらの部屋に関してはすぐに清掃業者を手配し、その後、ハトが寄り付かないように忌避剤を撒きましょう。糞で駄目になってしまった植物に関しては、別途、対応を考えましょう」
しかし、3人で相談を始めたそのときでした。どこからともなく複数のハトの鳴き声が聞こえてきたそうです。Sさんはすぐにバルコニーから身を乗り出し、周囲を見渡しました。
「伊藤さん、原因が分かりましたよ」
数分後、伊藤さんとSさんは、Aさんの部屋の真上にある部屋にいました。
「Aさん宅の真上の部屋は1年ほど空きになっていました。Sさんと一緒に様子を見に行ったところ、バルコニーに複数のハトがいるのを確認できました。どうやら空き部屋になっている間に、バルコニーにハトが棲みついてしまったようです。Aさんの部屋のベランダで糞をしていたのは、ここに棲みついたハトだったんです」
伊藤さんはSさんのアドバイスを従い、5階の空き部屋のバルコニーにはハトが近づかないように専用のネットを設置しました。
「5階の部屋は海外留学中の娘が戻ってきたときのためにわざと空けていました。しかし、コロナ禍で帰国が延びてしまい、1年も空室の状態が続いてしまいました」
今回のハト被害で、伊藤さんはバルコニーの清掃代と忌避剤施工費、ハト除けネット設置費、Aさんの植物の弁償などで、総額約20万円を出費しました。最初にAさんから連絡を受けた際にすぐに対応していれば、もしかしたら植物への被害は防げたかもしれません。クレーム対応のまずさが被害拡大につながった事例だと言えるでしょう。賃貸経営に関するご相談はお近くの全国優良リフォーム会員まで。