アパートオーナーなら知っておきたい 賃貸経営法律講座|住生活を支える新聞株式会社のWebマガジン
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2020.11.23

アパートオーナーなら知っておきたい 賃貸経営法律講座

アパートオーナーなら知っておきたい 賃貸経営法律講座
コロナ禍で居酒屋を経営していた入居者が夜逃げ!
部屋に残された荷物の処分、一体どうすればいいの?

「コロナの影響で、経営していた居酒屋が潰れたらしい。だからといって夜逃げしなくても・・・」

 東京都内でアパート経営をする岡崎幸一オーナーは9月、夜逃げの被害に遭いました。逃げたのは新宿で3年前から小さな居酒屋を営んでいたAという40歳の男性。岡崎オーナーも足を運んだことがあるというお店は、結構繁盛していたそうなのですが、今年に入ってコロナの影響で売上が激減。新宿という場所柄、非常事態宣言が解除された後も客足は戻らず、結局、9月に店を閉めたそうです。アパートの家賃は7月分から振り込まれず、心配になった岡崎オーナーは、

「こういう事態だから、事前に言ってもらえれば多少は支払いを待つから」

と伝えていたそうです。そして9月のある日、岡崎オーナーは2週間ぶりにアパートの掃除に行った際に、Aさんの部屋の新聞受けに何日分もチラシが溜まっているのに気付き、夜逃げが発覚したそうです。

「最初は自殺でもしたのかと不安になりましたが、異臭のようなものはありませんでした。警察官立ち会の上で部屋の鍵を開けたところ、どうやら夜逃げしたらしいことが分かりました」

 念のため、居酒屋があったビルの管理会社にも確認してみたところ、どうやらそちらも数カ月家賃を滞納したまま、原状回復をしないまま、行方をくらまされてしまったらしく、お手上げ状態ということでした。
 岡崎さんは部屋をそのままにしておくわけにもいかず、荷物を整理することにしました。さて、ここで問題となるのが、夜逃げした元入居者が置いて行った荷物を、オーナーが勝手に処分できるのかという点です。

「放置されたままでは、次に貸すことができない。処分したって誰も文句は言わないだろう」

と安易に考えてはいけません。実は、夜逃げしたからといって、勝手に荷物を処分してしまうと、器物損壊罪に問われることがあります。一通り処分が終わった後に、入居者がふらりと戻ってきたらどうしますか?

「ちょっとお金の都合をつけるために、実家に帰っていただけだ」

と言われたら、すべて弁償しなければならなくなります。これでは、家賃を回収するどころの話ではなくなってしまいます。もとより、入居者の不在中に、勝手に部屋に立ち入ったことを咎められる可能性もあります。とはいえ、いつまでも荷物を処分できないというのでは、オーナーもたまったものではありません。それでは、このような場合はどうすれば良いのでしょうか?
 後々、トラブルにならないようにするためには、法的な手順に沿って強制執行の手続きを取る必要があります。具体的な手順を見ていきましょう。
 まずは、入居者本人との連絡を試みてみることになります。連絡がついたのなら、置いてある荷物の所有権を放棄してもらい、その上で荷物を処分して下さい。しかし、夜逃げをした入居者と連絡が取れることは、まずありません。そこで次は、保証人と連絡を取ってみて下さい。保証人もさぞや驚かれることだと思いますが、もし入居者の居場所を知っているようであれば、保証人から連絡してもらい、所有権の放棄をしてもらって下さい。この際、きちんと書面にしてもらうことが大切です。もしそれでもなお、入居者本人と連絡が取れないようであれば、次は訴訟を起こすことになります。
 荷物を処分するために行う訴訟のことを「明渡請求訴訟」と言います。これで強制執行による部屋の明け渡しが行われ、オーナーは晴れて、再び入居募集ができるようになります。荷物は執行官が持ち出してくれるので、オーナーに負担はありませんし、どこかに保管しておく必要もありません。滞納された家賃がある場合は、保証人に請求して下さい。
 景気が悪くなると、夜逃げが増えると言われています。新型コロナウイルスの感染拡大が止まらない以上、賃貸経営に携わる方々は、万が一の場合に備えて、きちんと法的知識を身に付けておくようにしましょう。賃貸経営に関して何かお困りごとがある方は、お近くの全国優良リフォーム会員にご相談下さい。