LIXILはどこへ行くのか?シンガポール移転計画に業界騒然!|住生活新聞 記者の目|住生活を支える新聞株式会社のWebマガジン
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2019.02.04

LIXILはどこへ行くのか?シンガポール移転計画に業界騒然!

LIXILはどこへ行くのか?シンガポール移転計画に業界騒然!
突然のトップ解任劇で大混乱

 住設大手LIXILグループをめぐる騒動については、以前にも触れた。知らない方のために簡単に要約しておくと、2年以上にわたりトップとしてグループを牽引してきた瀬戸欣哉氏が昨年11月1日に、業績不振などを理由にCEOの座を解かれたというものだ。経営再建を託しながら、わずか2年あまりでの解任劇。業界内にはさまざまな憶測が流れた。瀬戸氏に代わって経営の実権を握ったのは創業家出身の潮田洋一郎氏。会長兼CEOとして、再びグループを率いることになった。しかし、過去に買収に失敗した潮田氏の復帰に対しては、一部から疑問の声も上がっている。
 潮田会長の率いるLIXILグループはどこへ向かおうとしているのか。世間が固唾を呑んで見守る中、さらに驚きのニュースが飛び込んできた。何と本社をシンガポールに移転する計画を進めているというのだ。確かに、LIXILグループは海外での事業展開に力を入れている。とはいえ、売上高の7割以上は依然として日本国内に依存している。それがなぜ、このタイミングで海外移転なのか。
 これには、潮田氏の個人的な感情が大きく関係しているという。潮田氏は約4年前に、父・健次郎氏の遺産相続を巡って、国税局とやり合ったことがある。ここでは詳細には触れないが、とにかくこの一件は潮田氏の逆鱗に触れた。この時の怒りのすさまじさは、後に「もう日本で納税する気はない」と言って、シンガポールに居を移してしまったことからも想像できるだろう。
 昨年の4月には、感情をさらに逆撫でする出来事が起きた。潮田氏自身が関わる財団法人が、文部科学省から「公益性がない」と判断されたのだ。潮田氏は日本に対する興味を完全に失った。
 実現可能かどうかは別として、LIXILがシンガポールに移転することにメリットはあるのか。少なくとも、アジア圏の市場開拓は、有利に進められるかもしれない。また、法人税が日本よりも安いため、節税効果も見込めるだろう。しかし、それによって失うものも大きいかもしれない。先述したように、売上の大半は日本国内でのものだ。本社を海外に移せば、その時点で外国企業と見なされ、顧客離れが進むのは火を見るよりも明らかだ。ライバル企業もこんな好機を見逃すはずはなく、ここぞとばかりに営業攻勢をかけるだろう。海外でどれだけ市場開拓が進められるか分からない状況の中で、これはあまりにもリスクが高い。
 LIXILは果たしてどこへ向かうのか。このまま潮田氏のもとで、日本のリフォーム市場に別れを告げてシンガポール移転してしまうのか。日本を代表する住設メーカーの賢明な判断を期待したい。