賃貸トラブル対策講座~入居者がルールを破ってペットを無断で飼育!~|コラム|住生活を支える新聞株式会社のWebマガジン
豆知識

2024.06.24

賃貸トラブル対策講座~入居者がルールを破ってペットを無断で飼育!~

賃貸トラブル対策講座~入居者がルールを破ってペットを無断で飼育!~
原状回復費の支払いを求めることはできるのか?

 賃貸経営には常にさまざまなトラブルが付きまといます。簡単に解決できるものもあれば、そうでないものもあります。ときには一人の入居者のクレームで始まったトラブルが、マンション全体にまで飛び火することもあります。トラブルを未然に防ぐ、あるいは起こったトラブルを速やかに解決するためにも、実例を知ることは大切です。今回も実際に起こった賃貸トラブルを取材しました。

 賃貸トラブルで比較的多いのがペットの無断飼育です。ペットは鳴き声や臭いで他の入居者に迷惑をかけることもあるので、もし発見したら厳しく対処しなければなりません。間違っても情を移されて「次の飼い主が見つかるまでは大目に見るか」「部屋の中ではゲージから絶対に出さないのであれば・・・」等々、オーナー自らルールを破るような対応をしてはいけません。
 神奈川県横須賀市でマンション経営をする北濱怜オーナーは、今から5年前の2019年に、入居者によるペットの無断飼育トラブルに遭遇しました。無断飼育に気付いたのは、退去の立ち合いを行ったときだったそうです。

「退去立会いで部屋に入ったところ、すぐに獣臭のようなものに気付きました。『まさか』と思って室内をくまなくチェックしたところ、リビングの一角が大きな染みが付着しているのを発見しました」

 一目見るや、これはオシッコの痕跡だと判断した北濱オーナーは、入居者に対し、その場でペットの無断飼育について追及しました。ところが、肝心のペットはすでに他の荷物と一緒に運び出されていてその場にいなかったため、入居者は最初、無断飼育を頑なに認めようとはしませんでした。しかし、北濱オーナーも納得せず、奥様に連絡し、自宅からフローリング用の床拭きを持ってきてもらい、部屋の隅から隅まで掃除をしました。

「拭き掃除をしたところ、床拭きの裏には、明らかに人間のものではない白い毛のようなものがびっしりと付着しました。しっかり掃除して痕跡を消したつもりだったかもしれませんが、細くて細かい犬や猫の毛は、そう簡単にすべて取り除けるものではありません」

 北濱オーナーは再度、入居者を問い詰めました。さすがに今度は観念したのか、入居者はペットの無断飼育を認めて、北濱オーナーに謝罪しました。
 問題は、ペットの爪で傷ついたフローリングの張替えと、臭いの染みついた壁紙の張替えでした。特にオシッコ跡一帯は、幅木の一部にも染みができるなど、傷みが激しく、通常の原状回復以外の工事も必要でした。結局、普通であれば15万円で程度で済む原状回復工事が、このときは40万円もかかってしまったそうです。
 北濱オーナーは差額の25万円に関しては、ペット禁止の規則を破った入居者に支払いを求めました。しかし、元入居者は違反の事実を認めたにもかかわらず、費用の支払いを拒否。ついには電話にも出なくなってしまったそうです。

「このままでは逃げられてしまう」

そう感じた北濱オーナーは、弁護士に依頼して、明細書とともに内容証明書を元入居者に送付しました。さすがにそこまでされるとは予想していなかったのか、元入居者は諦め、1週間後に北濱オーナーの口座に、25万円を振り込んできたそうです。
 今回のケースでは、契約違反を発見したのは退去立会い時でしたが、もし入居中に違反を見つけた場合はどうなるでしょうか?もしかしたら、

「契約違反をした以上、すぐに出て行ってもらわないと困る」

と考える方もいるかもしれませんが、実は違反があったからといって、すぐに入居者に退去を求めることはできません。北濱さんのケースに当てはめると、まずは契約書を根拠にペットの飼育をやめるように通知して下さい。それでもなお、飼育を続けるようであれば、次のステップとして、手順を踏んで契約の解除を求めてください。仮に違反を発見したにもかかわらず、

「退去のときに多めにリフォーム代を請求すればいいや」

と考えてそれを指摘しなかったらどうなるでしょうか?実はこれは、ペットの飼育を認めたと見なされ、契約の解除を求めることができなくなってしまう可能性があります。また、1軒だけ飼育を認めれば、他の入居者も納得はしないでしょう。
 賃貸経営にはさまざまなトラブルがつきものです。健全な経営を継続するためにも、トラブルが発生した際は速やかに問題解決を図ってください。賃貸経営に関するご相談は、お近くの全国優良リフォーム会員まで。