DMMオンラインサロン~第6章 藤田式収益力企業価値比較法~|コラム|住生活を支える新聞株式会社のWebマガジン
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2024.06.10

DMMオンラインサロン~第6章 藤田式収益力企業価値比較法~

DMMオンラインサロン~第6章 藤田式収益力企業価値比較法~
利回りの低い企業や事業のM&Aは所詮、趣味でしかない

 今の事業(利益)が何年続くのか、これからさらに利益が上がるのか、利益の上限は誰にも分かりません。それがアナログの世界や農業であれば、想像がつきやすいかもしれません。しかし、DXやITアプリ開発の場合は同じような競合がすぐに出てくるのか、もしくはそれ以上のシステムが出てくるのかは、開発している会社ですら分かりません。
M&A仲介会社は、このような曖昧でわかりにくい業種については

「自信をもって業界のトップを牽引している会社です。システムの特許だけでも、研究・開発費から考えると買収価格5億円でも割安だと思います」

という根拠のない話をしてきます。特許や実用新案などは、研究開発にかけた時間や投資金額に対して評価されるものではなく、その特許からいくらの収益がコンスタントに上げられるかがその特許の価値なのです。
 私は、本稿でM&A投資を無理に進めたいわけではありません。むしろ同じ投資利回りならば、リスクの少ない不動産投資の方が良いと思っています。

 ある案件をM&A仲介会社担当者より紹介されました。

「温泉旅館です。15億円で建てられた物件ですが、築5年であることを踏まえて売主に8億円まで値下げしてもらいました。収益が年間700万円ですので、EBITDAの3年分で2100万円。資産価値8億円+仲介手数料が4400万円で買収価格は8億6500万円です。インバウンドが戻ってくれば、収益は今の5倍くらいになりますよ。年間収益は3500万円になりますので、将来的なEBITDAならば3年分で1億500万円になります。資産価値的にもお得ではないですか?」

このトークだけですと、一見資産価値の高いものを安く購入できお得なようにも感じますが、8億6500万円で収益700万円ですと、利回りは0.8%です。家賃が3500万円で計算しても4.0%です。こんな案件のときは

「そんな低い少ない利回りで地方の温泉旅館を購入するなら銀座でビル買うわ!」

と仲介会社担当者に返答します。
また、別案件ですが

「この場所はこれから開発が進んでいきますので、キャピタルゲインも狙うことができますよ」

と話す仲介会社担当者もいました。何を根拠に…と聞きたくなってしまいます。みなさんが株式投資や債券投資・不動産投資をされる際、購入時に配当や利回りによって判断することも多いのではないでしょうか。収益を考えずにM&A買収することは、仕事ではなく趣味だと思っています。趣味と実益を兼ねて投資をするということであれば、ブランド物のバックでもローレックスの時計やレアもののフィギュアでも同じです。東京の港区で不動産所有していたらステータスでしょうと考えた段階で、それは事業ではなく趣味なのです。
 私はよく他の投資対象商品と比べてM&A仲介会社担当者と話をします。一般的にM&Aは、融資を引っ張るのも難しいですし、株や不動産と違って目利きも難しいです。あえて利回りが低いのに企業や事業を買収することは趣味です。もしあなたがその事業を趣味でしたかったのであれば別ですが、事業として取り組むのであれば、現在のさまざまな投資商品の中で何に置き換えて投資すべきかを考え、ポートフォリオを組む必要があります。

(次号へ続く)