賃貸経営トラブル講座~夜逃げした家賃滞納者の荷物は勝手に処分できる?~|空室対策|住生活を支える新聞株式会社のWebマガジン
豆知識

2022.09.19

賃貸経営トラブル講座~夜逃げした家賃滞納者の荷物は勝手に処分できる?~

賃貸経営トラブル講座~夜逃げした家賃滞納者の荷物は勝手に処分できる?~
知っておきたい残置物の取り扱い方法

 賃貸経営をしていると、日常的にさまざまなトラブルに遭遇します。すぐに解決できるものもあれば、話がこじれて解決までに長い時間を要してしまうケースもあるでしょう。今回は家賃滞納者が夜逃げしてしまった後の残置物の撤去にまつわるトラブルを取材しました。

「家賃を4ヶ月も滞納した挙句、夜逃げをしたため、部屋の中に残されたものを処分して別の人に貸し出したところ、半年後に突然現れて処分したものをすべて弁償しろと言ってきた。一体どうすればいいんだ・・・」

 -家賃滞納者が荷物を置いたまま夜逃げした-ドラマの中でよくありそうな話ですが、実は決して珍しい出来事ではありません。10年、20年クラスのオーナーであれば、過去に1度や2度は経験しているのが当たり前と言われるほど、日常的に起こっている出来事なのです。
 今回取材した城本康文オーナーも、賃貸経営10年目の節目に家賃を滞納していたXが夜逃げする被害に遭いました。逃げたのは、10カ月前に入居した40代の男性。つまり、入居から6ヶ月目で滞納が始まったことになります。

「男性は大手電機メーカーに勤務する派遣社員でした。うちの物件に入居してすぐリーマンショックが起こり、派遣切りにあったようでした。事情が事情なだけに、私もすぐに取り立てることはしませんでした。かえってそれが良くなかったのかもしれません」

 しかし、そんな城本さんの優しさを踏みにじり、Xはある日、部屋から忽然と姿を消してしまいました。携帯にかけても電話は繋がらなかったため、城本さんは仕方なく、保証人として登録されていたXの父親の携帯電話に連絡しました。

「もしもし、実はXさんが家賃を4ヶ月も滞納した上、先日夜逃げしました。お父様が保証人になっておられるので、今後のことをご相談したいので、一度こちらに来ていただけないでしょうか?」

伝口に出た人物は少し間を置いた後、次のように言ったそうです。

「大変申し訳ないのですが、Xの父親は2ヶ月ほど前に亡くなりました。私はXの叔父で、誰かから連絡があったときのために携帯電話を預かっています。しかし、Xの滞納については私では対応できません。直接Xと連絡を取って解決して下さい。失礼します」

 城本さんは困り果ててしまいました。夜逃げ以来、Xとはずっと音信不通。かといって、
部屋の中の荷物をどうにかしないと、次の人に貸し出すこともできません。このままでは、城本さんは本来得られるはずの家賃を、ずっとロスし続けることになってしまいます。考え抜いた末、城本さんは貴重品だと思われるものを除き、Xが残していった荷物をすべて処分
することにしました。

「荷物はそれほど多くなかったので、撤去作業は2時間ほどで終わりました。すぐにハウスクリーニングを入れて入居募集を出したところ、1週間で次の入居が決まりました。これでまた家賃収入が得られると思い、安心しました」

 しかし、安心したのも束の間。そこからさらに半年ほど経ったある日、夜逃げしたXが、突然城本さんの前に姿を現わしました。

「出稼ぎから戻ってきたら、私が借りていた部屋に別の人間が住んでいた。事情を聞いたとロコ、どうやら部屋の荷物を全部処分して、部屋を貸し出したそうですね。家賃を滞納していたのだから追い出されるのは仕方ないにしても、私物を勝手に処分したのは許せない。全部弁償してくれ」

 滞納者が夜逃げした際に、オーナーが頭を悩ますのが残置物の対処についてです。次に貸し出すために部屋から運び出すにしてもその費用は一体だれが負担するのか?そして運び出した荷物はどうすればよいのか?勝手に処分して良いのか?駄目ならどこかに保管しておくことになるが、その費用は誰が払うのか? 
 もしみなさんが同様の事態に遭遇した際には、まずは契約書を確認するところから始めて下さい。契約書に「残置物があった場合、所有権を放棄する」という記載がある場合は、部屋亜に残されたものをすべて処分してしまって構いません。今回のように後になって元入居者が弁償を要求してきても、応える必要はありません。
 もし所有権放棄の記載がない場合は、保証人に残置物の撤去を依頼して下さい。ただし、保証人が費用負担を渋って、なかなか協力してくれないこともあります。その場合は、保証人から承諾を得た上で、費用をオーナーが負担して残置物を撤去しましょう。

「なんで自分がお金を出さなきゃならないんだ」

と思うかもしれませんが、撤去に時間がかかればかかるほど、家賃ロスは大きくなります。ロスを最小限に抑えるための傷みだと思って我慢して下さい。

 話を戻します。城本さんは誰からも承諾を得ないままXの荷物を処分してしまったため、すべて弁償する羽目になりました。ただし、滞納家賃と相殺する形を採ったため、実際にXに支払ったのは15万円で済んだそうです。

「手痛い出費になってしまいましたが、これも勉強だと思いました」

 賃貸トラブルは初期対応を誤ると、大変な事態に発展してしまうことがあります。分からないときは無理に自分だけに解決しようとせずに、プロに相談するようにしましょう。ご相談はお近くの全国優良リフォーム会員まで。