真説賃貸業界史 第47回「日本における不動産フランチャイズの歴史」|知識・教養|住生活を支える新聞株式会社のWebマガジン
豆知識

2022.04.11

真説賃貸業界史 第47回「日本における不動産フランチャイズの歴史」

真説賃貸業界史 第47回「日本における不動産フランチャイズの歴史」
世界最大のチェーンも、日本での展開は失敗

 「アパマンショップ」「ミニミニ」「エイブル」「センチュリー21」等々、日本には数多くの不動産フランチャイズが存在する。小規模なものまで含めれば、その数は20ブランド近くにもなる。だが一方で、さまざまな事情から、リブランドしたり、消滅してしまったチェーンも少なくない。今回は、かつて日本に存在した不動産フランチャイズの歴史を紐解く。

 -現在、日本国内で展開している不動産フランチャイズの中でもっとも店舗数が多いのはどこか?-

こんな質問を投げかけられたら、みなさんは何と答えるだろうか?おそらく、多くの人は冒頭で挙げたチェーンや、「ピタットハウス」や「ハウスドゥ!」と答えるのではないだろうか。いずれも数百店規模で全国展開する大手だ。では

-日本で最初の不動産フランチャイズはどこか?-

と聞かれたら、すぐに答えられる人はどれだけいるだろうか。答えは「住通チェーン」、現在の「LIXIL不動産ショップ」「LIXIL賃貸ショップ」だ。
 不動産業界に20年以上携わっている人ならご存知だろうが、実は「住通チェーン」は過去に一度、廃業している。一番の老舗であると同時に、一番苦労した不動産フランチャイズでもある。
「住通チェーン」が誕生したのは、今から40年以上も前の1981年6月だ。その2年後には、アメリカ発祥の「センチュリー21」も日本での展開を開始したが、当初は首都圏を中心にした事業展開に集中したため、「住通チェーン」はライバルを尻目に、全国で加盟店を増やしていった。だが、2000年代に入ると事態は急変する。店舗数が増え過ぎたことでサポートが追い付かなくなり、全国の加盟店から不満が噴出。退会や「アパマンショップ」や「ピタットハウス」などの新興チェーンへの鞍替えなどが相次ぎ、2002年、加盟店に見放される形で廃業した。
その後、「住通チェーン」はINAXトステム・ホールディングス(現LIXILグループ)の完全子会社となり、チェーン名を「ERA」と改めて再スタートを切る。残っていた加盟店の看板もすべて「ERA」に改められ、「住通チェーン」の屋号は消滅した。日本最初のフランチャイズチェーンの歴史は、21年でいったん幕を閉じた。ちなみに、現在のチェーン名である「LIXIL不動産ショップ」「LIXIL賃貸ショップ」は、2016年10月にリブランドされたものだ。
 アメリカ最古の不動産会社として知られる「コールドウェルバンカー」も一時期、日本で活動していた。加盟募集をスタートさせたのは2006年12月。当時は「黒船襲来」と、不動産業界では大きな話題となった。しかし、加盟店開発が思ったように進まず、2014年には日本支部を務めるコールドウェルバンカーアフリエイツジャパンによるアメリカ本部へのロイヤリティー不払いなどが発生。本部はこれ以上の事業継続は不可能だと判断し、日本からの撤退を決断した。世界50ヵ国で約3200店舗を展開するコールドウェルバンカーは、日本で何の足跡も残せないまま、わずか8年でその幕を閉じた。
 不動産フランチャイズに加盟していながら後に退会し、独自に約80店舗のチェーンを立ち上げた例もあった。「アパマンショップ」の主要加盟店の一つにエイエスエヌ・ジャパンとう不動産会社があった。同社はオフィスビルの賃貸借管理や大型物流施設・商業施設の開発販売、不動産ファンドなどを手掛けていたコマーシャル・アールイーと業務協力関係にあって、最盛期には100店舗を超える不動産ショップを展開していた。おそらく、当時、全加盟店の中で最多の店舗を有していたと推測される。しかし、詳しい原因は分からないが、本部との関係に亀裂が入り修復不能に。2006年、突如としてグループ80店舗の看板を、「エランデ・アパートメント」に変更し、「アパマンショップ」からの退会を宣言。両社の間では裁判まで行われる事態に発展した。
 蜜月だと思われていた両社の関係になぜ亀裂が入ったのかは、今となっては謎だ。当時の関係者に聞いても、おそらく答えてはくれないだろう。しかし、分裂した両社のその後は明暗が分かれた。「アパマンショップ」はその後も順調に成長を続け、昨年度は約440億円の業績を上げた。一方の「エランデ・アパートメント」は、業務協力関係にあったコマーシャル・アールイーが民事再生になると失速した。現在、福岡に「エランデ・アパートメント九州」と名乗る会社が存在しているようだが、「エランデ・アパートメント」との関係があるのかどうかは不明だ。
 短命で終わった不動産フランチャイズは、今回取り上げたもの以外にもいくつかある。また改めて紹介したいと思う。