人手不足問題の解消にも光明
新型コロナウイルスの感染拡大により、賃貸仲介業に新たな接客スタイルが定着しようとしている。メディアでも取り上げられる機会が増えたリモート内見について検証する。
-営業マンが同行しなくても物件の内見ができる-IT技術を利用したリモート型の接客サービスが話題だ。
Webカメラやスマートフォンを利用したリモート式の接客サービスは、何年か前からあるにはあった。だが、定着までには至らず、サービスとして導入していた不動産業者はごく一部に限られていた。それがここに来て多くの注目を浴びるようになったのは、言うまでもなく新型コロナウイルスが流行したためだ。
通常、賃貸物件の内見は、営業マン同行のもとで行われる。店舗で所定の手続きを済ませた後、担当営業マンの運転する車で物件まで行き、一緒に下見する。質問があれば、その場でするというのがオーソドックスなスタイルだ。だが、この方式だと、店舗での接客から送迎、内見に至るまで、すべての場面でウイルス感染のリスクが伴う。もちろん、マスクや手袋の着用、ソーシャルディスタンスの確保、飛沫感染防止のためのアクリルボードの設置など、やるべき予防策は講じるだろうが、それでも来店した方からすれば不安は残る。そんな不安を解消するためのサービスとしてリモート内見が日の目を見るようになったというわけだ。
リモート内見には、大きく2つのやり方がある。一つは、内見希望者自身が直接、物件に足を運ぶ方式だ。不動産業者は事前に予約をした内見希望者に対し、物件にあらかじめ設置しているスマートロックや電子鍵を開けるためのパスワードや電子キーを送る。それを受け取った内見希望者は、自分で鍵を開けて部屋を見学する。何か質問がある場合は、その場から担当者に電話をかける。内見者は人目を気にすることなく満足がゆくまでゆっくり物件が見学ができる上、営業マンと接することもない。送迎がないため、物件が遠方にある場合は大変だが、その分、感染リスクは解消される。営業マンにとっても、送迎にかかっていた時間を他の業務に充てることができる。
もう一つは、営業マンが物件に足を運んで、スマホを使って部屋の様子を生実況する方式だ。こちらは鍵の発行にまつわるトラブルが一切発生しない代わりに、営業魔にかかる負担は大きい。カメラ越しの向こうにいる内見者のリクエストに応えながら、室内の様子を撮影しなければならないし、場合によっては何度も同じ場所を撮影しなければならない。一方内見者は、物件まで足を運ぶ手間が省けるものの、正確に物件の状況をつかめない可能性がある。室内の明るさや広さなどは、実際にその場にいてみないと完全には把握できないものだ。だが、前述の方式と同様、営業マンと直接接しないため、感染のリスクはない。
どちらの方法も一長一短あるが、今のところ前者の方式を採用する不動産業者の方が多いようだ。コロナの流行を機にリモート内見サービスを始めた都内の業者は、
「営業マンに気兼ねすることなく、ゆっくり時間をかけて内見したという方が多いです。部屋の採寸も人がいない方がやりやすいと思います」
と話す。
気になるのがリモート内見を可能にするためにかかる費用だが、後者の場合はスマートロックを取り付ける必要がないため、大きな投資は必要ない。営業で使うスマホやタブレットのカメラがあれば、すぐにでも始められる。前者については遠隔操作ができるスマートロックが必要だ。価格は1台当たり3万~5万円程度だが、専門業者の中には月額制のレンタルプランを用意しているところもある。これを利用すれば初期費用はかからない。スマートロックであれば内見した人の履歴や滞在時間などのデータが収集できるので、非常に便利だ。
リモート内見はこのまま賃貸仲介の現場に定着するのか。一つ言えることは、コロナ云々に関係なく、接客にかかる時間を削減することができるリモート内見は、これからの不動産業務で絶対に不可欠な仕組みだということだ。不動産業界は今、人手不足が大きな問題となっている。特に賃貸仲介の現場は深刻だ。作業効率が高まれば、3人で回して多店舗が2人で回せるようになるだろうし、スタッフへの業務負担も軽減することができる。1年後にどうなっているか、動向に注目したい。
新型コロナウイルスの感染拡大により、賃貸仲介業に新たな接客スタイルが定着しようとしている。メディアでも取り上げられる機会が増えたリモート内見について検証する。
-営業マンが同行しなくても物件の内見ができる-IT技術を利用したリモート型の接客サービスが話題だ。
Webカメラやスマートフォンを利用したリモート式の接客サービスは、何年か前からあるにはあった。だが、定着までには至らず、サービスとして導入していた不動産業者はごく一部に限られていた。それがここに来て多くの注目を浴びるようになったのは、言うまでもなく新型コロナウイルスが流行したためだ。
通常、賃貸物件の内見は、営業マン同行のもとで行われる。店舗で所定の手続きを済ませた後、担当営業マンの運転する車で物件まで行き、一緒に下見する。質問があれば、その場でするというのがオーソドックスなスタイルだ。だが、この方式だと、店舗での接客から送迎、内見に至るまで、すべての場面でウイルス感染のリスクが伴う。もちろん、マスクや手袋の着用、ソーシャルディスタンスの確保、飛沫感染防止のためのアクリルボードの設置など、やるべき予防策は講じるだろうが、それでも来店した方からすれば不安は残る。そんな不安を解消するためのサービスとしてリモート内見が日の目を見るようになったというわけだ。
リモート内見には、大きく2つのやり方がある。一つは、内見希望者自身が直接、物件に足を運ぶ方式だ。不動産業者は事前に予約をした内見希望者に対し、物件にあらかじめ設置しているスマートロックや電子鍵を開けるためのパスワードや電子キーを送る。それを受け取った内見希望者は、自分で鍵を開けて部屋を見学する。何か質問がある場合は、その場から担当者に電話をかける。内見者は人目を気にすることなく満足がゆくまでゆっくり物件が見学ができる上、営業マンと接することもない。送迎がないため、物件が遠方にある場合は大変だが、その分、感染リスクは解消される。営業マンにとっても、送迎にかかっていた時間を他の業務に充てることができる。
もう一つは、営業マンが物件に足を運んで、スマホを使って部屋の様子を生実況する方式だ。こちらは鍵の発行にまつわるトラブルが一切発生しない代わりに、営業魔にかかる負担は大きい。カメラ越しの向こうにいる内見者のリクエストに応えながら、室内の様子を撮影しなければならないし、場合によっては何度も同じ場所を撮影しなければならない。一方内見者は、物件まで足を運ぶ手間が省けるものの、正確に物件の状況をつかめない可能性がある。室内の明るさや広さなどは、実際にその場にいてみないと完全には把握できないものだ。だが、前述の方式と同様、営業マンと直接接しないため、感染のリスクはない。
どちらの方法も一長一短あるが、今のところ前者の方式を採用する不動産業者の方が多いようだ。コロナの流行を機にリモート内見サービスを始めた都内の業者は、
「営業マンに気兼ねすることなく、ゆっくり時間をかけて内見したという方が多いです。部屋の採寸も人がいない方がやりやすいと思います」
と話す。
気になるのがリモート内見を可能にするためにかかる費用だが、後者の場合はスマートロックを取り付ける必要がないため、大きな投資は必要ない。営業で使うスマホやタブレットのカメラがあれば、すぐにでも始められる。前者については遠隔操作ができるスマートロックが必要だ。価格は1台当たり3万~5万円程度だが、専門業者の中には月額制のレンタルプランを用意しているところもある。これを利用すれば初期費用はかからない。スマートロックであれば内見した人の履歴や滞在時間などのデータが収集できるので、非常に便利だ。
リモート内見はこのまま賃貸仲介の現場に定着するのか。一つ言えることは、コロナ云々に関係なく、接客にかかる時間を削減することができるリモート内見は、これからの不動産業務で絶対に不可欠な仕組みだということだ。不動産業界は今、人手不足が大きな問題となっている。特に賃貸仲介の現場は深刻だ。作業効率が高まれば、3人で回して多店舗が2人で回せるようになるだろうし、スタッフへの業務負担も軽減することができる。1年後にどうなっているか、動向に注目したい。