不動産の取得金額が分からないと売却時に
高額な譲渡所得税がかかることがあるって本当!?
相続資産を相続人間で平等に分配するための一つの手段として、不動産を売却して現金化する方法があります。しかし、不動産を取得したときの売買契約書や領収書などを紛失してしまっている場合、売却収入から取得費の控除ができないため、結果的に高額な譲渡所得税が課せられてしまうことがあります。こうした場合の対処法について事例を交えてご紹介します。
「家族間で変な争いが起こるのを防ぐために、父が遺してくれた土地を売却したものの、高額な譲渡取得税が発生してしまった・・・。こんなことになるなら最初あら売らなければよかった・・・」
東京都台東区にお住いの江本孝弘さんは2017年に、他界した父が遺した資産を、お母様と弟、妹ともに相続しました。遺産は現金900万円と、お父様が営んでいた町工場の跡地約100坪。孝弘さんらは相談の末、工場跡地は売却して現金化し、その上で法律に従ってお母様が50%、残りは兄弟3人で均等に相続することにしました。
しかし、工場跡地の売却が決まった際に、大きな問題に直面。跡地は9500万円で売却することになったのですが、その際にかなり高額な譲渡所得税が発生し、せっかく相続した資産が大きく目減りしてしまうことが分かったのです。
「実は売買契約書が見当たらず、土地の購入金額が一体いくらだったのかが分かりませんでした。そのため税金の控除が5%しかできず、高額な譲渡所得税が課せられることになってしまいました」
譲渡所得税は、課税譲渡所得金額をもとに算出されます。その際に購入金額がいくらだったのかを証明する必要があるのですが、万が一それができなかった場合、取得費は売買価格の5%とみなされます。これを「みなし取得費」といいます。江本さんの場合は、以下の計算式にもとづき、
(譲渡所得税の計算)
土地の購入費用・・・売買契約書、領収書がないため不明
土地の売却金額・・・9500万円
土地の譲渡費用・・・350万円
課税譲渡所得金額=9500万円-9500万円×5%-350万円-3000万円=5675万円
譲渡所得税=5675万円×14%=794万5000円
譲渡所得税は794万5000円となりました。相続人4人で平等に負担した場合でも、一人当たり200万円になります。孝弘さんの相続分は約1580万円であることを考えると、課税額はかなり高額だと言えます。
「どうにかできないものか・・・」
孝弘さんは知人のS税理士に相談しました。話を聞いたS税理士は次のように言いました。
「他に手がないわけではありません。契約書でなくてもいいので、購入時のやりとりを記した資料を探しましょう」
孝弘さんはお父様の部屋に残された書類をまとめたファイルを片っ端からひっくり返しました。そして、ある1枚の書類を発見しました。
「領収書が見つかったんです。すぐにS税理士に連絡したところ、領収書で十分証明になるとのことでした」
領収書の発見により購入費は8000万円だったことが証明されたため、譲渡所得税の再計算が行われました。
(譲渡所得税の再計算)
土地の購入費用・・・8000万円
土地の売却金額・・・9500万円
土地の譲渡費用・・・350万円
課税譲渡所得金額=9500万円-8000万円-350万円-3000万円=-1850万円
課税譲渡所得金額を計算した時点でマイナスとなったため、譲渡所得税は0円となりました。孝弘さんはすぐに更正の申請を行い、一度納めた譲渡所得税を還付してもらいました。これにより、孝弘さんは譲渡所得税を負担することなく、お父様の遺産の一部を相続することができました。
「相続した不動産の購入額が分からない」というケースはよくあります。みなさんも高額な譲渡所得税の課税を避けるためにも、不動産関係の書類は被相続人が元気なうちに確認するようにしましょう。不動産関係の相続に関するお悩み、ご相談は、お近くの相続不動産相談所まで。
高額な譲渡所得税がかかることがあるって本当!?
相続資産を相続人間で平等に分配するための一つの手段として、不動産を売却して現金化する方法があります。しかし、不動産を取得したときの売買契約書や領収書などを紛失してしまっている場合、売却収入から取得費の控除ができないため、結果的に高額な譲渡所得税が課せられてしまうことがあります。こうした場合の対処法について事例を交えてご紹介します。
「家族間で変な争いが起こるのを防ぐために、父が遺してくれた土地を売却したものの、高額な譲渡取得税が発生してしまった・・・。こんなことになるなら最初あら売らなければよかった・・・」
東京都台東区にお住いの江本孝弘さんは2017年に、他界した父が遺した資産を、お母様と弟、妹ともに相続しました。遺産は現金900万円と、お父様が営んでいた町工場の跡地約100坪。孝弘さんらは相談の末、工場跡地は売却して現金化し、その上で法律に従ってお母様が50%、残りは兄弟3人で均等に相続することにしました。
しかし、工場跡地の売却が決まった際に、大きな問題に直面。跡地は9500万円で売却することになったのですが、その際にかなり高額な譲渡所得税が発生し、せっかく相続した資産が大きく目減りしてしまうことが分かったのです。
「実は売買契約書が見当たらず、土地の購入金額が一体いくらだったのかが分かりませんでした。そのため税金の控除が5%しかできず、高額な譲渡所得税が課せられることになってしまいました」
譲渡所得税は、課税譲渡所得金額をもとに算出されます。その際に購入金額がいくらだったのかを証明する必要があるのですが、万が一それができなかった場合、取得費は売買価格の5%とみなされます。これを「みなし取得費」といいます。江本さんの場合は、以下の計算式にもとづき、
(譲渡所得税の計算)
土地の購入費用・・・売買契約書、領収書がないため不明
土地の売却金額・・・9500万円
土地の譲渡費用・・・350万円
課税譲渡所得金額=9500万円-9500万円×5%-350万円-3000万円=5675万円
譲渡所得税=5675万円×14%=794万5000円
譲渡所得税は794万5000円となりました。相続人4人で平等に負担した場合でも、一人当たり200万円になります。孝弘さんの相続分は約1580万円であることを考えると、課税額はかなり高額だと言えます。
「どうにかできないものか・・・」
孝弘さんは知人のS税理士に相談しました。話を聞いたS税理士は次のように言いました。
「他に手がないわけではありません。契約書でなくてもいいので、購入時のやりとりを記した資料を探しましょう」
孝弘さんはお父様の部屋に残された書類をまとめたファイルを片っ端からひっくり返しました。そして、ある1枚の書類を発見しました。
「領収書が見つかったんです。すぐにS税理士に連絡したところ、領収書で十分証明になるとのことでした」
領収書の発見により購入費は8000万円だったことが証明されたため、譲渡所得税の再計算が行われました。
(譲渡所得税の再計算)
土地の購入費用・・・8000万円
土地の売却金額・・・9500万円
土地の譲渡費用・・・350万円
課税譲渡所得金額=9500万円-8000万円-350万円-3000万円=-1850万円
課税譲渡所得金額を計算した時点でマイナスとなったため、譲渡所得税は0円となりました。孝弘さんはすぐに更正の申請を行い、一度納めた譲渡所得税を還付してもらいました。これにより、孝弘さんは譲渡所得税を負担することなく、お父様の遺産の一部を相続することができました。
「相続した不動産の購入額が分からない」というケースはよくあります。みなさんも高額な譲渡所得税の課税を避けるためにも、不動産関係の書類は被相続人が元気なうちに確認するようにしましょう。不動産関係の相続に関するお悩み、ご相談は、お近くの相続不動産相談所まで。