真説賃貸業界史 第49回「プロパンガス販売業から身を興した大阪の企業家主」|住生活を支える新聞株式会社のWebマガジン
豆知識

2022.10.24

真説賃貸業界史 第49回「プロパンガス販売業から身を興した大阪の企業家主」

真説賃貸業界史 第49回「プロパンガス販売業から身を興した大阪の企業家主」
存在感抜群の北建設、無借金経営の森本興産

 少し前に、「日本一の家主は誰か」というテーマで、福岡発祥のOl.CAPITAL(東京都品川区)を取り上げた。今回もそれに引き続き、日本を代表する家主企業を取り上げたい。取り上げるのは2社。ともにプロパンガス業としてスタートし、関西有数の家主企業に成長した北建設(大阪府吹田市)と森本興産(大阪府守口市)だ。

 大阪市内と北摂エリアを結ぶ大阪メトロ御堂筋線沿いに並び立つマンション群の中に、「豊かな住まいづくりの北建設」というキャッチフレーズの看板が設置されたマンションがある。知らない人が見たら、その規模から一瞬、分譲マンションだと思ってしまいそうだが、実は賃貸マンションだ。所有者は、看板にもある北建設(大阪府吹田市)という会社だ。実はこの会社、知る人ぞ知る関西を代表する大家主だ。
 同社が創業されたのは1956年。プロパンガスの販売をする傍ら、住宅の建売を行って業績を伸ばした。不動産賃貸業に進出したのは1972年のこと。「グランドハイツ」のブランドで御堂筋沿線を中心に物件の開発を進めた。家主業の実績は今年で50年になるわけだ。
同社が大きく飛躍するきっかけとなったのは、1990年の大阪市北区への進出だ。天神橋界隈を基盤に大型のハイグレードマンションを次々と建設して注目を集めた。天神橋6丁目交差点に建つ「ノルデンタワー天神橋アネックス」は、そのスケールとグレードの高さから、同社を象徴する物件だ。現在、「EQUINA106」というビル(旧106FUKUBLD)が建つはす向かいの土地が売りに出された際には、自社のマンションを建設すべく競争入札に挑んだが、残念ながらFUKU BLD.(大阪市中央区)に競り負けた。仮に落札できていれば、同交差点は“北建設の交差点”と呼ばれるようになっていたかもしれない。
少々話は逸れたが、同社はその後も大型の賃貸マンションの開発を続け、創業50周年の節目となった2014年には、通算50棟目をなる「ノルデンハイム江坂Ⅲ」を竣工した。2022年8月時点では、その数は73棟まで増えている(本紙調べ)。おそらく大阪地場の会社としては、最大規模の家主なのではないか。
 大阪には、北建設と同じように、プロパンガス業を祖業にする大家主企業が他にもある。京阪神沿線を主戦場とする森本興産(大阪府守口市)だ。
同社は、現会長の森本博氏が個人事業として1952年に創業したメトロ商会がルーツだ。1955年の法人化を経て、1969年に住宅の建て売り事業に進出。これで一気に業績を伸ばし、1984年にはマンション営業部を新設し、分譲マンション開発もスタートさせた。
不動産賃貸業に進出したのは1989年。マンション用地として仕入れていた京阪神沿線の土地を活用し、積極的に自社物件の開発を行い、2015年には保有戸数が3000戸を突破した。
同社のすごさは、創業時から無借金経営を続けているところにある。土地の仕入れから建築まで、すべてを自己資金だけで賄っているというのだから驚きだ。バブル期も堅実経営を貫き、創業から1度たりとも、1円の赤字すら計上したことがないという。
 ホームページを見ると、同社は7000万円の資本金とは別に、約137億円を積み立てているという。ただでさえ毎月3000戸分の安定した家賃収入があるのに、さらに十分な資本余力もある。しかも無借金だ。森本興産は絶対に潰れることのない最強の家主企業と言えるだろう。
関西には他にも多くの大家主企業がある。また機会があれば取り上げてみたいと思う。