礼金、敷金、更新料、仲介手数料、etc…、
礼金、敷金(保証金)・・・、借り主は賃貸住宅に入居する際に、さまざまな費用を負担しなければならない。しかし、実はこのいずれもその定義はもちろん、金額割合などについても法律には規定されておらず、商慣習として請求されているものを、借り主は「そういうルールなのだ」と受け入れて支払っているに過ぎない。それ故に、いつの時代においても、これらの費用を巡るトラブルが絶えない。
「礼金と敷金、初月の家賃を合わせて、部屋を借りるだけで50万円もかかった・・・。昔と比べればだいぶ安くなったのかもしれないけれど、やっぱり高いな・・・・」
これはこの春、都内でワンルームマンションを契約した男性の言葉だ。男性が借りたのは最寄駅から徒歩10分の場所にある、築15年の物件。家賃は10万円であるため、礼金と敷金で40万円もの大金を支払ったことになる。確かに高いと感じる。
そもそも礼金と資金とは何なのか。「礼金」は読んで字のごとく、もともとは部屋を貸してくれた家主に、“お礼”の意味で支払う費用を差していた。古くからの商慣習とは言え、「お客様」である借り主が家主に対して「部屋を貸して頂いてありがとうございます」と言ってお礼のお金を渡すのはいかにも不自然な感じがするが、最近はその性質が拡大解釈されるようになり、賃料の一部を充当されるものとして捉えられている。
一方「敷金」は、部屋を借りる際に家主に“預ける”お金であり、本来は滞納などが発生した場合に備えるための保険金的な役割を果たすものだ。店舗や事務所などの事業用不動産では「保証金」と呼ばれることが多いが、意味はほぼ同じだ。その性質からすれば、何事もなく退去する場合には全額を返金するべきだが、ほとんどの場合、原状回復に充てるなどの理由で一部が差し引かれる。半分も戻ってくれば御の字だ。
現在、どこの地域で部屋を借りる場合も、基本的にはこの「礼金」と「敷金」、もしくは「礼金」を支払う必要がある。金額等については地域によって異なるが、例えば東京およびその近郊エリアでは、それぞれ家賃の1~2ヶ月分程度を徴収するのが今は一般的だ。冒頭の男性は、まさにこのケースに当てはまる。だが、需要に対して供給が不足していた時代には、敷金・礼金の金額は今よりも高く、それぞれ3~4ヶ月分徴収するケースが多かった。
一方、大阪や兵庫などの関西地区では、最近でこそ見かける機会が少なくなったが、以前は「敷引き制度」と呼ばれる独自の商習慣が頻繁に使われていた。入居契約時に、「礼金」をもらわない代わりに「保証金」(敷金とほぼ同義)を家賃の5~10ヶ月分に徴収するのだが、特徴的なのは解約時に返還する額をあらかじめ決めていたことだ。最も高い場合、8割が敷引きで償却されるため、首都圏で負担する「礼金」「敷金」よりも、借り主が最終的に負担する額は高額だった。冒頭の男性が同じ条件の物件を大阪で借りた場合、保証金を家賃4ヶ月分とすると、入居時に支払う総金額自体は50万円(初月の家賃10万円含む)と変わらないが、敷引きが8割と仮定すると、退去時にはまず保証金から32万円が問答無用で差し引かれる。しかも残った8万円もそのまま返還されるわけではなく、さらに原状回復費が差し引かれた。最終的には借り主に1円も戻ってこないこともあった。保証金の額や敷引きされる割合は、時代を経るごとに徐々に下がったものの、かつては保証金10ヶ月分、敷引き8割というのも珍しくなかった。これで計算すると、先程の男性が契約時に支払う金額は初月家賃を含め110万円、敷引き金額は80万円と、あまりにも高額だ。信じられないような話だが、バブル時代にはこんなことが平気でまかり通っていた。今からしてみれば、異常とも言える状況だが、借り主も黙っていつまでもこの状況を容認しているわけはなく、消費者契約法の施行を契機に、敷引きを巡る裁判が各地で起こされるようになっていった。家主側も無用な混乱は避けたいとの思いから、敷引きの割合を引き下げたり、あるいは礼金・敷金制度に切り替えるなどして対応。最高裁判所は敷引き特約について、不当な金額でない限り有効との判断を示しているものの、今では敷引き制度を見掛ける機会はめっきり減った。
賃貸に関わる費用は、時代の移り変わりや賃貸市場を取り巻く環境の変化に合わせて、少しずつ変わってきている。10年程前には、京都と滋賀で独自に用いられてきた更新料を巡った裁判も大きな話題になったし、最近では仲介手数料の在り方についても、さまざまな意見が出ている。次号では、更新料を巡る歴史についてまとめる。
礼金、敷金(保証金)・・・、借り主は賃貸住宅に入居する際に、さまざまな費用を負担しなければならない。しかし、実はこのいずれもその定義はもちろん、金額割合などについても法律には規定されておらず、商慣習として請求されているものを、借り主は「そういうルールなのだ」と受け入れて支払っているに過ぎない。それ故に、いつの時代においても、これらの費用を巡るトラブルが絶えない。
「礼金と敷金、初月の家賃を合わせて、部屋を借りるだけで50万円もかかった・・・。昔と比べればだいぶ安くなったのかもしれないけれど、やっぱり高いな・・・・」
これはこの春、都内でワンルームマンションを契約した男性の言葉だ。男性が借りたのは最寄駅から徒歩10分の場所にある、築15年の物件。家賃は10万円であるため、礼金と敷金で40万円もの大金を支払ったことになる。確かに高いと感じる。
そもそも礼金と資金とは何なのか。「礼金」は読んで字のごとく、もともとは部屋を貸してくれた家主に、“お礼”の意味で支払う費用を差していた。古くからの商慣習とは言え、「お客様」である借り主が家主に対して「部屋を貸して頂いてありがとうございます」と言ってお礼のお金を渡すのはいかにも不自然な感じがするが、最近はその性質が拡大解釈されるようになり、賃料の一部を充当されるものとして捉えられている。
一方「敷金」は、部屋を借りる際に家主に“預ける”お金であり、本来は滞納などが発生した場合に備えるための保険金的な役割を果たすものだ。店舗や事務所などの事業用不動産では「保証金」と呼ばれることが多いが、意味はほぼ同じだ。その性質からすれば、何事もなく退去する場合には全額を返金するべきだが、ほとんどの場合、原状回復に充てるなどの理由で一部が差し引かれる。半分も戻ってくれば御の字だ。
現在、どこの地域で部屋を借りる場合も、基本的にはこの「礼金」と「敷金」、もしくは「礼金」を支払う必要がある。金額等については地域によって異なるが、例えば東京およびその近郊エリアでは、それぞれ家賃の1~2ヶ月分程度を徴収するのが今は一般的だ。冒頭の男性は、まさにこのケースに当てはまる。だが、需要に対して供給が不足していた時代には、敷金・礼金の金額は今よりも高く、それぞれ3~4ヶ月分徴収するケースが多かった。
一方、大阪や兵庫などの関西地区では、最近でこそ見かける機会が少なくなったが、以前は「敷引き制度」と呼ばれる独自の商習慣が頻繁に使われていた。入居契約時に、「礼金」をもらわない代わりに「保証金」(敷金とほぼ同義)を家賃の5~10ヶ月分に徴収するのだが、特徴的なのは解約時に返還する額をあらかじめ決めていたことだ。最も高い場合、8割が敷引きで償却されるため、首都圏で負担する「礼金」「敷金」よりも、借り主が最終的に負担する額は高額だった。冒頭の男性が同じ条件の物件を大阪で借りた場合、保証金を家賃4ヶ月分とすると、入居時に支払う総金額自体は50万円(初月の家賃10万円含む)と変わらないが、敷引きが8割と仮定すると、退去時にはまず保証金から32万円が問答無用で差し引かれる。しかも残った8万円もそのまま返還されるわけではなく、さらに原状回復費が差し引かれた。最終的には借り主に1円も戻ってこないこともあった。保証金の額や敷引きされる割合は、時代を経るごとに徐々に下がったものの、かつては保証金10ヶ月分、敷引き8割というのも珍しくなかった。これで計算すると、先程の男性が契約時に支払う金額は初月家賃を含め110万円、敷引き金額は80万円と、あまりにも高額だ。信じられないような話だが、バブル時代にはこんなことが平気でまかり通っていた。今からしてみれば、異常とも言える状況だが、借り主も黙っていつまでもこの状況を容認しているわけはなく、消費者契約法の施行を契機に、敷引きを巡る裁判が各地で起こされるようになっていった。家主側も無用な混乱は避けたいとの思いから、敷引きの割合を引き下げたり、あるいは礼金・敷金制度に切り替えるなどして対応。最高裁判所は敷引き特約について、不当な金額でない限り有効との判断を示しているものの、今では敷引き制度を見掛ける機会はめっきり減った。
賃貸に関わる費用は、時代の移り変わりや賃貸市場を取り巻く環境の変化に合わせて、少しずつ変わってきている。10年程前には、京都と滋賀で独自に用いられてきた更新料を巡った裁判も大きな話題になったし、最近では仲介手数料の在り方についても、さまざまな意見が出ている。次号では、更新料を巡る歴史についてまとめる。