家電量販店大手5社はいずれも減益|住生活新聞 記者の目|住生活を支える新聞株式会社のWebマガジン
Pick Up

2024.06.03

家電量販店大手5社はいずれも減益

家電量販店大手5社はいずれも減益
ヤマダHDの不振はヤマダホームズの赤字も一因か

 リフォーム事業の強化に注力する家電量販店大手5社(ヤマダホールディングス:群馬県高崎市、ノジマ:神奈川県横浜市、エディオン:大阪市北区、ケーズホールディングス:茨城県水戸市、上新電機:大阪市浪速区)が苦戦している。5月までに発表された各社の2024年3月期(23年4月~24年3月)連結決算における最終利益は、全社が減益となった。
 家電業界はコロナ禍の巣ごもり需要の反動減で、一連の騒動収束後、国内消費が大きく低迷している。しかも昨冬は暖冬の影響で期待していた季節家電の販売もイマイチで、各社の業績に大きな影響を与えた。結果的に、ノジマとエディオンに関してはどうにか増収を確保したものの、後者については携帯電話販売代理店のコネクシオ(東京都港区)を完全子会社であるNCX(神奈川県横浜市)に吸収合併したことが寄与した影響が大きく、いずれも大手を振って喜べるような状況ではない。
 一方でヤマダホールディングスの状況は少々複雑だ。純利益が前期と比べて24.4%も減少しているのだ。これはケーズホールディングスに次いで、2番目に大きい数字だ。
同社は2011年に住宅メーカーのエス・バイ・エル(現ヤマダホームズ)を子会社化したのを機に、「暮らしの総合サービス業」を標榜し、リフォームや不動産、保険、金融など、さまざまな分野への多様化を進めてきた。言うまでもなく、これは顧客の囲い込みやシナジー効果を狙ったものだが、一方で事業のリスク分散も考えてのことだろう。

「家電販売が不調ならリフォームで利益を確保しよう」
「家を買う際は当社のグループで保険のご紹介もできます」
「土地の紹介からファイナンスまでお任せください」

等々の期待があったわけだ。
 しかし、現状を見る限り、これがうまくいっているようには見えない。同社はこれまで、目標達成のためにさまざまな企業を傘下に収めてきた。先述したエス・バイ・エルを皮切りに、リフォームのナカヤマ、ハウステック、レオハウス、ヒノキヤグループ、大塚家具等々、いずれも住宅・リフォーム業界では名の知れた企業ばかりだ。しかし、失敗とまではいかないまでも、今のところこれがうまくいっているとは言い難い。なぜならグループ化した会社の当たり外れが大き過ぎるからだ。
 今回の決算で同社の住建事業は売上高2795億円と、前年同期から売上を2.6%も増やすことに成功した。一見すると、好調なように見える。しかし、営業利益は56億3000万円と、前年同期から34.3%も減っている。売り上げが伸びているのにもかかわらず、一体なぜ、営業利益がこれほど減ってしまったのか。
足を引っ張ったのは、よりによって「ヤマダ」の名を冠したヤマダホームズだ。同社の売上高は804億円で、前年同期から2.6%の増収となった。売上だけ見れば十分な成果を上げているようにも見えるが、一方で営業損失は28億2700万円、経常損失は27億7700万円と、いずれも大幅な赤字を計上した。同社はこの原因について

「中古住宅の再販や分譲は好調だったものの、新築の注文住宅の売り上げが思ったよりも伸びなかった。資材価格の高騰も影響が大きかった」

と説明している。新築の注文住宅が売りの会社であるにもかかわらず、それが不振だったというのだ。なんとも情けない話だ。
 一方でヒノキヤグループやハウステックといった、住建事業を担う他のグループ会社はいずれも好調だ。前者に至っては売上高1421億円(前年同期比5.5%増)、営業利益74億8100万円(前年同期比2.7%増)で過去最高益を達成したほどだ。だが、結果的に住建事業全体としては大幅な減益だ。言うまでもなく、ヤマダホームズの赤字が原因だ。事業の多角化によるリスク分散は、今のところうまくいっているとは言い難い状況だ。もっと言えば、ヤマダホールディングスのM&A 戦略も微妙だと言わざるをえない。ヤマダホールディングスの今期の業績は、家電事業だけでなく、ヤマダホームズのがんばり次第だ。
 苦戦が続く家電量販店。ヤマダホールディングスに限らず、立て直しには家電事業以外の活躍が不可欠だ。今後の各社の戦略に注目したい。