ヤマダグループの大塚家具子会社化は失敗か!?|住生活を支える新聞株式会社のWebマガジン
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2020.12.14

ヤマダグループの大塚家具子会社化は失敗か!?

ヤマダグループの大塚家具子会社化は失敗か!?
1年での黒字を期待するも結局大赤字

 「ヤマダ電機」を中核としたヤマダグループ(群馬県前橋市)の迷走が止まらない。傘下で経営再建中だった大塚家具(東京都江東区)の大塚久美子氏が、12月1日付けで退任したのだ。長引く業績不振の責任を明確化するための辞任さとされるが、実質的な解任だと言われる。
 大塚家具の2019年1月~20年4月期の業績は、売上高348億5500万円、営業損益76億1100万円の赤字、純損益7億1800万円の赤字と、散々な結果に終わった。純損失は2018年1~12月期(32億4000万円の赤字)と比べて、なんと約45億円も増えた。新型コロナウイルスの影響で引っ越し需要が激減したことが影響したとしているが、それを差し引いても、あまりにも無残な結果だ。トップが責任を取らされたところで、何の不思議もない。久美子氏も、結果が出なければすぐに解任されることは覚悟の上で、ヤマダグループの傘下に入ることを決断したはずだ。
 ヤマダグループは本当に久美子氏の経営手腕に期待していたのか。おそらく大した評価はしていなかったのではないか。2016年から3期連続で大赤字を出した経営者を続投させて、わずか1年で業績が回復すると考える人間はほとんどいないだろう。1年という猶予期間を与えたのは、久美子氏を辞めさせるための“理由づくり”のためだったのではないだろうか。もっと言えば、ヤマダグループの狙いは、あくまでも大塚家具を手中に収めることであり、それを成し遂げるために、1年の赤字は最初から覚悟していたのではなはないだろうか。もっとも、コロナでここまで赤字が増えるとは予想していなかったかもしれない。
 ヤマダグループはなぜ、そこまでして大塚家具を手に入れたかったのか。最大の理由は同社の掲げる経営戦略にある。家電業界は少子高齢化で先行きが不透明だ。大手間の競争も熾烈で、家電一本での成長はもはや頭打ち状態だ。そんな状況を打開すべく、ヤマダグループが打ち出したのが「住」に関するトータルサービスだ。家電を軸にしながらも、インテリアやホームファッション、住宅、不動産、金融などのサービスを総合的に提供することで、競合との差別化を図り、さらなる成長を目指そうというわけだ。当然、家具も欠かせないピースの一つだ。
 実際、ヤマダグループはこの10年足らずで、非家電分野の会社を次々と子会社化してきた。住宅分野ではエス・バイ・エル(現ヤマダホームズ)にレオハウス(ヤマダレオハウス)、ヒノキヤグループを、住設分野では日立ハウステック(現ハウステック)を、リフォーム分野ではナカヤマ(現ヤマダ電機リフォーム事業部)といった具合だ。大塚家具も含め、表向きには着々と「住」に関するトータルサービスグループが完成形に近づいているように見える。しかし、目論見通りに成果を上げられているかと言えば、必ずしもそうではない。特にエス・バイ・エルやナカヤマなど、もともと業績不振だった会社はグループ入り後もなかなか状況が好転せず、後者に至っては、かつて200億円もの売上を上げていた会社だったにもかかわらず、結局、回復の兆しすら見えないまま、ヤマダ電機の一事業部に吸収され、消滅してしまった。家電業界に詳しい専門家によると、「過去の例を見る限り、ヤマダグループは、非家電分野の業績不振会社を立て直すのが得意ではない。大塚家具の業績の立て直しにも苦戦するのはないか」と話す。
 大塚家具が今後、ヤマダグループの業績にどれだけ貢献できるかは未知数だ。少なくとも、コロナ終息の兆しがまったく見えない今期も、赤字が解消される可能性は極めて低いと考えられる。仮にコロナがなかったとしても、一度毀損したブランドが信頼を取り戻すのは、容易なことではない。なぜ、ヤマダグループは再び赤字会社に手を出したのか。迷走は続く。