真説賃貸業界史 第48回「世界を股にかける家主は北九州で誕生」|賃貸経営|住生活を支える新聞株式会社のWebマガジン
豆知識

2022.07.25

真説賃貸業界史 第48回「世界を股にかける家主は北九州で誕生」

真説賃貸業界史 第48回「世界を股にかける家主は北九州で誕生」
保有物件数1万戸規模

 日本には数多くの「家主」が存在する。その規模はさまざまなでワンルームマンション1室の家主もいれば、100棟を超えるアパート・マンションを所有する家主もいる。今回から全国に点在する大規模家主を紹介していく。

 -日本一の家主は誰か―

 この質問に対してみなさんは何と答えるか?不動産資産を多く保有しているという意味で、保険会社を挙げる人がいるかもしれない。確かに、保険会社は資産運用の一環として積極的に不動産に投資しているイメージが強い。しかし、彼らが投資しているのは主にビルであり、アパート・マンションの比率はかなり少ない。実際、都心部で「●●生命ビル」と名付けられたビルを目にすることはあっても、「●●生命マンション」というマンションを目にすることはほとんどない。アパート・マンションもそれなりに持っているだろうが、とても日本一と言えるような規模ではない。では一体、日本で一番大きい家主は誰なのか?それは「OI.CAPITAL」という会社だ。かつて「オリエントキャピタル」と名乗っていた会社だと言えば分かる方も多いのではないだろうか。「ORIENT BLD(オリエント・ビル)」というブランドで1万戸を超える物件を所有していると言われている。“日本で一番”と言ったが、実は現在はアメリカにも多数の物件を所有している。まさに日本が生んだ、世界を股にかけた家主なのだ。
 同社は昭和58年12月に福岡県北九州市で創業し、翌年に「オリエント電子」として法人化した。社名からも分かる通り、当初は精密機械器具の販売などを主力事業として手掛けていた。それがいつしか不動産賃貸業に進出し、自他ともに認める日本一の家主の座に上り詰めた。
 同社が所有する物件のほとんどは自社開発によるものだ。最大の特徴は、常に可能な限り最先端の設備を導入していることだ。ときには、まだ分譲マンションにすら導入されていない設備を採用することもある。2005年に導入した顔認証オートロックシステムは、その最たる例だろう。分譲マンションに導入されることさえ珍しい設備を、2005年の時点で、しかも賃貸マンションに導入したというのだから、これはもうただただ驚くしかない。
 また、物件の規模が大きいのも特徴の一つだ。1棟で100戸超えるマンションも珍しくない。物件のクオリティーと規模の対する同社のこだわりは相当強いようで、ある業界紙が「福岡のデベロッパーが日本最大の賃貸マンションを開発した」という記事を掲載した際には、「日本で一番大きい賃貸マンションはうちの所有している物件だ」というクレームを入れたという逸話も残されている。
 正直なところ、OI.CAPITALは所有数、物件一つ一つの質と規模を見る限り、別格の家主であり、他と比べて頭一つも二つも飛び抜けた存在だ。対抗馬になりえる規模の家主は、おそらく日本国内には存在しないだろう。当然、家賃収入も桁違いだ。仮に1戸当たりの平均家賃を7万円とした場合、ひと月の家賃収入は7億円となる。放っておいても毎月7億円の現金が手元に入ってくるのである。物件のクオリティーを考えれば、実際の家賃収入はもっと多いだろう。
 同社は今後、家主としてどんな成長を遂げるのか?おそらくこれまで同様、物件開発は継続していくだろう。それが国内中心なのか、それとも海外の比重を増やしていくのかは分からない。いずれにせよ、今後も人々を「あっ」と驚かすような賃貸マンションを開発し続けていって欲しいものだ。今後の動向にも注目したい。