闘将野村「弱小企業を一流へと変える新経営理論」(第38回)|インタビュー|住生活を支える新聞株式会社のWebマガジン
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2023.03.06

闘将野村「弱小企業を一流へと変える新経営理論」(第38回)

闘将野村「弱小企業を一流へと変える新経営理論」(第38回)
16 社員戦力の最大化!-伸びる組織の作り方①

-選手の使い方もそうですけど、監督が選手のときにピッチャーのモチベーションってどのように上げていたのですか?例えば「今日試合で選手調子悪かったなぁ」とか、「今悩んでいるのかな?」といったときもあるでしょう。普段、選手とはプライベートな付き合いは一切しないということでしたけど。

野村 選手・コーチとは一切付き合わないよ。

-でもそうすると選手ともなかなか信頼関係を築けないのではないですか?

野村 プライベートで付き合わなくても、練習や試合で十分信頼関係は築けるよ。

-それこそマー君が4連敗していたときなんかは、マー君自身もモチベーションというか気持ち的にダメなのかなと思っていると思うのですけどどうですか?

野村 彼はよい球団に入ったと思うよ。ピッチャーの層が薄い良い球団に入ったよ。本人は思ってないだろうけど使わざるを得ないんだもん。実力の世界でありながら実力がなくても使わざるを得ない。他球団は最低でもピッチャー5人いるのに、楽天は岩隈しかいなかったからね。ダントツの最下位のチームの監督を要請されて、やっと3年、これからってときに契約終了。4年後星野(※)が優勝して良いところをまた持っていかれたよ。

※星野仙一(1947年1月22日~2018年1月4日)。元プロ野球選手。
野村監督と同時期に活躍した野球選手であり監督である。野村監督とは選手の教育方針が180度違い、「燃える男」「熱血漢」「鉄拳制裁」と呼ばれた。選手の指導で殴る蹴るといった場面もたびたびテレビでも放送された。現在の会社であれば罵倒して体罰をすればすぐに訴えられてしまうところだが、野村監督とはまた違った人心掌握術を持っており、星野監督流の選手教育であった。その結果、野村監督後に引き継いだ阪神・楽天を優勝に導いた。
野村監督が選手の自主性を促してチームを作り上げたのに対し、星野監督は威圧的に振る舞い、選手を強制的に動かし優勝へと導いた。教育方針は両監督でまったく違うが、ともに多くのファンや支持者がいたことは両者に共通する。
野村監督は1年で辞めると言った阪神球団に、星野のような監督でなければ立て直せないと言っている。選手のタイプによってはすべてが当てはまるわけではないという代表例かもしれない。現代ではなかなか難しい経営方法になるかもしれないが、土台ができていない会社にいくら「経営方針」「目標」といった柱を立てても柱すら立たない。三十年前には当たり前だった軍隊的会社経営が必要な会社は、現代でも多々ある。社員が社長の話をまともに聞かなくなったとき、星野監督のような右腕がいたらどれだけ心強いだろうか。星野監督もまた、時代に必要な監督だった。