欧米諸国と比べて起業が少ないと言われている日本だが、一方で起業そのものに興味を示す女性は増えている。2014年中小企業白書によれば、起業希望者数全体に占める女性の割合は、07年では30.6%だったのに対して12年では33.4%と、確実な伸びを見せており、今後もこの傾向は続くと見られている。女性起業家が日本経済に与える影響について、Dear WOMAN(ディア・ウーマン)を主宰するスマップス(東京都中央区)の辻朋子社長に話を聞いた。
東日本大震災を機にDear WOMANを発足
――住宅金融公庫の「女性、若者/シニア起業家支援資金」や辻社長が主宰するDear WOMANなど、世の中では女性の起業を支援するための仕組みが増えています。
辻 私が女性起業家の支援を行うようになったのは2011年頃のことです。女性からの問い合わせ少しずつ増えていたこともありますが、一番の契機となったのは3月に発生した東日本大震災です。子育てや介護など、復興の過程で活躍する女性の姿が大きくクローズアップされましたが、世の中を見渡すと活躍できる場は限られていました。そこで、女性起業家を支援するための組織として「Dear WOMAN」を発足させたわけです。
インターネットの普及が独立開業を後押し
――起業を志す女性が増えた要因は何でしょうか。
辻 いくつかあると思います。一つは、起業に対するイメージや意識が変わったことです。15年前であればおそらく、ほとんどの女性が「起業=経済力を高めるための手段」と考えていたと思います。しかし今は、家庭と仕事を両立させたり、あるいはライフスタイルに合わせた自由な働き方を追求するための手段として、起業を考えるようになっています。
――起業であれば、会社のルールに縛られない、働きやすい環境を自ら作ることができます。
辻 また、社会の高齢化も影響していると思います。親が元気なうちは何の問題もありませんが、将来的に面倒を見ながら働くのであれば、会社に勤めているよりも、自分で事業を起こしてしまった方がずっとやりやすいというわけです。
――最低資本の制限が変更されるなど、以前と比べて起業、独立開業のハードルが下がっていることも要因ではないでしょうか。
辻 もちろんそれもあります。また、インターネットやSNSが普及したことで、昔のように多大な広告予算を割かなくても宣伝や集客ができるようになり、少ない資本でも事業を始められるようになったことも大きな要因でしょう。そして、こうした事実がさまざまなメディアを通じて拡散されていることも、結果的に起業を志す女性が増える要因になっていると思います。
――女性と男性とで、「起業」や「事業」に対する考え方で違いはありますか。
辻 全く違いますね。男性は自分の商品・サービスに対する世の中のニーズを分析し、最終的にいくらの利益が見込めるのかまでしっかり考えて事業を立ち上げます。一方女性は、自分が売りたいものを売りたがる方が多いように思います。「自分が良いと思うからきっと他の人も欲しがるだろう」という安易な発想で事業を始め、途中で資金繰りが苦しくなってやめてしまうという方を、これまでに何人も見てきました。
また、個人向けサービスで起業する方が多いのも女性ならではだと思います。企業間取引のように法人の信用性が必要ないため、会社を立ち上げずに個人事業主のままでいる方が多いです。私の顧客も9割以上が個人事業主です。ただし、法人化することで得られるメリットも色々とありますので、自分の行っている事業にはどちらが適しているのかをきちんと判断する必要があります。
国の税収を増やす効果にも期待
――どんな事業で起業される方が多いのでしょうか。
辻 日本政策金融公庫のデータによると、一番多いのは美容室やエステサロン、ネイルサロンです。最近は家事代行サービスや教室系の事業を立ち上げる方も多いようですね。
――女性起業家が世の中に与える影響は。
辻 自らの経験を踏まえて女性が働きやすい環境作りをするので、女性の雇用が今よりも増えると思います。今後、日本は少子化で労働人口が減少すると言われていますが、女性にとって働きやすい職場が増えれば、多少なりともこれを抑制することができるのではないでしょうか。
また、男性経営者は税金の支払いを減らすために経費を削減したりしますが、女性経営者でこうした発想をもって会社経営を行う方はそれほど多くありません。そのため国の税収を増やす効果もある程度、期待できると思います。
――住宅金融公庫の「女性、若者/シニア起業家支援資金」や辻社長が主宰するDear WOMANなど、世の中では女性の起業を支援するための仕組みが増えています。
辻 私が女性起業家の支援を行うようになったのは2011年頃のことです。女性からの問い合わせ少しずつ増えていたこともありますが、一番の契機となったのは3月に発生した東日本大震災です。子育てや介護など、復興の過程で活躍する女性の姿が大きくクローズアップされましたが、世の中を見渡すと活躍できる場は限られていました。そこで、女性起業家を支援するための組織として「Dear WOMAN」を発足させたわけです。
インターネットの普及が独立開業を後押し
――起業を志す女性が増えた要因は何でしょうか。
辻 いくつかあると思います。一つは、起業に対するイメージや意識が変わったことです。15年前であればおそらく、ほとんどの女性が「起業=経済力を高めるための手段」と考えていたと思います。しかし今は、家庭と仕事を両立させたり、あるいはライフスタイルに合わせた自由な働き方を追求するための手段として、起業を考えるようになっています。
――起業であれば、会社のルールに縛られない、働きやすい環境を自ら作ることができます。
辻 また、社会の高齢化も影響していると思います。親が元気なうちは何の問題もありませんが、将来的に面倒を見ながら働くのであれば、会社に勤めているよりも、自分で事業を起こしてしまった方がずっとやりやすいというわけです。
――最低資本の制限が変更されるなど、以前と比べて起業、独立開業のハードルが下がっていることも要因ではないでしょうか。
辻 もちろんそれもあります。また、インターネットやSNSが普及したことで、昔のように多大な広告予算を割かなくても宣伝や集客ができるようになり、少ない資本でも事業を始められるようになったことも大きな要因でしょう。そして、こうした事実がさまざまなメディアを通じて拡散されていることも、結果的に起業を志す女性が増える要因になっていると思います。
――女性と男性とで、「起業」や「事業」に対する考え方で違いはありますか。
辻 全く違いますね。男性は自分の商品・サービスに対する世の中のニーズを分析し、最終的にいくらの利益が見込めるのかまでしっかり考えて事業を立ち上げます。一方女性は、自分が売りたいものを売りたがる方が多いように思います。「自分が良いと思うからきっと他の人も欲しがるだろう」という安易な発想で事業を始め、途中で資金繰りが苦しくなってやめてしまうという方を、これまでに何人も見てきました。
また、個人向けサービスで起業する方が多いのも女性ならではだと思います。企業間取引のように法人の信用性が必要ないため、会社を立ち上げずに個人事業主のままでいる方が多いです。私の顧客も9割以上が個人事業主です。ただし、法人化することで得られるメリットも色々とありますので、自分の行っている事業にはどちらが適しているのかをきちんと判断する必要があります。
国の税収を増やす効果にも期待
――どんな事業で起業される方が多いのでしょうか。
辻 日本政策金融公庫のデータによると、一番多いのは美容室やエステサロン、ネイルサロンです。最近は家事代行サービスや教室系の事業を立ち上げる方も多いようですね。
――女性起業家が世の中に与える影響は。
辻 自らの経験を踏まえて女性が働きやすい環境作りをするので、女性の雇用が今よりも増えると思います。今後、日本は少子化で労働人口が減少すると言われていますが、女性にとって働きやすい職場が増えれば、多少なりともこれを抑制することができるのではないでしょうか。
また、男性経営者は税金の支払いを減らすために経費を削減したりしますが、女性経営者でこうした発想をもって会社経営を行う方はそれほど多くありません。そのため国の税収を増やす効果もある程度、期待できると思います。
株式会社スマップス代表 経営コンサルタント
辻 朋子(つじ ともこ)社長
税理士事務所に15年勤務した後、2007年10月に中小企業の経営コンサルティングを手掛けるスマップスを設立。2011年、東日本大震災を機に女性起業家支援を目的とした「DearWOMAN」を発足。サロンや人材紹介、人材派遣、飲食、士業、介護ビジネスなど、幅広い分野の顧客をもち、経済ニュース番組「ワールドビジネスサテライト」をはじめ、さまざまなメディアでその活躍が取り上げられている。
辻 朋子(つじ ともこ)社長
税理士事務所に15年勤務した後、2007年10月に中小企業の経営コンサルティングを手掛けるスマップスを設立。2011年、東日本大震災を機に女性起業家支援を目的とした「DearWOMAN」を発足。サロンや人材紹介、人材派遣、飲食、士業、介護ビジネスなど、幅広い分野の顧客をもち、経済ニュース番組「ワールドビジネスサテライト」をはじめ、さまざまなメディアでその活躍が取り上げられている。