賃貸経営トラブル対策講座(第1回) ~深夜に大音量で音楽を聞く入居者~|住生活新聞 記者の目|住生活を支える新聞株式会社のWebマガジン
豆知識

2021.09.20

賃貸経営トラブル対策講座(第1回) ~深夜に大音量で音楽を聞く入居者~

賃貸経営トラブル対策講座(第1回) ~深夜に大音量で音楽を聞く入居者~
隣人から「眠れやしない」と大クレーム!

 賃貸経営にはさまざまな入居者トラブルがつきものです。何もないに越したことはありませんが、人を相手にする商売である以上、「トラブルは起こるものだ」という前提で経営に臨まなければなりません。もっとも大事なのはトラブルが起きた後の対応です。賃貸経営におけるとトラブル事例とその解決法について解説します。

「毎晩のように大きな音で音楽をかけるものだから、うるさくて眠れやしない!小さな子供もいるので困っている!すぐに何とかしてくれ!」

夜の22時頃、いつものように自宅でテレビを観ていた山城忠オーナーの携帯電話に、入居者Aさんから連絡がかかってきました。

-こんな時間に何だろう?-

山城オーナーは普段から、入居者に対して「何かあったら時間帯を気にせずに気軽に電話して下さい」と伝えていましたが、実際に電話がかかってくることは滅多になく、それだけに遅い時間にかかってきた電話に、妙な胸騒ぎがしました。出てみると案の定、クレームの電話でした。
 山城オーナーの所有する賃貸マンションは、2LDKと2DKの間取りが混在していることもあり、ファミリーや単身者など、さまざまな属性の方が入居していました。電話をかけてきたAさんは、ご主人と5歳のお子さんの3人暮らしで、2LDKの部屋に住んでいました。
 詳しい事情が分からないと対処のしようがないため、山城さんはすぐに自宅から歩いて5分の場所にあるマンションに向かいました。Aさん宅を訪ねると、不機嫌そうな表情で応対したAさんは、

「ちょっと耳を澄まして下さい。ほら、聞こえますよね?」

Aさんの言う通り、確かに音楽のようなもの聞こえました。

「外だから少ししか聞こえないですけど、家の中にいるともっとひどいです。ここのところずっとですよ!直接、言いに行こうかとも思いましたけど、ご近所同士でトラブルになるのも嫌だから・・・。すぐに何とかして下さい」

山城さんはその足ですぐに、音の発生源であると思われる隣接の住人を訪ねました。隣室のには、20代後半の男性が一人で暮らしていました。
インターホンを鳴らすと、オーナーの突然の訪問に驚いたのか、男性は慌てて出てきました。

「○○さん、ご近所から音がうるさいとクレームが来ています。時間も時間ですし、廊下にいても聞こえるくらい大きな音を出すのはやめて下さい」

「すみません。そんなに大きな音を出していたつもりはないんですが・・・。以後、気を付けます」

山城さんは、通報者が男性に知られないように、帰りがけに電話でAさんに事の次第を報告しました。-もうこれで大丈夫-トラブルが無事に解決できたことに、山城さんは胸をなでおろしました。
 ところがそれから2、3日後、再び山城さんの携帯電話にAさんから連絡が決ました。

「ちゃんと言ってくれたんですか?今日もすごい音で音楽を聞いてますよ!もういい加減にして下さい!」

驚いた山城さんはすぐに男性の部屋を訪ねました。男性は、

「このくらいのボリュームでうるさいとか言われても困る。だいたい、契約のときに「音楽聞くならボリュームはこれくらいまで」なんてこと言われてないですよね?」

その日は何とか説得して音楽を止めさせたものの、以降、何日かおきにAさんからクレームの電話がかかってくるようになり、山城さんは対応に困り、管理会社に相談しました。

「迷惑がかかっている入居者がいる以上、きちんと対処して問題を解決する必要があるということでした。仮にAさんが我慢できず他の物件に引っ越すと言い出したら、それにかある費用を全額、私が負担しなければならなくなる可能性があったそうです」

 山城さんは管理会社も交えて何度か男性と話し合いました。最終的に、「男性が音楽を聞く際に出しているボリューム音が、環境基準を超えている」という証拠を提示することで、男性は納得し、問題は解決しました。ちなみに環境基準における騒音とは、40~60デシベル(静かな住宅街や図書館のレベル~掃除機の音レベル)を超える音を指し、その場合、退去を求めることができる可能性があるとされています。
 ちなみに今回のようなトラブルを放置すると、オーナーは入居者から損害賠償を請求される可能性があります。というのも、オーナーは家賃の対価として、安心して暮らせる住環境を提供する義務があるからです。トラブルが発生した際は速やかに対処するようにしましょう。賃貸経営のトラブルに関するご相談は、お近くの全国優良リフォーム会員まで。