元従業員が不正に持ち出し逮捕
-大手だから安心だ-ブランド力だけで企業の価値を判断する人は少なくない。もちろん、ブランドは企業価値を図るための重要な判断材料の一つだ。しかし、このところの経済情勢を見ていると、「ブランド力のある会社=信用できる会社」という構図が成り立たなくなってきたなと感じてしまう。大手による不祥事が増えているためだ。
6月中旬にも大手の不祥事絡みのニュースが飛び込んできた。学生マンションの運営・管理で知られるジェイ・エス・イー(京都市下京区)の元従業員・羽木本直慶容疑者とその知人で、会社役員の吉田凌基容疑者の2人が、およそ27万件の顧客の個人情報を不正に持ち出し、一部を漏えいしたなどとして、不正競争防止違反の疑いで逮捕されたというのだ。
ジェイ・エス・ビーといえば、学生マンション運営大手として知られる上場(東証プライム市場)不動産管理会社だ。管理戸数8万1333戸は賃貸住宅業界全体の18位(全国賃貸住宅新聞調べ)に位置し、学生マンション専業としては最大手になる。まさに賃貸住宅業界を代表する会社の一つだ。そんな大手で、27万件にも及ぶ顧客の個人情報が持ち出されたというのだから呆れてしまう。
事件が発覚したのは今年1月。ジェイ・エス・ビー契約者から、同社と関係のない第3社によるウォーターサーバー、電気、インターネット等の勧誘をされたとの相談が多数寄せられたことから、同社が社内調査を実施。結果、羽木本容疑者が会社システムに不正アクセスし、顧客の氏名や年収などの個人情報を持ち出したことが明らかになった。同容疑者は持ち出したおよそ27万件の個人情報のうち2万9000件について、アクセス方法を吉田容疑者に教え、さらに吉田容疑者はこのうち1000件を電話勧誘事業者に漏えいした疑いが持たれている。同社は不正を把握した直後の2月3日付で、羽木本容疑者を懲戒解雇した。
それにしても気になるのは同社の情報管理の甘さとセキュリティーに対する意識の低さだ。上場会社のレベルからは程遠いと言わざるを得ない。というのも、情報を持ち出した羽木本容疑者は、同社の役員どころか正社員でもなく、単なるアルバイトに過ぎなかったからだ。アルバイトの立場で顧客情報の管理システムにアクセスできることがそもそも異常で、しかも27万件もの情報をダウンロードされてしまったというのだからお粗末という他ない。情報管理に詳しい専門家の意見も厳しい。
「顧客情報はいわば会社の大切な財産。アルバイトの身分でアクセスできるなんてことは普通あえません。仮に業務上必要な場合は、ダウンロードやコピーができないように何かしらのセキュリティーをかけておくものです。はっきり言って上場会社を名乗れるレベルではないですね」
今回はたまたま契約者から問い合わせがあったため、持ち出しからひと月ほどで不正を把握することができた。しかし、もし問い合わせがなかったらどうなっていただろうか。今も不正が続けられ、被害はさらに拡大していたかもしれない。
なぜこうも大手による不祥事が相次ぐのか。本来であれば、大手企業は業界を牽引しなければならない立場であるのに、何とも情けない話だ。レオパレス21にはじまり、大和ハウス工業、積水ハウス、三井不動産リアルティ、積水化学工業等々、本紙ではそれこそ毎号のように大手企業による不祥事を取り上げてきたが、ここまで大手に拠る不祥事が立て続けに起こるのは住宅・不動産業界くらいではないだろうか。このままでは業界の信用が失墜してしまう。大手には改めて兜の緒を締め直してもらいたいものだ。
-大手だから安心だ-ブランド力だけで企業の価値を判断する人は少なくない。もちろん、ブランドは企業価値を図るための重要な判断材料の一つだ。しかし、このところの経済情勢を見ていると、「ブランド力のある会社=信用できる会社」という構図が成り立たなくなってきたなと感じてしまう。大手による不祥事が増えているためだ。
6月中旬にも大手の不祥事絡みのニュースが飛び込んできた。学生マンションの運営・管理で知られるジェイ・エス・イー(京都市下京区)の元従業員・羽木本直慶容疑者とその知人で、会社役員の吉田凌基容疑者の2人が、およそ27万件の顧客の個人情報を不正に持ち出し、一部を漏えいしたなどとして、不正競争防止違反の疑いで逮捕されたというのだ。
ジェイ・エス・ビーといえば、学生マンション運営大手として知られる上場(東証プライム市場)不動産管理会社だ。管理戸数8万1333戸は賃貸住宅業界全体の18位(全国賃貸住宅新聞調べ)に位置し、学生マンション専業としては最大手になる。まさに賃貸住宅業界を代表する会社の一つだ。そんな大手で、27万件にも及ぶ顧客の個人情報が持ち出されたというのだから呆れてしまう。
事件が発覚したのは今年1月。ジェイ・エス・ビー契約者から、同社と関係のない第3社によるウォーターサーバー、電気、インターネット等の勧誘をされたとの相談が多数寄せられたことから、同社が社内調査を実施。結果、羽木本容疑者が会社システムに不正アクセスし、顧客の氏名や年収などの個人情報を持ち出したことが明らかになった。同容疑者は持ち出したおよそ27万件の個人情報のうち2万9000件について、アクセス方法を吉田容疑者に教え、さらに吉田容疑者はこのうち1000件を電話勧誘事業者に漏えいした疑いが持たれている。同社は不正を把握した直後の2月3日付で、羽木本容疑者を懲戒解雇した。
それにしても気になるのは同社の情報管理の甘さとセキュリティーに対する意識の低さだ。上場会社のレベルからは程遠いと言わざるを得ない。というのも、情報を持ち出した羽木本容疑者は、同社の役員どころか正社員でもなく、単なるアルバイトに過ぎなかったからだ。アルバイトの立場で顧客情報の管理システムにアクセスできることがそもそも異常で、しかも27万件もの情報をダウンロードされてしまったというのだからお粗末という他ない。情報管理に詳しい専門家の意見も厳しい。
「顧客情報はいわば会社の大切な財産。アルバイトの身分でアクセスできるなんてことは普通あえません。仮に業務上必要な場合は、ダウンロードやコピーができないように何かしらのセキュリティーをかけておくものです。はっきり言って上場会社を名乗れるレベルではないですね」
今回はたまたま契約者から問い合わせがあったため、持ち出しからひと月ほどで不正を把握することができた。しかし、もし問い合わせがなかったらどうなっていただろうか。今も不正が続けられ、被害はさらに拡大していたかもしれない。
なぜこうも大手による不祥事が相次ぐのか。本来であれば、大手企業は業界を牽引しなければならない立場であるのに、何とも情けない話だ。レオパレス21にはじまり、大和ハウス工業、積水ハウス、三井不動産リアルティ、積水化学工業等々、本紙ではそれこそ毎号のように大手企業による不祥事を取り上げてきたが、ここまで大手に拠る不祥事が立て続けに起こるのは住宅・不動産業界くらいではないだろうか。このままでは業界の信用が失墜してしまう。大手には改めて兜の緒を締め直してもらいたいものだ。