レオパレス21 一向に改善しない入居率と管理物件の流出|企業|住生活を支える新聞株式会社のWebマガジン
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2021.12.20

レオパレス21 一向に改善しない入居率と管理物件の流出

レオパレス21 一向に改善しない入居率と管理物件の流出
施工不良物件の改修計画はさらに後ろ倒しの可能性も?

 アパートの施工不良が発覚して以降、極度の業績不振に陥っているレオパレス21(東京都中野区)。1年前にはソフトバンクグループ(SBG)の米ファンド、フォートレス・インベストメント・グループから総額572億円の支援を受け、再建に向けて舵を切ったが、10月に公表された管理物件の月次データから、今なお危機的な状況にあることが明らかになった。
 データによると、入居率は81.13%で、前月から0.6%改善した。今年3月以降は、採算ラインとされる80%以上の水準を維持し続けていることから、一部から「危機的な状況から脱するために道筋がようやく見え始めてきた」という意見が聞こえるようになってきた。しかし、そう考えるのはあまりにも早計だ。確かに、1年前に入居率が80%を大きく下回る状況が続いていたことを考えれば、状況は多少マシになったと言えるかもしれない。しかし、良くなったといっても、採算ラインをわずかに1%強超えただけに過ぎない。管理のプロの数字としてはもちろん失格だ。しかも、入居率はずっと改善し続けているわけではない。今年に限ってみても、最も入居率が高かったのは3月の81.72%で、以降は上がったり下がったり繰り返している。来月にはまた下がるかもしれない。とてもではないが、「改善した」と言えるような状況にないことは、火を見るよりも明らかだ。
 危機的な状況にあることは、管理戸数の推移からも伺える。事件発覚後、同社の管理物件は流出を続けており、2019年10月から今年9月までの2年間で、管理戸数は合計3367戸も減少した。今後も、おそらく流出は止まらないだろう。主力事業のアパート建築が事実上、停止状態にある中、管理物件は同社にとって最大の収益源だ。しかし、その頼みの綱であるはずの管理物件が毎月減っているというのだから、状況は改善どころか悪化しているようにさえ見える。いくら入居率が改善しても、一方で管理物件が減り続けていれば、業績は一向に上向かない。まさに負のスパイラルに陥っているような状況だ。
一方で、施工不良物件の改修状況も気になるところだ。改修工事を終えた物件は、9月末時点で19万7965戸中4万9111戸とされる。事件発覚から2年以上も経っているのに、わずか4分の1しか終わっていないというのだ。早いか遅いかは意見が分かれるところだが、このペースだと全戸の工事が完了するまでに、あと6年もかかることになる。同社は工事の完了目標を24年末としているが、現状を見る限り、とても間に合いそうにない。工事完了物件が今年2月時点の4万戸から、5カ月間で1万戸弱しか増えていないところを見ると、計画はさらに後ろ倒しされるかもしれない。
 果たして、レオパレス21は復活できるのだろうか。コロナ禍が落ち着きを見せる中で迎える次の繁忙期(1~3月)は、それを見極める重要なタイミングになるかもしれない。賃貸業界の動向に詳しい専門家は

「去年と今年の繁忙期は、新型コロナウイルスの影響で引っ越し需要が大きく落ち込みました。同社の主要顧客である法人関係も例外ではありませんでした。今回はコロナが落ち着いていることもあり、ある程度期待ができます。もしかしたら入居率は大きく改善するかもしれません」

と話す。だが、この意見に対して別の専門家は

「この2年、人の移動が制限されたことが、同社にとって幸いしたと考えています。普通、問題が発覚した会社の物件に住みたいと考える人はあまりいません。既存入居者の中にはさっさと引っ越そうと考えていた方も少なからずいるはずです。しかし、そこにコロナが来たことで、出ていきたくても出ていけなくなってしまった。コロナが終息し、人の移動が再び活発化すれば、退去者が続出するかもしれません。そうなれば、いくら新しい入居が決まっても、入居率は改善しません」

と指摘する。どちらも無視できない意見だ。いずれにせよ、予断を許さない状況が続いていることは間違いない。今のところ、SBGの支援の効果もまったく見えてこない。今後もその動向から目を離せない。