大和ハウス工業 またもや不祥事発覚|住生活新聞 記者の目|住生活を支える新聞株式会社のWebマガジン
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2019.11.04

大和ハウス工業 またもや不祥事発覚

大和ハウス工業 またもや不祥事発覚
今度は「温泉」と偽って利用料を徴収

 4月に施工物件での不正が発覚したばかりの大和ハウス工業(大阪市北区)に、再び不祥事が発覚した。今度は同社が所有し、ビーバーレコードが運営する「岩塩りんくうの湯」(大阪府泉佐野市)と「岩塩温泉和らかの湯」(兵庫県尼崎市)の2ヶ所が、不当景品類及び不当表現防止法に違反したとして、8月末に大阪府知事から景品表示法第7条第1項に基づく措置命令を受けたのだ。
 どういうことか。府によると、問題の2つの施設では、工業用水や井戸水を暖めて使用しているにもかかわらず、一部の浴槽で切り傷や火傷、慢性皮膚炎などに効能がある“岩塩温泉”と謳っていたというのだ。「不当景品類及び不当表現防止法違反」というのはいかにも分かりにくいが、温泉と偽って利用客から入浴料をとっていたのだから詐欺と言われても仕方ない。
 大和ハウス工業の言い分は次の通りだ。「岩塩りんくうの湯」の開業は今から約10年前。当初は実際に湧き出た温泉のお湯を運び入れていたが、6年前に行われた市の条例改正により入湯税の課税対象になったため、工業用水に切り替えたのだという。本来であれば、このタイミングで表示を変更するなりの措置を行わなければならなかった。だが同社はそうはしなかった。なぜか。「温泉と謳って運営を続けた方が、客足が増える」という打算があったであろうことは容易に察しが付く。また、工業用水を使う方が、温泉水を輸送したり、水道水を使うよりもコストを抑えられることも、偽りの表示を続けた利用の一つだったのではないだろうか。
 府の措置命令を受けた当日、同社は「再発防止に努める」というコメントを発表した。これを聞いて「え、それだけ?」と感じた方も多いのではないだろうか。一般の温泉施設がこのような不祥事を起こしたらどうなるか。おそらく一定期間の営業停止処分を科されるのではないか。当然、それによる顧客離れも起こり、営業的に大きな打撃を受けることになる。場合によっては、不祥事がきっかけで施設が倒産なんてこともあるかもしれない。ところが今回については、普通では考えられないような軽い処分しかなく、件(くだん)の温泉施設にいたっては何事もなかったかのようにそのまま運営を続けている。大阪の一温泉施設で起きた出来事だからか、それとも当事者が大和ハウス工業という大手だからか、この不祥事は地方紙や地域版でかろうじて取り上げられた程度で、全国的に報道されることはなかった。
しかし、これはかなり悪質な詐欺行為だ。工業用水によって「利用客が体調を崩した」というような直接的な被害は今のところないが、「温泉の効能」を信じていた利用客は多くいたはずだ。ホームページによると、同施設の利用料は大人で620円~。これは、同じ工業用水類のお湯を使用する一般的な銭湯よりも200円程度高い。それでも利用するのは、切り傷や火傷、慢性皮膚炎などに効くという、岩塩の効能を体感したいからに他ならない。大和ハウス工業はそうした消費者の気持ちを踏みにじり、4年もの間、詐欺にも等しい行為を続けていたのだ。そう考えると、措置命令だけというのは、いかにも軽い処分のように思えてならない。府は同社に対し、もっと厳しい罰則を科すべきではないのか。
 同社はここのところ不祥事続きだ。最近だけでも、サービス残業に建築基準法不適合、巨額横領事件と、大企業らしからぬ大失態が立て続けに発覚している。これはもう「企業の体質そのものに問題があるのでは?」と言われても仕方ない。日本の住宅業界をリードする会社とは到底思えない。「再発防止に努める」といったところで、誰がその言葉を信じるのだろうか。世間はそんな言葉を鵜呑みにするほど甘くはない。
 相次ぐ大手企業による不祥事により、「上場」の看板に対する信用は失われた。景気をこれ以上悪化させないためにも、不祥事を起こした企業は世間の信頼を取り戻すために、初心に戻って事業に邁進してもらいたい。