コロナ禍で企業による不動産資産の売却が活発化か!?|企業|住生活を支える新聞株式会社のWebマガジン
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2021.01.04

コロナ禍で企業による不動産資産の売却が活発化か!?

コロナ禍で企業による不動産資産の売却が活発化か!?
水面下で不動産取引が活性化か?

「三越伊勢丹ホールディングスが不動産事業売却」

 昨年末、新聞紙面を飾ったニュースが、不動産業界で大きな話題になった。どういうことか?業界に詳しい専門家は、

「2021年3月期(2020年4月~2021年3月期)の連結業績で、最終損益がマイナス450億円の大幅赤字になる見通しです。不動産事業の売却は、状況を改善するための対策の一つだと考えられます。コロナ禍で、同社と同様、業績不振に陥っている企業は多い。今後、事業自体の売却とはいかないまでも、不動産資産を切り売りする動きが増えていくかもしれません。そうなれば、流通市場は一気に活性化します」

 と話す。要は、コロナ禍で業績不振の企業による物件売却が増えるのではないかと、噂されているというのだ。
 確かにその可能性は十分にある。景気の後退が原因で業績が落ち込んだ場合、企業はリストラや賃金の引き下げ、あるいは雇止めによって人件費を削減して経営再建を図るのが一般的だ。しかし、今回のケースは“一時的なコロナウイルスの流行”が原因で、ワクチンが完成しさえすれば、事態は収束に向かうと考えられている。現時点ではまだ、具体的な時期については定かではないものの、おおよその見通しとしては、あと半年以内には日本でも普通に、ワクチンが摂取できるようになるのではないかと言われている。つまり、企業はその時に備えて、人員を確保しておかなければならない。今の時代、「業績が下がって大変なので、いったん解雇します。状況が良くなったらまた戻ってきて下さい」という一方的なやり方は通じない。

-先のことを考えると解雇はできない。ならば、どうやって人件費を捻出するか・・・-

 結局、行き着く先は、事業もしくは資産の売却となるわけだ。
 
 実際、三越伊勢丹ホールディングス以外にも、すでにこうした動きはあちらこちらで見受けられる。音楽・映像事業大手のエイベックス(東京都港区)は昨年11月に、3年前に開業したばかりの自社ビル「エイベックスビル」(地上18階建て)を売却すると発表。同社はコロナ禍で主力のライブ事業やグッズ・音楽CD販売が低迷し、直近の決算で32億円もの純損失を出していた。象徴とも言うべき自社ビルの売却に踏み切ったことからも、コロナが同社の経営に対して、数字以上に大きな打撃を与えたことが伺い知れる。
 アパレル分野でも、不動産資産の売却に乗り出す動きが増えている。三陽商会は、銀座にある商業ビル「ギンザ・タイムレス・エイト」をレーサム・リサーチに売却。セレクトショップ「ナノ・ユニバース」を展開するTSIホールディングス(東京都港区)も、2021年2月期の営業損益は178億円の大幅赤字だが、下期に複数の不動産を売却して売却益を計上。何とか営業赤字を吸収し、わずか5000万円ながらも、最終黒字を確保した。オンワードホールディングス(東京都中央区)は、連結子会社のオンワード樫山が都内港区に保有する倉庫兼物流センターを、1月29日付で、住友不動産に約58億円で売却する。システム開発大手のNEC(東京都港区)も、相模原に保有していた事業所を、不動産大手のヒューリックに売却した。表に出てこない中小企業の動きも含めれば、水面下ではすでに多くの売却案件が動いていると言われている。
 ちなみに、こうした動きは海外でもすでに出ている。例えば、“香港の不動産”と呼ばれる鄧成波氏も、今回のコロナ禍で賃貸収入が激減したため、200億香港ドルにものぼる不動産資産を売りに出したニュースが報じられた。同氏が保有する不動産ポートフォリオは約750億香港ドル(約1兆円)とされ、実に25%近い物件の売却に踏み切ったことになる。
 果たして、不動産市場はこれからどうなるのか?コロナが不動産投資を活性化させるのか、今後の動向に注目したい。