真説 賃貸業界史 第18回「賃貸マンションフランチャイズの始まりは鹿児島」|住生活を支える新聞株式会社のWebマガジン
豆知識

2019.07.29

真説 賃貸業界史 第18回「賃貸マンションフランチャイズの始まりは鹿児島」

真説 賃貸業界史 第18回「賃貸マンションフランチャイズの始まりは鹿児島」
全国的な知名度得ている4大ブランドとは!?

 フランチャイズとは、本部がもつブランド(看板)やノウハウなどを第3者に提供し、代わりに加盟金やロイヤリティなどを対価として受け取る仕組みだ。賃貸業界では、例えば「アパマンショップ」や「エイブル」「ミニミニ」などの不動産仲介チェーンが、この仕組みを採り入れて全国展開を行っている。今回は、賃貸マンションブランドのフランチャイズの歴史についてまとめた。

 「ユーミーマンション」、これは賃貸マンションのブランドの一つで、鹿児島県に本社を置くユーミーコーポレーションがフランチャイズ本部を運営している。いくつかある賃貸マンションのフランチャイズの中で、最も長い歴史をもつことで知られる。
 「ユーミーマンション」は、ユーミーコーポレーションのルーツで、1960年に創業した弓場建設が1986年に開発したRC造の賃貸マンションブランドだ。徹底したコスト管理による低価格と、快適な住環境によって高い入居率を実現していることが特徴で、地主の相続税対策として、今に至るまで高い人気を誇っている。
 フランチャイズは1986年にスタート。1990年には、全国展開を強化するために東京本部も設置された。公共工事に代わる収益の柱になるとして建設業界で多くの注目を集め、「ユーミーマンション」は瞬く間に全国区へと上り詰めていった。地方の有力ゼネコンも多く加盟し、多い時で100社以上の加盟店があったと言われる。同社によると、これまでにチェーン全体で建設した数は累計約6700棟8万3000戸。最も古いものは建築から40年近く経っているにもかかわらず、今なお入居率98%(※2016年3月末)を維持しているという。まさに名実ともに、業界を代表する賃貸マンションブランドだ。
 南国生まれの「ユーミーマンション」に対し、寒冷の地である北海道で誕生したのが「ヒーローマンション」だ。一時期、俳優の藤岡弘を起用したテレビCMが流れていたため、見覚えがあるという方も多いのではないだろうか。このRC造の賃貸マンションを開発したのは、帯広に本社を構えていた日崎建設で、北国の厳しい寒さの中でも快適に過ごせるように、断熱性能に優れた部材をふんだんに使用している。
 フランチャイズは1997年に開始。中小建設会社・工務店を中心に、多い時には100社以上の加盟店があり、チェーン全体でこれまでに2500棟3万戸以上を供給してきた。残念ながら、開発元の日崎建設は2008年に、約半世紀にわたる歴史に幕を下ろしてしまったが、フランチャイズは現在も、ヒーローライフカンパニーによって稼働している。
飯田建築設計事務所が開発した「ルネス工法」と「SINCA(シンカ)工法」を採用した「ルネスマンション」は、床下2層構造でメンテナンス性を高め、建物の長期運用を可能にしていることが特徴だ。
 他の2ブランドが最初からフランチャイズ展開を進めたのに対し、ルネスは最初、工法の使用権販売という形で全国展開を行った。フランチャイズ展開に切り替えたのは2000年で、工法の優位性に目を付けたコンサルティング会社、ベンチャー・リンクが投資会社と共同出資して、FC本部となるルネス・インターナショナルを設立した。しかし、ベンチャー・リンクの業績が悪化したため、経営権はいったん日本エル・シー・エーに移り、会社もエル・シー・エー・リコンストラクションとして再スタートを切ることになった。2012年には、部材の供給元であるダイフクの子会社化され、ダイフクルネスと改称。現在は、エス・アイ・ルネスとして、同業であるヒーローライフカンパニーの関連会社になっている。
 一方、本部の経営権が移る中で、実績は着実に積み上げてきた。加盟店数自体は、他の2ブランドに比べると少ないが、累計約1000棟1万6000戸という優れた供給実績を残している。
加盟店をやめて、独自にブランドを開発してフランチャイズ展開に乗り出した会社もある。東証一部上場のヤマウラは、もともとは「ユーミーマンション」に加盟していたが、2003年に自社開発の「ブレインマンション」をフランチャイズ化。得たノウハウをそのまま利用したかのようなこの行動に対しては賛否両論あったが、“上場企業”という看板への信頼度は高く、すぐに賃貸マンションの有力ブランドの一つとして認知されるようになった。
 今回取り上げた「ユーミーマンション」「ヒーローマンション」「ルネスマンション」「ブレインマンション」は、フランチャイズ展開によって全国的な知名度を有していることから、“賃貸マンションの4大ブランド”とも言われている。また、この他にも実績は少ないながらも優良な賃貸マンションブランドはいくつもあるので、別の機会に取り上げてみたい。