業界に革命を起こした「レガナム」の登場
業務の効率化を図る上でITの活用は不可欠だ。今日では、深刻化する人材不足の解決を図るため、あらゆる業種・業態において、AIやロボットなどの最先端技術が活躍している。今回は賃貸業界におけるシステムの歴史を振り返る。
賃貸管理業務で管理ソフト・システムが利用されるようになったのは1980年代半ばのこと。当時のハードはNECや富士通などが作っていたオフコン(=オフィスコンピューター)と呼ばれる企業向けの事務処理用コンピュータで、入居者の情報や入金状況の管理を行っていた。当時のコンピュータは非常に高価で、小規模な管理会社がおいそれと手を出せる代物ではなかった。そのため実際に導入したのは大手管理会社が中心で、業界全体でも100~200社程度に留まったと言われている。できる作業は今日の賃貸管理システムと比べると驚くほど限られていたが、それでもアナログ要素の強かった当時の業界からしてみれば画期的なものに映ったに違いない。
1990年代になると、賃貸業界の歴史に残る名パッケージソフトが登場した。永野好道氏率いるエスパーが開発した「Reganam(レガナム)」だ。ソフト自体の使いやすさに加え、この頃になるとハードの性能も飛躍的に進歩。業界内でたちまち評判となり、高額なソフトではあったものの、多くの有力管理会社に導入された。エスパーはその後、レガナムの機能を簡略化することで価格を抑えた「i-fy(アイフィ)」をリリース。さらに多くのユーザーを獲得し、業界内で確固たる地位を築いたかに見えたが、事業の多角化を進める中で経営状況を悪化させ、多くの人材が流出した約20年の歴史に幕を閉じた。しかし、会社はなくなってしまったものの、地方都市に行くと未だに「レガナム」や「アイフィ」を使っているという管理会社に出会うことがあり、その度に当時のエスパーの影響力がいかに大きかったかを改めて再認識させられる。
1990年代中盤になると、今日の“二強”と言われているソフトメーカーが相次いで誕生する。94年に設立されたのは日本情報クリエイト(宮崎県都城市)で、97年に大ヒット商品「賃貸革命」をリリースする。一方、そのライバル企業ともいえる存在のビジュアルリサーチ(東京都品川区)は95年に設立。日本情報クリエイトが総合ソフトメーカーであるのに対し、こちらは不動産ソフトが専門。そのため設立こそ1年あとだが、賃貸管理ソフトの発売は95年と2年早い。
両社がライバルだと目されるのは、顧客ターゲットとしている管理会社の事業規模が近いためだ。ともに管理戸数2000~数万戸の管理会社をメーンターゲットとしており、相見積もりがあれば頻繁に競合するそうだ。導入社数は両社とも1500~2000社前後と推計される。
一方、管理戸数1000戸以下の小規模管理会社に重宝されている「賃貸名人」は、ダンゴネット(東京都国分寺市)が98年にリリース。特徴は圧倒的な低価格。もちろん安かろう悪かろうでは意味がない。低価格であるにもかかわらず、抑えるべき基本的な機能はきちんと押さえている。同ソフトを一躍有名にするきっかけとなったのは、賃貸管理業の地位向上と発展に尽力した北九州の有名な管理会社との出会いだ。高い評価を受けたことで「賃貸名人」の評判はうなぎ上り、多くのユーザーを獲得した。低価格路線が功を奏し、導入社数は5000社以上と、前述の日本情報クリエイトとビジュアルリサーチを大きく上回る。導入実績だけ見れば賃貸管理ソフトNo.1だ。
2000年代に入ると、日本の賃貸住宅管理業にアメリカ流のプロパティマネジメントの概念が流入。賃貸管理ソフトも大きく進化し、ファシリティマネジメント管理やレポート発行機能などを常備するようになった。代表的なソフトの一つが、ソフト・ボランチ(東京都渋谷区)が2003年にリリースした「PMボランチ」だ。藤本淳二社長以下、創業メンバー全員がエスパー出身だったこともあり、もともとエスパー社のソフトを使っていた管理会社に多く導入されている。
今回、ご紹介した以外にも、オービック&オービックビジネスソリューションズやファインネットテクノロジー、アサマソフトウェアなど、90年代から活躍するソフトメーカー・システム会社はいくつもある。改めて別の機会にご紹介したい。
業務の効率化を図る上でITの活用は不可欠だ。今日では、深刻化する人材不足の解決を図るため、あらゆる業種・業態において、AIやロボットなどの最先端技術が活躍している。今回は賃貸業界におけるシステムの歴史を振り返る。
賃貸管理業務で管理ソフト・システムが利用されるようになったのは1980年代半ばのこと。当時のハードはNECや富士通などが作っていたオフコン(=オフィスコンピューター)と呼ばれる企業向けの事務処理用コンピュータで、入居者の情報や入金状況の管理を行っていた。当時のコンピュータは非常に高価で、小規模な管理会社がおいそれと手を出せる代物ではなかった。そのため実際に導入したのは大手管理会社が中心で、業界全体でも100~200社程度に留まったと言われている。できる作業は今日の賃貸管理システムと比べると驚くほど限られていたが、それでもアナログ要素の強かった当時の業界からしてみれば画期的なものに映ったに違いない。
1990年代になると、賃貸業界の歴史に残る名パッケージソフトが登場した。永野好道氏率いるエスパーが開発した「Reganam(レガナム)」だ。ソフト自体の使いやすさに加え、この頃になるとハードの性能も飛躍的に進歩。業界内でたちまち評判となり、高額なソフトではあったものの、多くの有力管理会社に導入された。エスパーはその後、レガナムの機能を簡略化することで価格を抑えた「i-fy(アイフィ)」をリリース。さらに多くのユーザーを獲得し、業界内で確固たる地位を築いたかに見えたが、事業の多角化を進める中で経営状況を悪化させ、多くの人材が流出した約20年の歴史に幕を閉じた。しかし、会社はなくなってしまったものの、地方都市に行くと未だに「レガナム」や「アイフィ」を使っているという管理会社に出会うことがあり、その度に当時のエスパーの影響力がいかに大きかったかを改めて再認識させられる。
1990年代中盤になると、今日の“二強”と言われているソフトメーカーが相次いで誕生する。94年に設立されたのは日本情報クリエイト(宮崎県都城市)で、97年に大ヒット商品「賃貸革命」をリリースする。一方、そのライバル企業ともいえる存在のビジュアルリサーチ(東京都品川区)は95年に設立。日本情報クリエイトが総合ソフトメーカーであるのに対し、こちらは不動産ソフトが専門。そのため設立こそ1年あとだが、賃貸管理ソフトの発売は95年と2年早い。
両社がライバルだと目されるのは、顧客ターゲットとしている管理会社の事業規模が近いためだ。ともに管理戸数2000~数万戸の管理会社をメーンターゲットとしており、相見積もりがあれば頻繁に競合するそうだ。導入社数は両社とも1500~2000社前後と推計される。
一方、管理戸数1000戸以下の小規模管理会社に重宝されている「賃貸名人」は、ダンゴネット(東京都国分寺市)が98年にリリース。特徴は圧倒的な低価格。もちろん安かろう悪かろうでは意味がない。低価格であるにもかかわらず、抑えるべき基本的な機能はきちんと押さえている。同ソフトを一躍有名にするきっかけとなったのは、賃貸管理業の地位向上と発展に尽力した北九州の有名な管理会社との出会いだ。高い評価を受けたことで「賃貸名人」の評判はうなぎ上り、多くのユーザーを獲得した。低価格路線が功を奏し、導入社数は5000社以上と、前述の日本情報クリエイトとビジュアルリサーチを大きく上回る。導入実績だけ見れば賃貸管理ソフトNo.1だ。
2000年代に入ると、日本の賃貸住宅管理業にアメリカ流のプロパティマネジメントの概念が流入。賃貸管理ソフトも大きく進化し、ファシリティマネジメント管理やレポート発行機能などを常備するようになった。代表的なソフトの一つが、ソフト・ボランチ(東京都渋谷区)が2003年にリリースした「PMボランチ」だ。藤本淳二社長以下、創業メンバー全員がエスパー出身だったこともあり、もともとエスパー社のソフトを使っていた管理会社に多く導入されている。
今回、ご紹介した以外にも、オービック&オービックビジネスソリューションズやファインネットテクノロジー、アサマソフトウェアなど、90年代から活躍するソフトメーカー・システム会社はいくつもある。改めて別の機会にご紹介したい。