沖縄県で見つけた今話題の会社~不動産会社が挑む教育事業~|コラム|住生活を支える新聞株式会社のWebマガジン
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2024.04.08

沖縄県で見つけた今話題の会社~不動産会社が挑む教育事業~

沖縄県で見つけた今話題の会社~不動産会社が挑む教育事業~
人手不足のホテルや施設に生徒を派遣

 沖縄本島那覇市の北東に位置するうるま市。その中心部に留学生約150名が通う日本語教育機関「東洋言語文化学院」がある。主にネパールやスリランカ、ミャンマーといった東南アジアの留学生が通う同校を運営するのは、県内で賃貸管理・仲介を軸とした不動産事業を展開する新潮ホーム(沖縄県浦添市)のグループ会社、新学(沖縄県うるま市)だ。グループの代表を務める孟本博昭氏に、同校を運営することになった経緯や現在の運営状況、将来展望などについて聞いた。

-不動産業や建設業を手掛けるグループが日本語学校を運営しているというのは、全国でもレアなケースだと思います。まずはどういった経緯で教育事業を始めたのか教えてください。

孟本 話は2010年にまで遡ります。当時、本業である不動産業の絡みで、うるま市に後に「東洋言語文化学院」となる建物が立った土地を取得しました。ただ、購入した時点では何をやるかはまだ決めていませんでした。日本語学校を始めたのは、親しくさせていただいていた華僑グループの会長から「中国人留学生が増えているから日本語学校をやってみたらどうか」と提案されたことがきっかけでした。生徒の紹介もしてくれるということだったので、それならどうにかなるかもと考え、日本語学校を開校することにしました。

-留学生と聞くと東京や大阪に多いイメージがありますが、沖縄も多いのでしょうか。

孟本 あまりイメージがないかもしれませんが、実は沖縄にもかなりの数の留学生がいます。その証拠に、福岡や熊本などの九州各県には日本語学校はそれぞれ3校ずつ程度しかありませんが、沖縄県内には13校もあります。単純に考えても各県の4倍の留学生がいることになります。余談ですが、当校は県内では5番目に開校しました。

-教育事業を始めるのには、いろいろクリアしなければならないハードルがあったと思います。

孟本 経験ゼロで、教えてくれる人もいませんでしたから、とにかく大変でした。どこに申請を出せばよいのかする分からない状態でしたので、それこそ一から全部調べました。

-学校を始めるうえで、何か条件的なものはあるのでしょうか。

孟本 運営母体は資本金3000万円以上あることが求められます。また土地と建物については、廃校の再利用など、地方公共団体の所有物を20年以上の長期で借りられる場合を除き、基本的に自己所有していなければなりません。資本金や物件取得費などを含めると、最低でも1億円以上の資金は必要です。他に教育経験者がいることも条件になります。

-特に資金面についてはかなり高いハードルが設けられているように感じます。

孟本 そうですね。おいそれと簡単にできるものではないと、やってみて実感しました。

-紆余曲折逢って開校に至ったわけですが、運営は当初からうまくいったのでしょうか。

孟本 とんでもない。最初の2年ほどは苦労の連続でした。特に困ったのが生徒集めです。もともと華僑グループの会長のアドバイスがあって始めたわけですが、蓋を開けてみたら全然中国人が来ない。というのもすでに来日ブームが終わってしまっていたんです。おまけに留学生を紹介してくれるという話も雲散霧消になってしまい、結局、最初は生徒が5人しか集まりませんでした。当然、事業としては大赤字です。どうにか軌道に乗るようになったのは3年目あたりからです。

-何かきっかけがあったのでしょうか。

孟本 突然、ベトナムで教授をされている日本人の方が、インターネットで当校のことを見て、留学生50名の受け入れてくれないかと連絡をくれたんです。もちろん、うちとしては渡りに船ですから二つ返事で了承しました。これは東南アジアにも需要があることを知るきっかけにもなりました。

-現在いる留学生は東南アジアの方が多いようですね。

孟本 一番多いのはネパール、他にミャンマー、ウズベキスタンからも来ています。アフリカのナイジェリアから来ている生徒もいますね。逆に開校当初に想定していた中国人は一人もいません。いくつかの国に関しては直接現地まで足を運んで、安定的に留学生が確保できるようにネットワークを作りました。

-先ほど、沖縄県内には日本語学校が13校あるとおっしゃっていました。それぞれ特徴があると思うのですが、「東洋言語文化学院」は何を強みとしているのでしょうか。

孟本 一番の強みは生活指導や生活面のサポートに力を入れていることです。生徒はそれぞれまったく生活習慣や環境の違う国からやってきているわけですから、当然、それなりのストレスを感じているし、ときにホームシックにもなります。当校ではできるだけそうしたストレスや不安を和らげてあげるために、できるだけアットホームな雰囲気で勉強できるように配慮しています。また、体調を崩した時には病院まで連れて行ったり、悩み事があれば相談にも乗ります。

-生徒にとってはとてもありがたいことですが、講師や従業員の方の負担が大きくなることはないのでしょうか。

孟本 きちんと役割分担をしてこなしているので問題はありません。また、当校は全寮制で、生徒はみんな校舎の近くに住んでいるため、何があってもすぐに駆け付けることができます。寝坊しがちな生徒を起こしに行ってあげることもあります。これらは校舎から近い場所に学生寮がある当校ならではの取り組みだと思います。

-さまざまな国の方を受け入れてきた中でさまざまなトラブルに遭遇されてきたと思います。

孟本 それはもう日常茶飯事ですね。過去には生徒が失踪してしまったこともありました。留学生の中には稀に、出稼ぎ目当ての方がいることがあります。そういう方はそもそも入学する気はなく、日本に来たらすぐにどこかへ消えてしまいます。当校としてもできる範囲で探しますが、県外に出られたらもうどうしようもありません。もちろんほとんどの方はまじめに日本語の勉強に取り組んでいます。

-4年前から生徒を県内のリゾートホテルや介護施設などに派遣する人材派遣サービスも始められたそうです、

孟本 沖縄も他県にもれず、働き手不足は深刻です。特に北部の大型リゾートホテルは、周辺に住んでいる人が少ないことも影響して、慢性的に客室清掃員が不足しています。一方で当校には、授業がないときの働き先を探している外国人留学生がたくさんいます。両者をうまくマッチングさせたら授業料とは別の収益の柱になると考え、事業化しました。現在、生徒の8割をホテルや施設などに派遣しています。

-お話を聞く限り、開校当初こそさまざまなトラブルに見舞われて苦労されたようですが、今は順調な印象を受けました。

孟本 今も苦労はしていますよ。直近だと、新型コロナウイルスが流行したときは大変でしたね。なにせ約2年にわり生徒がゼロになりましたから。

-教育事業についてはさらに大きくしていこうと考えているのでしょうか。

孟本 もちろんです。この事業を通じて海外からたくさんの留学生を呼び込み、地域の活性につなげたいと思っています。また近い将来、宮古島や石垣島といった離島にも学校を作りたいですね。

-事業を拡大していく上での課題はありますか。

孟本 一番大きな問題は講師不足です。県内に学校が増えたこと、さらに日本語学校の講師はあまり収入が高くないイメージがあるため、求人広告の反響は年々減っています。最近だと応募が1件あれば良い方で、まったくないことも珍しくありません。継続的に有能な講師を確保するためにも、昇給、賞与などで他校よりも待遇が良いことをアピールしていく必要があると考えています。

-生徒が増えれば寮の問題も出てくると思います

孟本 おっしゃる通りです。今ある寮はほとんどが校舎近くにあるものの、部屋単位で借り上げているため、あちこちに点在している状況です。これだとどうしても生活指導の効率がわるくなってしまうため、少しずつ集約していこうと思っています。

-留学生を嫌がる賃貸オーナーもいるでしょうから、そうした方々の意識改革も必要ですね。

孟本 あとは生徒の多国籍化ですね。1ヵ国に頼ると、例えば入国規制があったときに大きなハンデを背負うことになります。また、同じ国籍の人ばかりになるとどうしても母国語を使ってしまい、日本語が伸びなくなってしまうリスクもあります。このあたりの課題を一つ一つ解決していけば、おのずと成長していけると思います。

-最後にこれから教育ビジネスにチャレンジしようと考えている方にメッセージをお願いします。

孟本 先程も申し上げたように、教育事業は若い人たちが集まるため、地域の活性化につながります。また当社のように人材派遣サービスを組み合わせることで、人手不足に悩む地域の施設や店舗、企業の役に立つこともできます。資金面でのハードルは高いかもしれませんが、興味がある方はぜひ取り組んでほしいです。

(日本語学校運営)
株式会社新学
沖縄県うるま市みどり町5-3-25
TEL 098-972-4888

(賃貸管理・仲介、その他不動産に関わる事業全般)
株式会社新潮ホーム
沖縄県浦添市城間4-7-21F
TEL 098-988-4033