プロが語る大阪不動産市場の今(第1回)|住生活を支える新聞株式会社のWebマガジン
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2020.06.29

プロが語る大阪不動産市場の今(第1回)

プロが語る大阪不動産市場の今(第1回)
緊急事態宣言以降状況は一変
不動産業者大量倒産の可能性も


 未だ収束の気配が見えない新型コロナウイルス。街は活気を失い、再開の目処が立たないまま閉店する店舗も出始めている。果たしてこの状況はいつまで続くのか?今回から3回に分けて、非常事態宣言で様変わりした大阪の街の様子を、地場の不動産会社であるセンチュリー21・ワールドスタイル(大阪市北区)の柴田裕治社長に伺いながらリポートする。


-今年は、年明けから新型コロナウイルスの感染拡大が取り沙汰されるようになりました。柴田さんの目から見て、この5カ月で街の様子はどのように変わっていきましたか。

柴田 正直なところ、3月の終りまでは人の数や動きには、それほど大きな変化はありませんでした。もちろん、みなさんマスクをするなど、それぞれ対策はしておられました。大阪市内の飲食店や小売店も、営業自粛をしている様子はそれほど見受けられなかったですね。状況が一変したのは、4月に入って緊急事態宣言が出されてからですね。街は良い気に自粛ムードになりました。人の動きもぱたりと止まりました。

-柴田さんは賃貸の仕事をされていますが、そちらへの影響はどうでしょうか。

柴田 ウイルスの感染拡大と繁忙期がもろに重なる格好になってしまったので、はじめはどうなることかと心配しましたが、蓋を開けてみたら、3月まではほとんど影響がありませんでした。問い合わせや内見も例年並みにありましたし、人はそれなりに動いているなと感じました。

-緊急事態宣言が発令されて以降はどうでしょうか。

柴田 さすがにまったく動かなくなりましたね。例年は4月に入ってからもそれなりに動きがあるのですが、今はネットからの問い合わせもほぼありませんし、当然、店舗に来られるお客様もいません。店はずっと営業しているのですが、賃貸仲介に関してはほぼ仕事がない状態です。

-周辺の不動産会社の様子はどうでしょうか。

柴田 営業自粛で半分くらいの店が閉めていますね。営業しているところも、話を聞く限り、状況はうちと似たり寄ったりです。メディアではよく、飲食店のことが取り上げられていますが、売上がなくて大変なのは不動産業者も同じです。うちは管理業に力を入れているので大丈夫ですが、仲介をメーンにしておられる業者は苦しいと思いますよ。飲食店はデリバリーやテイクアウトなど、他にも売上を上げる方法がありますが、賃貸仲介にはありませんからね。これはあくまでも個人的な意見ですが、あと1、2ヶ月もしたら倒産する業者が出て来るのではないかと見ています。もしかしたら一気に不動産業者の淘汰が進むかもしれませんね。

-管理業に力を入れておられるということですが、そちらへの影響についてはいかがでしょうか。

柴田 ここに来て少しずつ影響が出始めていますね。例えば入居率ですが、普段であれば95%前後で推移しているのですが、4月になってから退去が増えた関係で少し下がっています。家賃が払えなくなる前に実家に戻ったり、あるいは今よりも賃料の安い物件に移ったりする人が増えているのではないでしょうか。うちは管理物件のほとんどが大阪市内の良い場所にあるのでこれくらいの影響で済んでいますが、もっと大きなダメージを受けている業者もあると思いますよ。

-家賃を下げて欲しい、あるいは支払いを少し待って欲しいというような問い合わせはありますか。

柴田 ありますね。特に店舗はそういう類の相談が増えてきています。行政の補助金制度などを案内するなど、できるだけ相談に乗るようにはしていますが、最終的な判断については家賃債務保証会社にお任せしています。今後はこうした相談がどんどん増えていくでしょうね。

-緊急事態宣言が解除された時に備えて、何か準備されていることはありますか。

柴田 普段よりも家賃の安い物件を増やしているところです。というのも、宣言が解除されても、前のような状態に戻るのにはかなりの時間がかかると見ているからです。リーマン・ショックのときも10年近くかかりましたからね。しばらくは低家賃の物件に対するニーズが増えていくのではないでしょうか。

-ありがとうございます。次回は売買市場の動きについて伺いたいと思います。

(次号へ続く)
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