不振の原因は11%の落ち込みを見せた家電部門か?
コロナ禍の巣ごもり需要で復調したかに見えたヤマダホールディングス(群馬県高崎市)だが、11月に発表した2021年4~9月期連結決算で、再び苦しい状況に立たされていることが明らかになった。
決算書によると、売上高は前年同期から7%減り約8003億円、営業利益は24%減の350億円だった。なぜ、好調だった昨年から一転、同社は再び営業減益となってしまったのか。実は足を引っ張ったのは他でもない、グループの主力である家電販売事業だ。昨年の同じ時期と比べて、売上高は11%も落ち込んだ。
もともと家電部門はここ数年、ネット業者の台頭などで価格面での強みが失われたことで顧客離れが進み、業績不振が続いていた。3年前には、ライバルの家電量販店が好調な業績を上げる中で、1社だけ大幅減益になるなど、まさに“一人負け”の状態に陥っていた。それが昨期になって持ち直したのは、コロナ禍で巣ごもり需要が伸び、さらにそれを後押しするように、夏に国民1人当たりに10万円の特別定額給付金が支給されたからだ。家電販売の売上が伸びたのは、何も同社に限ったことではない。つまり、昨年の好調な業績はあくまでも給付金効果によるものであって、業績不振に陥った原因が改善されたためではない。巣ごもり需要の反動減で、今期の業績が振るわないのが、その何よりの証拠だ。
同社は家電販売偏重の企業体質を改革すべく、住宅や住宅設備、家具、不動産サービス、リフォーム、インテリアなどを総合的に提供する店舗の構築に取り組んでいる。その一環として、住宅会社やリフォーム会社などをM&Aし、次々にグループの傘下に組み入れてきた。特に力を入れている新築住宅販売やリフォームなどを手掛ける住建部門は、昨年10月に子会社化したヒノキヤグループの受注が好調だったこともあり、今回の決算では3億円の営業利益を出した。懸案材料だった家具部門も、大塚家具がここにきて底力を見せはじめ、売上高を2割伸ばした。期待されたシナジー効果が、一応出始めているように見える。となると、家電部門の不調がますます気になる。
いまだ家電量販店業界でトップのシェアを誇りながら、なぜ家電部門の業績は伸び悩んでいるのか。一番の原因は、「住宅やリフォームと一緒に家電も売る」というシナリオが、期待されたほどうまくいっていないことにあると考えられる。そもそも、家と一緒に家電を買ってもらったところで、その売上が業績に及ぼす影響はごくわずかだ。例えば住建部門を牽引するヒノキヤグループは、8月の2021年12月期第2四半期決算時点で住宅を約1500棟販売していることから、年間で2000棟超の販売が見込まれる。しかし、仮にその全購入者がヤマダ電機で100万円分の家電を購入したとしても、その合計金額はわずか20億円にしかならない。ヤマダHDがグループ全体の今期目標と掲げる8000棟で計算しても80億円だ。年商約1兆7000円億円のグループ規模を考えれば、わずかな売上だ。つまり、住建部門がいくらがんばっても、今のレベルの販売棟数ではシナジー効果は極めて低く、家電販売の起爆剤には到底なりえないというわけだ。
となると、他に家電を売る方法を考えなければならない。ライバルのヨドバシカメラはECに活路を見出した。その売上は2020年で約2200億円に達し、全体の3割超を稼ぎ出している。ヤマダ電気も一応、ECに力を入れてはいるが、知名度だけ考えれば、ヨドバシカメラの「ヨドバシ・ドット・コム」の方が、ヤマダ電機の「ヤマダウェブコム」よりはるかに高い。
ヤマダホールディングスが目指す家電と住宅、リフォーム、不動産サービス、家具、インテリアなどの販売が、高い水準でシナジー効果を発揮する日は果たして来るのか。それができない限り家電部門の不振はまだまだ続くかもしれない。今後の動向に注目したい。
コロナ禍の巣ごもり需要で復調したかに見えたヤマダホールディングス(群馬県高崎市)だが、11月に発表した2021年4~9月期連結決算で、再び苦しい状況に立たされていることが明らかになった。
決算書によると、売上高は前年同期から7%減り約8003億円、営業利益は24%減の350億円だった。なぜ、好調だった昨年から一転、同社は再び営業減益となってしまったのか。実は足を引っ張ったのは他でもない、グループの主力である家電販売事業だ。昨年の同じ時期と比べて、売上高は11%も落ち込んだ。
もともと家電部門はここ数年、ネット業者の台頭などで価格面での強みが失われたことで顧客離れが進み、業績不振が続いていた。3年前には、ライバルの家電量販店が好調な業績を上げる中で、1社だけ大幅減益になるなど、まさに“一人負け”の状態に陥っていた。それが昨期になって持ち直したのは、コロナ禍で巣ごもり需要が伸び、さらにそれを後押しするように、夏に国民1人当たりに10万円の特別定額給付金が支給されたからだ。家電販売の売上が伸びたのは、何も同社に限ったことではない。つまり、昨年の好調な業績はあくまでも給付金効果によるものであって、業績不振に陥った原因が改善されたためではない。巣ごもり需要の反動減で、今期の業績が振るわないのが、その何よりの証拠だ。
同社は家電販売偏重の企業体質を改革すべく、住宅や住宅設備、家具、不動産サービス、リフォーム、インテリアなどを総合的に提供する店舗の構築に取り組んでいる。その一環として、住宅会社やリフォーム会社などをM&Aし、次々にグループの傘下に組み入れてきた。特に力を入れている新築住宅販売やリフォームなどを手掛ける住建部門は、昨年10月に子会社化したヒノキヤグループの受注が好調だったこともあり、今回の決算では3億円の営業利益を出した。懸案材料だった家具部門も、大塚家具がここにきて底力を見せはじめ、売上高を2割伸ばした。期待されたシナジー効果が、一応出始めているように見える。となると、家電部門の不調がますます気になる。
いまだ家電量販店業界でトップのシェアを誇りながら、なぜ家電部門の業績は伸び悩んでいるのか。一番の原因は、「住宅やリフォームと一緒に家電も売る」というシナリオが、期待されたほどうまくいっていないことにあると考えられる。そもそも、家と一緒に家電を買ってもらったところで、その売上が業績に及ぼす影響はごくわずかだ。例えば住建部門を牽引するヒノキヤグループは、8月の2021年12月期第2四半期決算時点で住宅を約1500棟販売していることから、年間で2000棟超の販売が見込まれる。しかし、仮にその全購入者がヤマダ電機で100万円分の家電を購入したとしても、その合計金額はわずか20億円にしかならない。ヤマダHDがグループ全体の今期目標と掲げる8000棟で計算しても80億円だ。年商約1兆7000円億円のグループ規模を考えれば、わずかな売上だ。つまり、住建部門がいくらがんばっても、今のレベルの販売棟数ではシナジー効果は極めて低く、家電販売の起爆剤には到底なりえないというわけだ。
となると、他に家電を売る方法を考えなければならない。ライバルのヨドバシカメラはECに活路を見出した。その売上は2020年で約2200億円に達し、全体の3割超を稼ぎ出している。ヤマダ電気も一応、ECに力を入れてはいるが、知名度だけ考えれば、ヨドバシカメラの「ヨドバシ・ドット・コム」の方が、ヤマダ電機の「ヤマダウェブコム」よりはるかに高い。
ヤマダホールディングスが目指す家電と住宅、リフォーム、不動産サービス、家具、インテリアなどの販売が、高い水準でシナジー効果を発揮する日は果たして来るのか。それができない限り家電部門の不振はまだまだ続くかもしれない。今後の動向に注目したい。