闘将野村「弱小企業を一流へと変える新経営理論」(第48回)|著名人|住生活を支える新聞株式会社のWebマガジン
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2024.01.08

闘将野村「弱小企業を一流へと変える新経営理論」(第48回)

闘将野村「弱小企業を一流へと変える新経営理論」(第48回)
20 広告の最大効果-一番の広告塔は社長自身②


-阪神の話ばかりで大変恐縮なのですが、監督をされていたときに例えば“エフワンセブン”というネーミングを付けてそれまでなかったファンを喜ばすことをいろいろされていましたよね?

野村 監督兼広報という思いがあったし、あんな人気チームのやるのは初めてで、毎日一面は阪神だよ。俺も大阪の南海が長かったけど、パ・リーグは客が入らないんで月曜日に野球やるって方針が出たの。ちょうど阪急と南海が優勝争いしている頃で、月曜日なら9月でも阪神の試合がないから、明日こそスポーツ5紙のすべての一面に載るだろうと思って翌日の新聞を見たら、一面は「不調にあえぐ掛布特訓!」。もうこれは永遠にパ・リーグは駄目だと思ったね。やっぱり人気商売だからマスコミをどう攻略するかというのも監督の大きな仕事なんだよ。そういう思いでずっとやってきていたからマスコミを攻略するのにいろんな手を考えてた。その代表が「マー君神の子不思議な子」だよ。マスコミが飛びつくと思ったのよ。4試合連続でノックアウトで「負け」が付かないなんて、不思議でしょ?二軍からやらせたらと担当記者もみんなそう言ってたけど、岩隈の次のピッチャーは誰もいないし、チーム事情もあってマー君を何とか育てていかんという思いで無視して使い続けた。俺は4球団の監督をやったけれど共通点は一つ、全部最下位。最下位のチームばっかりやらされるんだ。いやでも弱者戦法っていうのが身に付いたね。

 中小企業は、大きな設備投資もできない。多額な広告費をかけることもできない。社員のモチベーションも10人足らずの会社で「社長を目指せ!」「たくさん給料出すぞ!」とはっぱをかけたところで説得力がない。野村監督は弱小球団をよく分かっている。豊富なお金で助っ人を雇うこともできない。今の戦士たちをどのように最強の選手たちにするのか?

 野村監督は顧客ニーズを心得ている。野村監督の顧客は、観客であり、観客を呼び込んでくれるマスコミである。当然、マスコミが面白い記事をたくさん書けば、たまには球場に足を運んでみようということになる。一方、社員側のやる気を上げるためにもマスコミを使う。褒めるときは必ず間接的に選手の耳に届くように話をする。取材陣に面白い話をすれば、次の日にスポーツ紙に載る。選手は次の日に自分が記事になっていることを間接的に知るのである。人は注目されると当然モチベーションが上がる。新聞やそれを読んだ観客の歓声まで考えて話題を作るのである。注目されてやる気の出ない社員はいないだろう。
 また会社としてもコスト0円で年に何かに新聞の一面を飾っただろうか?1日に何回スポーツニュースに登場しただろうか?球団もメディアに紹介されるたびに自社のロゴの露出ができるのだから、本来の目的である球団を持つことで広告効果を上げるという目的が達成するのである。

野村 根底にあるのは、野球は意外性のスポーツということ。これをひたすら信じてやっていたの。意外性ということは弱者でも強者を倒せるということ。われわれの現役時代から予想が難しいのは、経済の予想、天気予報、野球の予想って言われていたんだよ。今、天気予報が衛星でよく当たるし、経済の予想も当たる。相変わらず当たらないのは野球の予想だよ。

-あくまでも選手の力に差があったとしても戦略次第では何とかなるということなのですかね?

野村 「信は万物の基を成す」、監督、コーチ、選手の関係は信頼・信用だわね。これをどう勝ち取るかというのでは阪神では全然駄目だった。信頼も信用もない。何なんだろうね、あのチーム。やっぱり担当記者とファンが駄目にしている。

 大きくなる会社はお客様との会話がよくできている。お客様は時に会社の発展のアイディアをくれる。それを会社がクレームと考えるのか、これを改善することで会社がさらに他社よりも抜きんでた会社になるための差別化情報と捉えるかは社長次第である。

(次号へ続く)