闘将野村「弱小企業を一流へと変える新経営理論」(第53回)|インタビュー|住生活を支える新聞株式会社のWebマガジン
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2024.07.08

闘将野村「弱小企業を一流へと変える新経営理論」(第53回)

闘将野村「弱小企業を一流へと変える新経営理論」(第53回)
24 社員教育と後継者を育てる人心掌握術①

 野村監督の場合は、褒めるときも愛情をもって接することで、球団に対する愛情を植え付け、強いチームを作り上げた。

野村 褒めると叱るの根底にあるのは愛情なんだよ。感情だけで褒めたり叱ったりするのは同じ人間だからわかるし、伝わるんだよ。憎たらしい奴だからって叱るでしょ?きっと相手もそのことが分かってすごい根に持つと思うよ。

 野村監督は簡単に言ったが、経営者にとっては簡単なことではない。

「何回言ってもわかってくれないのだよね」
「どうやったら理解してくれるのだろう?」

こう呟いたことのある経営者は多いのではないだろうか。愛情のための鞭が、社員には怒りの鞭として伝わってしまっていることも少なくない。しかし野村監督は「愛情をもって接している」と自信をもって言う。名称野村と言われる所以だろう。

野村 根底にあるのは叱るにしても、褒めるにしても愛情ですよ。この選手を何とかしてやりたい、上手くなって欲しいっていう思いがあった中で叱ったり褒めたりしていてからね。人間だから想いは通じるんだよ。不思議だけど。

 本来、社員の愛社精神は、雇用側の人間が愛情をもって接することで生まれる。しかし、今は居心地の良い職場環境であることや、好きな仕事ができるということを愛社精神に繋げようとしている。一方で役員や後継者の場合は違う。彼らは時には自らの待遇よりも会社を優先して嫌な仕事もしなければならない。

-今までにたくさんの選手がいたと思いますが、そうした野村さんの想いが伝わらなかったことはあったのでしょうか。

野村 まずいないね。それは褒める、叱るタイミングというのをきちんと考えているからで、やたらと褒めたりしてはいかんのよ。

 正直、この発言は驚いた。

「そうなんだよ。何度言ってもわからない選手もいるんだ」

という言葉が来ることを期待していたからだ。果たしてどれほどの経営者が


「何度言っても理解してくれないのだよね」
「本人のために言っているのにね」
「最近の社員はやる気がないんだよ・・・」

といった愚痴をこぼしてきたことか。野村監督の言葉を借りるのであれば、それは愛情をもって接してこなかった結果だ
 タイミングを見計らいながら、きちんと愛情をもって接しさえすれば、現代で働く社員でも会社に対する愛社精神を抱くようになるはずであり、会社が危機に陥っても決して逃げ出さずに、経営陣とともに、生き残るための精一杯の努力をしてくれるはずだと思って、経営者は会社を運営するしかない。経営者は孤独である。

(次号へ続く)