入居率ゼロなら、土地は自用地評価になる!?
アパートの建築は、土地の所有者が行う相続税対策の王道です。しかし、相続税対策ありきでアパートを建ててしまったオーナーの中には、その後の賃貸経営で失敗し、結局、物件ごと土地を手放してしまったという方もいます。これではせっかくの相続税対策も水の泡です。失敗事例を取材しました。
東京都東村山市在住の高橋芳次さん(仮名・72)は今から10年ほど前に、駅から徒歩で15分にあった自身が所有する土地にアパートを建築しました。きっかけは、知人が相続税対策でアパートを建てたという話を耳にしたことでした。それまであまり相続について深く考えることはなかった高橋さんでしたが、対策をしているのとしていないのとでは、相続税額には雲泥の差が出るということを知り、自身も何かした方が良いのではないかと、地元の税理士事務所に相談しました。
税理士は高橋さんから資産状況について一通りヒアリングした後、「高橋さんご本人に金融機関でお金を借りてもらい、アパートを建築する」というプランを提案しました。一般的に、相続税対策でアパートを建てる場合、所有者自身が銀行から借り入れて貸家建付地にした方が、土地評価が2割前後下がるため節税効果が高いとされていますが、奥さんや息子さんらに、ご自身の名義でアパートを建ててもらい、納税資金を貯蓄してもらうという方法もあります。高橋さんのケースでは前者の方法を選択したことになります。
さて、問題はここからです。翌年、アパートは無事に完成したのですが、12月という絶好のタイミングで入居募集をスタートしたのにもかかわらず、なかなか満室になりませんでした。結局、4月を迎えたタイミングで入居が決まったのは、12戸中6戸という有様。入居が決まった6戸についても、うち2戸は3月の終わりに駆け込みで入った申し込みだったそうです。
新築にもかかわらず、なぜこんなに入居が決まらなかったのでしょうか?問題の一つは立地でした。冒頭でも述べたように、高橋さんの所有していた土地は、駅から徒歩で15分と、利便性は決して良くありませんでした。さらに、隣接する土地にはかなり大きなマンションが建っていて、あまり日当たりも良くありません。また、高橋さんのアパートが完成したのと同じタイミングで、より駅に近い場所に、賃貸マンションが3棟も竣工していました。さまざまな悪条件が重なった結果、高橋さんの物件はなかなか検討候補に入れてもらえなかったようでした。
さて、入居率が悪いとどんなことが起こるのでしょうか?おそらく、ほとんどの方が真っ先に頭に思い浮かべるのは、
「家賃収入が減るから、借入金の返済が大変になる」
ということではないでしょうか?しかし、影響はそれだけではありません。ご存知ない方もおられるかと思いますが、実は入居率は相続税額にも大きな影響を及ぼします。
例えば相続が発生した時点で、アパートの入居率がゼロだった場合、評価はどうなると思いますか?入居募集を行っていればまだしも、もしも行っていなかった場合、最悪の場合、貸家建付地ではなく自用地として評価されてしまうため、土地の評価は一切下がりません。つまり、わざわざ借金をしてアパートを建てたのに、相続税は一切下がらないというわけです。これは極端な事例ですが、いずれにせよ、アパートを建てて相続税対策を行うのであれば、きちんと経営も考えなければなりません。家賃を下げることはお勧めしませんが、どうしても入居率が上がらないのであれば、家賃を少し下げてでも満室にしてしまった方が、トータル的にはお得ということもあります。家賃損失と相続税、どちらの額の方が大きいかを比較検討して判断すると良いでしょう。
高橋さんもこのままだと、節税効果を得ることができません。税理士と相談した結果、地元で最大手の不動産業者に状況を説明し、非常に簡易ながら部屋のリフォームを行いました。アクセントクロスや室内物置など、1室あたりのわずか7万円のリフォームで、3カ月後には全国の入居が決まったそうです。以降、高橋さんは賃貸経営にも興味を持つようになり、セミナーや勉強会などにも積極的に参加するようになりました。
-賃貸住宅を建てれば節税できる-というのは誤解です。ただ建てるだけでなく、経営まできちんと行わなければ、節税効果を得ることはできません。相続税対策でお困りの方は、一度、お近くの相続不動産実務主任者に相談してみてはいかがでしょうか。
アパートの建築は、土地の所有者が行う相続税対策の王道です。しかし、相続税対策ありきでアパートを建ててしまったオーナーの中には、その後の賃貸経営で失敗し、結局、物件ごと土地を手放してしまったという方もいます。これではせっかくの相続税対策も水の泡です。失敗事例を取材しました。
東京都東村山市在住の高橋芳次さん(仮名・72)は今から10年ほど前に、駅から徒歩で15分にあった自身が所有する土地にアパートを建築しました。きっかけは、知人が相続税対策でアパートを建てたという話を耳にしたことでした。それまであまり相続について深く考えることはなかった高橋さんでしたが、対策をしているのとしていないのとでは、相続税額には雲泥の差が出るということを知り、自身も何かした方が良いのではないかと、地元の税理士事務所に相談しました。
税理士は高橋さんから資産状況について一通りヒアリングした後、「高橋さんご本人に金融機関でお金を借りてもらい、アパートを建築する」というプランを提案しました。一般的に、相続税対策でアパートを建てる場合、所有者自身が銀行から借り入れて貸家建付地にした方が、土地評価が2割前後下がるため節税効果が高いとされていますが、奥さんや息子さんらに、ご自身の名義でアパートを建ててもらい、納税資金を貯蓄してもらうという方法もあります。高橋さんのケースでは前者の方法を選択したことになります。
さて、問題はここからです。翌年、アパートは無事に完成したのですが、12月という絶好のタイミングで入居募集をスタートしたのにもかかわらず、なかなか満室になりませんでした。結局、4月を迎えたタイミングで入居が決まったのは、12戸中6戸という有様。入居が決まった6戸についても、うち2戸は3月の終わりに駆け込みで入った申し込みだったそうです。
新築にもかかわらず、なぜこんなに入居が決まらなかったのでしょうか?問題の一つは立地でした。冒頭でも述べたように、高橋さんの所有していた土地は、駅から徒歩で15分と、利便性は決して良くありませんでした。さらに、隣接する土地にはかなり大きなマンションが建っていて、あまり日当たりも良くありません。また、高橋さんのアパートが完成したのと同じタイミングで、より駅に近い場所に、賃貸マンションが3棟も竣工していました。さまざまな悪条件が重なった結果、高橋さんの物件はなかなか検討候補に入れてもらえなかったようでした。
さて、入居率が悪いとどんなことが起こるのでしょうか?おそらく、ほとんどの方が真っ先に頭に思い浮かべるのは、
「家賃収入が減るから、借入金の返済が大変になる」
ということではないでしょうか?しかし、影響はそれだけではありません。ご存知ない方もおられるかと思いますが、実は入居率は相続税額にも大きな影響を及ぼします。
例えば相続が発生した時点で、アパートの入居率がゼロだった場合、評価はどうなると思いますか?入居募集を行っていればまだしも、もしも行っていなかった場合、最悪の場合、貸家建付地ではなく自用地として評価されてしまうため、土地の評価は一切下がりません。つまり、わざわざ借金をしてアパートを建てたのに、相続税は一切下がらないというわけです。これは極端な事例ですが、いずれにせよ、アパートを建てて相続税対策を行うのであれば、きちんと経営も考えなければなりません。家賃を下げることはお勧めしませんが、どうしても入居率が上がらないのであれば、家賃を少し下げてでも満室にしてしまった方が、トータル的にはお得ということもあります。家賃損失と相続税、どちらの額の方が大きいかを比較検討して判断すると良いでしょう。
高橋さんもこのままだと、節税効果を得ることができません。税理士と相談した結果、地元で最大手の不動産業者に状況を説明し、非常に簡易ながら部屋のリフォームを行いました。アクセントクロスや室内物置など、1室あたりのわずか7万円のリフォームで、3カ月後には全国の入居が決まったそうです。以降、高橋さんは賃貸経営にも興味を持つようになり、セミナーや勉強会などにも積極的に参加するようになりました。
-賃貸住宅を建てれば節税できる-というのは誤解です。ただ建てるだけでなく、経営まできちんと行わなければ、節税効果を得ることはできません。相続税対策でお困りの方は、一度、お近くの相続不動産実務主任者に相談してみてはいかがでしょうか。