ID経営・考えさせる社員教育とは
-野村監督と沙知代夫人はおしどり夫婦の印象が強かったですが、夫婦円満の秘訣を教えてもらえますか。
野村 何だろ、分かんない。
苦い顔をした。私はすかさず違う話に切り替える。
-監督は息子さんに対して、自分がやりたいように教育をしてきたのですか。それは選手に対する指導の仕方とはまた違うのでしょうか。
野村 無関心。
ポツリという。これまでも何度か、家族の話をしたことがある。無関心という言葉、本当の無関心ではない。父親として至らなかったところも、自分への戒めも含めて出た言葉だと思った。
野村 野球をやっていたお陰で、人様に育ててもらって中学まで家にいたんだけど、高校、大学と7年間野球部の寮に入ったから、一番大事な時期を人に育ててもらった。
-中学までは厳しかったですか。
野村 好き放題だな。
-選手を育てるのと子供を育てるのは、ちょっと違うのでしょうか。
野村 全然違うでしょ。
-より厳しくというより、甘やかしてしまうことがあるのでしょうか。
野村 俺は厳しくなれないのかな。大声で怒鳴ったこともないし。
-その点、奥様の方が厳しくというはあったのですか。
野村 よく親子喧嘩してたね。俺は星野(仙一)とは正反対だよ。アマチュア時代に影響受けた監督で、明治大学の島岡さん※という監督の影響を多大に受けてると思うのよ。だから俺の後、星野が阪神やって楽天やって、阪神の時ボコボコに殴るんだよな。それで殴る奴は決まってるんだよ、殴りやすい奴と殴りにくい奴がいるんだろうね。同じキャッチャーで矢野っていうのがいて、中日時代一緒にやってたんで、山田ってのはボコボコにぶん殴られるけど矢野は殴られてなかった。俺は人を殴ったことないから分かんないけど、殴りやすい奴と殴りにくい奴がいるんじゃないの。
※島岡吉郎 37年間にわたって明治大学野球部の指導的立場に就き、東京六大学リーグ戦優勝15回、全日本大学野球選手権大会優勝5回、明治神宮野球大会優勝2回、日本代表チームの監督も務め日米大学野球選手権大会優勝2回の記録を残した。
没後、1991年に競技者表彰で野球殿堂入り。競技者表彰はプロ野球選手または審判などが選出されることが大半であり、島岡はプロ野球に関与しなかった者として初めて競技者表彰での殿堂入りとなった。
指導に鉄拳制裁も辞さない熱血監督として知られ、教え子からは『御大』と呼ばれ恐れられた。ただ、歴代野球部キャプテンのうち、星野仙一と高田繁の二人だけは一度も殴られたことがなかったという(この二人に加えて土井淳も殴られなかったとする説もある)。星野によると「(殴られなかったのは)高田さんは真面目だったから。俺は要領がよかったから」とのことだが、島岡自身は「高田は何事においても隙がなかったから殴れず、星野は殴ると理屈をこねそうだったから」とも語っている。辻佳紀は「顔の形が変わるくらい殴られたこともあったが、勝ったりいいプレーをしたりするときの喜び様はもうたいへんなもので、そんな純心な監督を喜ばせたくてがんばりました」と言っている。
-やっぱり見せしめですかね。こいつを殴っとけば周りもそういう環境になるとか。
野村 怖い監督というイメージを作りたかったんじゃないの。アマチュア成人だよ、少年野球のレベルだよ。俺は逆なんだよ。プロでやる気がないのはほっときゃいいって思うの。自分で自分の首絞めるわけなんだから、代わりはいくらでもいるんだから。プロなら野球を仕事にして、やる気が起きないっていうのはそんなの全部自分に降りかかってくるんだから。
-この選手はやる気がなくなってるなと思うと、一応は諭したりもするのですか。
野村 ほったらかし。駄目になっていくのも自由、上手くなっていくのも自由。そういう考えだね。プロですからね、学校じゃないですからね。子供じゃあるめぇし。
社員教育の仕方、OJT、人材育成、意識改革・・・。本屋に行けば、ありとあらゆる本が並んでいる。また、研修施設やプログラム等を実施している会社も多いだろう。社員に目標の持ち方、達成の仕方、勉強の仕方、プレゼンの仕方・・・など、色々なものを提供する。でも結果が出ない。何故だろうか。
-これがダメなら、この講師を呼ぼう。定期的にミーティングや社内行事を増やして一体感を作ろう-
もうお腹いっぱいである。社員が与えられて学ぶ年齢はとっくに過ぎている。何時まで義務教育を続けるのだろうか。
与えるから学ばない。与えるから言い訳をする。教えてもらっていないから…教え方が悪かったから…。与えるから、安心する。経営者も優秀な指導者を連れてきたから大丈夫だろうとついつい思ってしまう。でもそれは違う。水を与え過ぎれば花は腐るのである。
ここで花を咲かせたいのであれば、咲かせ方を自分で考えろ。一般的に他社の真似事をしても儲からない。それは二番煎じであり、ただのマネに過ぎないからである。
自分から「水を下さい」「肥料をください」と言う社員であれば、自分から求めたものに関しては、結果も求められるし責任も出てくる。また、前提として自分に足りないものが分からないと、これを下さいとすら言えないのである。
学びたいというのであれば、会社にその用意はある。しかし、それは君たちから要求するべきものなのだ。
まずは最低限の考える教育を教えていかなければいけない。野村監督のID野球もその一つである。殴られるのは、楽なのだ。受け身だから…
-野村監督と沙知代夫人はおしどり夫婦の印象が強かったですが、夫婦円満の秘訣を教えてもらえますか。
野村 何だろ、分かんない。
苦い顔をした。私はすかさず違う話に切り替える。
-監督は息子さんに対して、自分がやりたいように教育をしてきたのですか。それは選手に対する指導の仕方とはまた違うのでしょうか。
野村 無関心。
ポツリという。これまでも何度か、家族の話をしたことがある。無関心という言葉、本当の無関心ではない。父親として至らなかったところも、自分への戒めも含めて出た言葉だと思った。
野村 野球をやっていたお陰で、人様に育ててもらって中学まで家にいたんだけど、高校、大学と7年間野球部の寮に入ったから、一番大事な時期を人に育ててもらった。
-中学までは厳しかったですか。
野村 好き放題だな。
-選手を育てるのと子供を育てるのは、ちょっと違うのでしょうか。
野村 全然違うでしょ。
-より厳しくというより、甘やかしてしまうことがあるのでしょうか。
野村 俺は厳しくなれないのかな。大声で怒鳴ったこともないし。
-その点、奥様の方が厳しくというはあったのですか。
野村 よく親子喧嘩してたね。俺は星野(仙一)とは正反対だよ。アマチュア時代に影響受けた監督で、明治大学の島岡さん※という監督の影響を多大に受けてると思うのよ。だから俺の後、星野が阪神やって楽天やって、阪神の時ボコボコに殴るんだよな。それで殴る奴は決まってるんだよ、殴りやすい奴と殴りにくい奴がいるんだろうね。同じキャッチャーで矢野っていうのがいて、中日時代一緒にやってたんで、山田ってのはボコボコにぶん殴られるけど矢野は殴られてなかった。俺は人を殴ったことないから分かんないけど、殴りやすい奴と殴りにくい奴がいるんじゃないの。
※島岡吉郎 37年間にわたって明治大学野球部の指導的立場に就き、東京六大学リーグ戦優勝15回、全日本大学野球選手権大会優勝5回、明治神宮野球大会優勝2回、日本代表チームの監督も務め日米大学野球選手権大会優勝2回の記録を残した。
没後、1991年に競技者表彰で野球殿堂入り。競技者表彰はプロ野球選手または審判などが選出されることが大半であり、島岡はプロ野球に関与しなかった者として初めて競技者表彰での殿堂入りとなった。
指導に鉄拳制裁も辞さない熱血監督として知られ、教え子からは『御大』と呼ばれ恐れられた。ただ、歴代野球部キャプテンのうち、星野仙一と高田繁の二人だけは一度も殴られたことがなかったという(この二人に加えて土井淳も殴られなかったとする説もある)。星野によると「(殴られなかったのは)高田さんは真面目だったから。俺は要領がよかったから」とのことだが、島岡自身は「高田は何事においても隙がなかったから殴れず、星野は殴ると理屈をこねそうだったから」とも語っている。辻佳紀は「顔の形が変わるくらい殴られたこともあったが、勝ったりいいプレーをしたりするときの喜び様はもうたいへんなもので、そんな純心な監督を喜ばせたくてがんばりました」と言っている。
-やっぱり見せしめですかね。こいつを殴っとけば周りもそういう環境になるとか。
野村 怖い監督というイメージを作りたかったんじゃないの。アマチュア成人だよ、少年野球のレベルだよ。俺は逆なんだよ。プロでやる気がないのはほっときゃいいって思うの。自分で自分の首絞めるわけなんだから、代わりはいくらでもいるんだから。プロなら野球を仕事にして、やる気が起きないっていうのはそんなの全部自分に降りかかってくるんだから。
-この選手はやる気がなくなってるなと思うと、一応は諭したりもするのですか。
野村 ほったらかし。駄目になっていくのも自由、上手くなっていくのも自由。そういう考えだね。プロですからね、学校じゃないですからね。子供じゃあるめぇし。
社員教育の仕方、OJT、人材育成、意識改革・・・。本屋に行けば、ありとあらゆる本が並んでいる。また、研修施設やプログラム等を実施している会社も多いだろう。社員に目標の持ち方、達成の仕方、勉強の仕方、プレゼンの仕方・・・など、色々なものを提供する。でも結果が出ない。何故だろうか。
-これがダメなら、この講師を呼ぼう。定期的にミーティングや社内行事を増やして一体感を作ろう-
もうお腹いっぱいである。社員が与えられて学ぶ年齢はとっくに過ぎている。何時まで義務教育を続けるのだろうか。
与えるから学ばない。与えるから言い訳をする。教えてもらっていないから…教え方が悪かったから…。与えるから、安心する。経営者も優秀な指導者を連れてきたから大丈夫だろうとついつい思ってしまう。でもそれは違う。水を与え過ぎれば花は腐るのである。
ここで花を咲かせたいのであれば、咲かせ方を自分で考えろ。一般的に他社の真似事をしても儲からない。それは二番煎じであり、ただのマネに過ぎないからである。
自分から「水を下さい」「肥料をください」と言う社員であれば、自分から求めたものに関しては、結果も求められるし責任も出てくる。また、前提として自分に足りないものが分からないと、これを下さいとすら言えないのである。
学びたいというのであれば、会社にその用意はある。しかし、それは君たちから要求するべきものなのだ。
まずは最低限の考える教育を教えていかなければいけない。野村監督のID野球もその一つである。殴られるのは、楽なのだ。受け身だから…