失われた“最大手”“上場企業”のプライド
4月12日、住宅業界に激震が走った。ハウスメーカー最大手の大和ハウス工業(大阪市北区)が、過去に施工した戸建住宅及び賃貸住宅の一部で建築基準の不適合が見つかったと発表したのだ。その数2000棟以上。レオパレス21による施工不良問題が冷めやらぬ中で明らかになった大企業による不正。住宅メーカーに対する消費者の不信感は今、最高潮に達しようとしている。
発表によると、建築基準の不適合が見つかったのは2000年からの13年間で顧客に引き渡した全国30都府県の一戸建て住宅と賃貸住宅、合計2078棟。うち2066棟には建築基準法違反の恐れがあるという。約1万5000棟もの施工不良が明らかになっているレオパレス21に比べれば、数だけ見れば被害は小さいように見えるかも知れないが、発表された数字をそのまま鵜呑みにすることはできない。というのも、今回の発表に至る過程があまりにも不自然だからだ。
土田和人専務執行役員によると、施工物件に建築基準不適合の可能性があることを知ったのは、今から3年前にもたらされた内部通報がきっかけだったという。これを聞いて、おそらく多くの人が違和感を覚えたのではないだろうか。なぜ、通報を受けてから発表までに3年もかかってしまったのか。遅過ぎる感は否めない。「初期の動きが遅かった」と弁明しているものの、理由は果たしてそれだけだろうか。
同社はここ最近、不祥事が相次いでいる。2014年から15年にかけて、防火シャッターや防火ドアの取り付けで不正が指摘され、さらに翌年には国の定める基準を満たしていない壁パネルを使用していたことが発覚した。これ以上の不祥事は経営を直撃しかねない。そこで、内部通報の件については「内々の調査だけで公表しない」あるいは「適当な調査でやり過ごす」つもりだったが、レオパレス21問題で住宅業界への風当たりが厳しくなると、これ以上隠し通すことはできないと判断。業績への影響を最小限に抑えるために、慌てて公表に踏み切ったのではないかと、勘繰りたくなってしまう。もちろん、施工物件の数が多いことを考えれば、調査にある程度の時間がかかってしまうのはやむを得ない。今回は22万棟を調査したとしている。しかし、それならそれで、通報を受けた時点で、いったん状況を説明することはできたはずだ。それもなしにいきなり今回の発表では、問題を隠蔽しようとしていたのではないかと疑われても仕方ない。
そもそも不適合物件がこれ以上増えないという保証はどこにもない。「発表された数字は氷山の一角に過ぎない」と指摘する業界関係者もいる。レオパレス21問題では、国が監視の目を厳しくして以降、新たな施工不良物件が次々と発覚。事態は急速に悪化している。今後、大和ハウス工業でも同様のことが起こらないとは限らない。仮に事態が悪化するようなことになれば、住宅業界は大きな混乱に巻き込まれることは間違いない。
防火体制が不十分な一部の住宅については、同社は4月中に速やかに改修工事を行うとしている。しかし、多数含まれるアパートについては、入居者離れが起こる可能性もある。そうなれば賃貸オーナーへの影響も避けられない。入居率の低下で家賃収入が減り、金融機関への返済に苦慮するオーナーが出てくるかもしれない。
平成の最後に繰り返された大手企業による不正。消費者を欺いて利益を追求する企業姿勢は、決して許されるものではない。「我こそがリーディングカンパニーだ」というプライドはどこへ行ってしまったのか。今や“大手”や“上場”という肩書は、信用を裏付けるものではないのかもしれない。
4月12日、住宅業界に激震が走った。ハウスメーカー最大手の大和ハウス工業(大阪市北区)が、過去に施工した戸建住宅及び賃貸住宅の一部で建築基準の不適合が見つかったと発表したのだ。その数2000棟以上。レオパレス21による施工不良問題が冷めやらぬ中で明らかになった大企業による不正。住宅メーカーに対する消費者の不信感は今、最高潮に達しようとしている。
発表によると、建築基準の不適合が見つかったのは2000年からの13年間で顧客に引き渡した全国30都府県の一戸建て住宅と賃貸住宅、合計2078棟。うち2066棟には建築基準法違反の恐れがあるという。約1万5000棟もの施工不良が明らかになっているレオパレス21に比べれば、数だけ見れば被害は小さいように見えるかも知れないが、発表された数字をそのまま鵜呑みにすることはできない。というのも、今回の発表に至る過程があまりにも不自然だからだ。
土田和人専務執行役員によると、施工物件に建築基準不適合の可能性があることを知ったのは、今から3年前にもたらされた内部通報がきっかけだったという。これを聞いて、おそらく多くの人が違和感を覚えたのではないだろうか。なぜ、通報を受けてから発表までに3年もかかってしまったのか。遅過ぎる感は否めない。「初期の動きが遅かった」と弁明しているものの、理由は果たしてそれだけだろうか。
同社はここ最近、不祥事が相次いでいる。2014年から15年にかけて、防火シャッターや防火ドアの取り付けで不正が指摘され、さらに翌年には国の定める基準を満たしていない壁パネルを使用していたことが発覚した。これ以上の不祥事は経営を直撃しかねない。そこで、内部通報の件については「内々の調査だけで公表しない」あるいは「適当な調査でやり過ごす」つもりだったが、レオパレス21問題で住宅業界への風当たりが厳しくなると、これ以上隠し通すことはできないと判断。業績への影響を最小限に抑えるために、慌てて公表に踏み切ったのではないかと、勘繰りたくなってしまう。もちろん、施工物件の数が多いことを考えれば、調査にある程度の時間がかかってしまうのはやむを得ない。今回は22万棟を調査したとしている。しかし、それならそれで、通報を受けた時点で、いったん状況を説明することはできたはずだ。それもなしにいきなり今回の発表では、問題を隠蔽しようとしていたのではないかと疑われても仕方ない。
そもそも不適合物件がこれ以上増えないという保証はどこにもない。「発表された数字は氷山の一角に過ぎない」と指摘する業界関係者もいる。レオパレス21問題では、国が監視の目を厳しくして以降、新たな施工不良物件が次々と発覚。事態は急速に悪化している。今後、大和ハウス工業でも同様のことが起こらないとは限らない。仮に事態が悪化するようなことになれば、住宅業界は大きな混乱に巻き込まれることは間違いない。
防火体制が不十分な一部の住宅については、同社は4月中に速やかに改修工事を行うとしている。しかし、多数含まれるアパートについては、入居者離れが起こる可能性もある。そうなれば賃貸オーナーへの影響も避けられない。入居率の低下で家賃収入が減り、金融機関への返済に苦慮するオーナーが出てくるかもしれない。
平成の最後に繰り返された大手企業による不正。消費者を欺いて利益を追求する企業姿勢は、決して許されるものではない。「我こそがリーディングカンパニーだ」というプライドはどこへ行ってしまったのか。今や“大手”や“上場”という肩書は、信用を裏付けるものではないのかもしれない。