そのリフォームちょっと待った!!~リフォーム取引販売士に聞きました~③|住生活新聞 記者の目|住生活を支える新聞株式会社のWebマガジン
豆知識

2019.06.17

そのリフォームちょっと待った!!~リフォーム取引販売士に聞きました~③

そのリフォームちょっと待った!!~リフォーム取引販売士に聞きました~③
「良い人」の仮面をかぶった悪質業者にご用心

 住まいに関する困りごとを解決したいと、リフォームを検討している方は多いと思います。しかし、そうした消費者心理を逆手にとって、詐欺まがいの手法で契約を結ぼうとする悪質な業者も数多くいるので、業者選びには注意が必要です。リフォームを巡ると対策について解説します。
 最初にご紹介するのは、高齢者を狙った悪質なリフォーム詐欺です。Aさんは75歳(当時)、3年前にご主人はお亡くなりになり、神奈川県川崎市で一人暮らしをしておられました。息子さん夫婦は東京都内におられ、1ヶ月に1回程度様子を見に尋ねて来るそうです。
 そんなAさんのもとにある日、X工務店というリフォーム会社の営業マンが訪ねてきました。近所に営業所を出したということで、辺りで挨拶回りをしているということでした。「何か困りごとがあればうちにご相談ください」ということでしたが、Aさんのお宅は5年ほど前にバリアフリー化の工事をしたばかりで、特に生活に不便を感じているところはありませんした。丁寧に断りを入れると、「営業で回っていると、みなさんの生活に役立ちそうな色々な情報が入ってきます。そうした世間話ついでに、これからもたまに顔を出させてもらいますね」と言って引き揚げていきました。
 それから数日後、再び営業マンが訪ねてきました。今度は会社で作ったノベルティーで作ったタオルがたくさん余ってしまったので、みなさんにお裾分けしているということでした。最初は断ろうとしたAさんでしたが、「これを配り終わらないと会社に戻れないんですよ」と言われたため、仕方なく受け取りました。こうして営業マンは「近所まで来たついでに寄らせてもらった」「社に戻るには早すぎるので、少しだけ時間つぶしをさせて欲しい」など、色々と理由を付けてAさんのお宅に出入りするようになっていきました。Aさんにしても、ひと月に1回しか顔を出さない実の息子さんよりも良い話し相手になると、段々気を許していきました。
 状況に変化が生じたのは、営業マンが出入りするようになってから1ヶ月ほどが経過した頃でした。珍しく夜20時を過ぎて訪ねてきた営業マンは、「これだけ何回も時間をかけて相手をしてあげてるんだから、今日は契約もらわないと帰らない」と言い出したそうです。それまで営業的な話は一切しなかった営業マンの態度の豹変ぶりに、Aさんは驚きました。しかも態度もそれまでの温厚な雰囲気からは打って変って高圧的。「時間を取らせてしまって申し訳ない。でも、そもそも呼んでもいないのに訪ねてきたのはそちらでしょう」と言っても、「こっちは挨拶程度で帰るつもりだったのに、いつも長話をしてくるのはそちらです」言い返される始末。結局、2時間もこうしたやり取りが繰り返された挙句、最後は断り切れずに約100万円のキッチン周りのリフォームを契約させられてしまいました。
 それから3日後、Aさんのもとを息子さんが訪ねてきました。事の次第を報告したところ、すぐに断りの電話を入れることになりました。しかし、業者側は「うちは1ヶ月もかけて丁寧に説明して契約してもらったんだ。契約に至る過程に不備はない。材料も仕入れてしまったから、このまま施工させてもらう」と強気な姿勢。もちろん、Aさんは最後の日までリフォームの説明を受けたことは一切ありませんでした。
 こうしたケースで問題となってくるのは、業者とのやり取りについて、家族も含め、誰もその過程を把握できていないことです。悪質業者はしたたかで、まずは「良い人だ」を思わせるところから始めます。安心させて家族に連絡しないような関係性を構築してから、少しずつ家庭の状況をリサーチし、ここぞというタイミングで契約を取りにいきます。Aさんの場合、ひと月にわたって通いながら、例えば「長男はひと月に一回しか訪ねてこない」「家族と頻繁に連絡を取り合っているわけではない」というような情報を収集していたのだと考えられます。
 詐欺被害に遭わないための方法としてまずみなさんがやるべきことは、

①高齢者と、その子供が離れて生活している場合、頻繁に連絡を取ったり訪問したりするなどして、密にコミュニケーションをとる
②訪問営業の勧誘は徹底して断るようにする
③少しでも不審に思ったら、家族、もしくは消費者センターなどに連絡する

などです。幸い、Aさんのケースでは、消費者センターの協力を得て、契約そのものをクリーング・オフすることができました。しかし、これも期限がありますので、息子さんが訪問するタイミングがもう少し遅かったら、契約破棄することができなかったかもしれません。
 高齢者を狙う悪質リフォーム業者は、町中至る所に存在します。リフォームに関するトラブルは、お近くのリフォーム販売取引士にご相談ください。