わずか3週間で株価は半値以下に
株主への裏切り行為が明らかになった建築関連資材販売大手で東証一部上場のすてきナイスグループ(神奈川県横浜市)。2015年3月期の決算を粉飾したとして、元会長の平田浩一郎氏を含む元経営陣3名が(現在1名は釈放)、横浜地検によって7月25日に逮捕されたことは、すでに本紙でも報じた通りだが、その後、8月14日になって、元会長と元社長、さらには法人としての同社が起訴された。信用は地に落ち、疑惑が報じられた5月以降、株価は下落の一途辿っている。5月16日に年初来高値の1129円を付けたものの、直後に疑惑が発覚。わずか3週間で半値以下の545円にまで急落し、9月に入ってからは700円前後を維持するのがやっとの状況が続いている。「清く、正しく、まじめなナイス」という理念が聞いて呆れると、世の中の反応は冷たい。
レオパレス21、大和ハウス工業、TATERUに同社と、ここのところ住宅・不動産業界では大手による不正が次々と明るみに出ている。なぜ不正は繰り返されるのか?最大の理由は、業績不振に陥ると、金融機関から融資を見送られてしまう可能性があるためだ。来年に控えた東京五輪の影響で、国内不動産市場は依然として好調なように見える。住宅分野においても、新築・中古を問わず、好調な業績を上げている企業は多い。しかし、だからといって銀行の融資姿勢が積極的かと言うと、実は必ずしもそうだとは言えない。というのも、今の好調さが東京五輪後も続くかどうか、まったく分からないからだ。もしも状況が一変するような事態になれば、金融機関はたちまち多額の不良債権を抱え込むことになる。銀行業界は、地銀の7割が減益・赤字になるなど、ただでさえ厳しい状況にある。企業側に少しでも不安材料があると分かれば、たちまち融資を打ち切る可能性は十分にある。銀行からの融資を受けず、自己資金だけでやっていける企業は限られる。ましてや不動産開発のように、多額の資金を必要とする事業を行う会社は、金融機関の融資なしでやっていくのはほとんど不可能だと言えるだろう。
また、創業者や創業家出身者が、上場後も多くの株を保有しているようなケースでは、業績不振などで株価が下落するのを恐れる傾向が強い。例えば、今回のすてきナイスグループの株主構成を見ると、粉飾を主導したとされる平田浩一郎元会長は、全体の2.42%に相当する23万4000株を保有している。株主比率としては8番目だが、個人としてはトップの保有数だ。会長として自ら経営を主導していたとあって、業績に対するこだわりはとりわけ高かっただろう。業績不振で株価が下落するなど、プライド的にとても受け入れられることではなかったはずだ。そして、赤字を出すことを極度に恐れた結果、株価の大暴落を招くことになる粉飾決算に手を染めたのではないか。
企業経営には好不調は付きもの。どんなにがんばっていても、企業単独ではどうにもならないこともある。しかし、悪い時だからこそ、実情を隠すことなく開示し、会社を最善の方向に導くために助け合っていくが、企業と株主の本来の関係ではないのか。自らのプライドだけにこだわり、有価証券報告書の虚偽記載を指示するなど、絶対にあってはならない行為だ。「たられば」になってしまうが、赤字なら赤字で正直に状況を報告していれば、ここまで株価が下落することもなかったのではないだろうか。
すてきナイスグループは今後、どうなるのか。今のところ株価は700円前後で推移しているとはいえ、それも今後の状況次第でどうなるか分からない。逮捕の容疑は2015年の3月期決算を粉飾したというものだが、実は14年以降の決算すべてに同様の疑いがあると報じられている。仮に過去6年分の決算すべてが粉飾ということになれば、株価だけでなく、同社の業績にはもっと大きな影響が出るかも知れない。そうなれば上場廃止や倒産も、いよいよ現実味を帯びてくる。地検は両被告の認否を明らかにしていないため、現時点で粉飾に至った経緯については不明だが、消費者や株主、取引業者を裏切った罪を大きい。
株主への裏切り行為が明らかになった建築関連資材販売大手で東証一部上場のすてきナイスグループ(神奈川県横浜市)。2015年3月期の決算を粉飾したとして、元会長の平田浩一郎氏を含む元経営陣3名が(現在1名は釈放)、横浜地検によって7月25日に逮捕されたことは、すでに本紙でも報じた通りだが、その後、8月14日になって、元会長と元社長、さらには法人としての同社が起訴された。信用は地に落ち、疑惑が報じられた5月以降、株価は下落の一途辿っている。5月16日に年初来高値の1129円を付けたものの、直後に疑惑が発覚。わずか3週間で半値以下の545円にまで急落し、9月に入ってからは700円前後を維持するのがやっとの状況が続いている。「清く、正しく、まじめなナイス」という理念が聞いて呆れると、世の中の反応は冷たい。
レオパレス21、大和ハウス工業、TATERUに同社と、ここのところ住宅・不動産業界では大手による不正が次々と明るみに出ている。なぜ不正は繰り返されるのか?最大の理由は、業績不振に陥ると、金融機関から融資を見送られてしまう可能性があるためだ。来年に控えた東京五輪の影響で、国内不動産市場は依然として好調なように見える。住宅分野においても、新築・中古を問わず、好調な業績を上げている企業は多い。しかし、だからといって銀行の融資姿勢が積極的かと言うと、実は必ずしもそうだとは言えない。というのも、今の好調さが東京五輪後も続くかどうか、まったく分からないからだ。もしも状況が一変するような事態になれば、金融機関はたちまち多額の不良債権を抱え込むことになる。銀行業界は、地銀の7割が減益・赤字になるなど、ただでさえ厳しい状況にある。企業側に少しでも不安材料があると分かれば、たちまち融資を打ち切る可能性は十分にある。銀行からの融資を受けず、自己資金だけでやっていける企業は限られる。ましてや不動産開発のように、多額の資金を必要とする事業を行う会社は、金融機関の融資なしでやっていくのはほとんど不可能だと言えるだろう。
また、創業者や創業家出身者が、上場後も多くの株を保有しているようなケースでは、業績不振などで株価が下落するのを恐れる傾向が強い。例えば、今回のすてきナイスグループの株主構成を見ると、粉飾を主導したとされる平田浩一郎元会長は、全体の2.42%に相当する23万4000株を保有している。株主比率としては8番目だが、個人としてはトップの保有数だ。会長として自ら経営を主導していたとあって、業績に対するこだわりはとりわけ高かっただろう。業績不振で株価が下落するなど、プライド的にとても受け入れられることではなかったはずだ。そして、赤字を出すことを極度に恐れた結果、株価の大暴落を招くことになる粉飾決算に手を染めたのではないか。
企業経営には好不調は付きもの。どんなにがんばっていても、企業単独ではどうにもならないこともある。しかし、悪い時だからこそ、実情を隠すことなく開示し、会社を最善の方向に導くために助け合っていくが、企業と株主の本来の関係ではないのか。自らのプライドだけにこだわり、有価証券報告書の虚偽記載を指示するなど、絶対にあってはならない行為だ。「たられば」になってしまうが、赤字なら赤字で正直に状況を報告していれば、ここまで株価が下落することもなかったのではないだろうか。
すてきナイスグループは今後、どうなるのか。今のところ株価は700円前後で推移しているとはいえ、それも今後の状況次第でどうなるか分からない。逮捕の容疑は2015年の3月期決算を粉飾したというものだが、実は14年以降の決算すべてに同様の疑いがあると報じられている。仮に過去6年分の決算すべてが粉飾ということになれば、株価だけでなく、同社の業績にはもっと大きな影響が出るかも知れない。そうなれば上場廃止や倒産も、いよいよ現実味を帯びてくる。地検は両被告の認否を明らかにしていないため、現時点で粉飾に至った経緯については不明だが、消費者や株主、取引業者を裏切った罪を大きい。