医療費控除の特例「セルフメディケーション税制」スタート!|住生活を支える新聞株式会社のWebマガジン
豆知識

2017.02.09

医療費控除の特例「セルフメディケーション税制」スタート!

医療費控除の特例「セルフメディケーション税制」スタート!
医療費控除といえば、年間10万円以上使わないと意味ないから自分には縁がないな…と、毎年確定申告時期になると思われている方に朗報です。2017年1月より新たに、医療費控除の特例にあたる「セルフメディケーション税制」が始まりました。
 簡単に言うと、健診等特定の取り組みをしている個人が1年間に薬局等で1万2千円以上の特定のスイッチOTC医薬品(一般用医薬品)を買うだけで、節税できる制度です。そのため、今まであまり医療費控除は関係なかった方でもチャンスのある節税制度になります。
 とは言え、まだまだ浸透していない制度なので、初めて聞く方もいらっしゃいますよね。
 今回は、この制度の概要および手続きについては割愛〔詳細は、国税庁HP「タックスアンサー〈No.1120 医療費を支払ったとき(医療費控除)〉」、厚生労働省HP「セルフメディケーション税制Q&A」をご確認ください〕し、本制度導入でポイントとなる節税面と選択制についての留意点を簡単にお話ししたいと思います。

その前に、スイッチOTC医薬品とは
 薬局の薬と言っても何でもよいわけではなく、スイッチOTC医薬品〔要指導医薬品及び一般用医薬品のうち、医療用から転用(スイッチ)された医薬品〕のみが対象になります。(厚生労働省HP「セルフメディケーション税制対象医薬品」参照)
 また、OTCとは、“Over The Counter”の頭文字で、薬局のカウンター越しに売られる薬が語源だそうです。
 なお、対象医薬品には、日本一般用医薬品連合会が定める〝共通識別マーク〟が箱等に記載されているので、購入時にこのマークがあるかどうかを見極めて購入することが大切になってきます。
医療費控除の特例「セルフメディケーション税制」スタート!
セルフメディケーション税制で、いくらお得になる?
 では、どのくらいお得になるかというと、例えば、課税所得金額(年収から基礎控除金額や配偶者控除金額を引いた額)が400万円のサラリーマンが薬局でスイッチOTC医薬品を5万円分購入した場合、これまでは所得税が
400万円×税率20%
−控除額42万7千500円=37万2千500円
であったのが、セルフメディケ―ション税制を適用すると、
{400万 −(5万円−1万2千円)}×税率20%
−控除額42万7千500円=36万4千900円
と、7千600円少なくなります。〔所得税率は、国税庁HP「タックスアンサー〈No.2260 所得税の税率〉」参照〕
 なお、所得税率が高い(≒年収が高い)ほど、そしてOTC医薬品の購入金額が10万円(制度上の上限)に近いほど、節税額は大きくなります。
 また、課税所得金額自体が減りますので、その分、来年の納付すべき住民税も少なくなるという二重の喜びが味わえますよ。

従来の医療費控除との併用不可!
 どちらの控除制度を選択するかは、(A)医療費と(B)OTC医薬品の購入費用の額によって決めると良いでしょう。医療費の下限は10万円未満、セルフメディケ―ション税制の下限は1万2千円未満ですので、適用パターンをまとめると次の3つになります。
①(A)が10万円未満、(B)も1万2千円未満の場合…どちらも適用できない
②(B)が1万2千円を超え、(A)が10万円未満の場合…セルフメディケーション税制を選択
③(B)が1万2千円を超え、(A)も10万円超の場合…超えた金額によりいずれかを選択
 例えば、(A)が15万円、(B)が5万円の場合、控除額は(A)が5万円、(B)が3・8万円となるため、従来の医療費控除を選択する方がお得ということになります(OTC医薬品によっては、(A)、(B)どちらにも適用となるものがありますので、その場合、どちらに含めるかは上記パターンを検討してみて決めても良いかもしれませんね)。

 今年の確定申告を終えホッと一息されている方もいらっしゃるかもしれません。しかし、来年の確定申告の準備はもう始まっています!来年の確定申告時期に少しでもお得感を味わえるよう、これから薬局等で薬を買う際、OTC医薬品であればレシート・領収書を必ず保管する!という試みを今日から始めてみてはいかがでしょうか。健康管理の自助努力をサポートするセルフメディケーション税制、賢く活用して、健康でも節税でもメリットを得たいですね。
医療費控除の特例「セルフメディケーション税制」スタート!
みのり税理士法人東京事務所 所長
東山 純子
・2015年税理士登録、東京税理士会所属
・国税庁、国税局、税務署に勤務し、課税・訟務(審理)・人事等幅広い業務に従事
・退職後、経営コンサルタント会社設立
・主に海外進出企業支援のためのコーディネート、人材育成支援に努める
・「組織は人」をモットーに、企業研修等各種セミナー講師も担当
・現在、みのり税理士法人東京事務所 所長