闘将野村「新経営論」第16回|著名人|住生活を支える新聞株式会社のWebマガジン
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2018.04.09

闘将野村「新経営論」第16回

闘将野村「新経営論」第16回
『情報戦略と駆引き』
 
-スランプからの脱出-
野村 全部ストレートのサイン出すわけがない。そんな時からスコアラーっていうのがいたんだ。毎日新聞の記者で、野球の経験全くなくて凄い達筆でね、綺麗な字書くの。日本で初めてスコアラーっていうのを採用した第一号だよ。この人の部屋に何となく遠征先で行ったら一生懸命付けてんだよ。これ何でそんな丁寧に付けてんですか?って聞いたら、これを会社に出して契約更改の資料を出すって言うんだよ。それで見ていたらね、何か使えそうになってきたんだよ。データなんて言葉もない時代だから記録って言ってたんだけど、これ使えるんじゃないかなって思って。それですいませんけどお願いがあるんですけどって言って、相手のピッチャーが俺に投げてくる球種とコースと書いて毎試合僕にもらえませんかって。お安い御用だ、付けてやるよと。それから付けてもらって毎日持って帰ってボールカウント『000』から書いていったの。ボールカウントが12種類あることすら知らなかったの。それで俺に投げて来る球種とコースとボールカウントをチェックしてある一つの傾向があってね。ノーストライクツーボール100%インコースがないんだよ
-それがデータ野球のできた始まりなんですね。
野村 データなんて言葉もないい時代なんだから。毎日ボールカウントはめ込んで分析して、それは凄い役に立ったよ。12種類のボールカウントで振り分けて、ピッチャーが優位な時にはどういう球を投げる傾向がある確率が高いか、勝負事であり野球であるから絶対はないわけで確率なの。それ以来、野球は確率のスポーツだって言い続けてきてるんだけどね。
 だから確率の高い球とコースを選択するとそういう頭になっちゃって、それで段々データを取り込むようになってきて。それでもう首振ったのもチェックしてもらって、首振ったら何が多いか、ランナーなし得点圏の走者という時にピッチングも配球もチェックしていって、どんどん面白いから相手のピッチャーが考えてることが手に取るように分かってきて。

-それから急に打率が上がってきたんですか?
野村 3割打てるようになって三冠王獲とれるようになった。一番野球の楽しい時だわね。
-今でこそ当たり前ですけど、野村監督がデータでやっているのをみんな分かっているのに、それを真似しようという人は当時はいなかったんですか?
野村 全然いなかった。野球は理屈じゃねぇよって馬鹿にされたぐらいだよ。

 私も年間500社を超える会社の方とお会いする。最近は、会社に行った時の雰囲気で、どの程度儲かっているのか、上手くいっているかいないかが判断できるようになった。
赤字の自転車操業になっている会社ほど、自分自身が見えていない。この単価でこの原価でいくら販売しても利益出ないよね、と誰にでも計算できるようなことが分かっていないのだ。単価を上げるしか方法はないですよ。ただし、単に単価を上げたら顧客離れが起きるから、全てを上げるのではなくて、目玉商品を作って付加価値を上げて単価を上げましょう。それで少しずつ移行していきましょう・・・。ところが、しばらくしてそこのお店を訪れると、さらに単価を下げて売っている。その分数を売れば利益が出ますからと・・・。確かにそうなのだが、工場で機械の稼働余力があるのであれば、それでも構わないかもしれない。
 手作りのサンドイッチなど、深夜寝ずに作っても限界があるのである。ダメな経営者ほど、根性論に陥りやすい。価格を安くして販売するのは、頭を使わなくて済むから誰でもできる商売である。高く買ってもらうのは難しい。お客様のデータを分析して他社にない差別化ができるかが鍵になるからだ。