新たなリフォーム・建て替え需要に期待の声
3月3日、リフォームや建て替え需要を後押しするかもしれない空き家関連の新たな法案が閣議決定された。改正法が成立すれば、窓や壁の一部が壊れているような管理不全の空き家は、税優遇の対象外となり、増税される。
「もう10年手入れしていないから壁は朽ちてボロボロ。とても人が住めるような状態じゃない。固定資産税はかかるが、税優遇を受けられているので、とりあえずそのまま放置している」
そう遠くない将来、こうしたことができなくなるかもしれない。政府が3月3日に閣議決定した空き家対策特別措置法改正案は、そんな可能性を秘めた法案だ。まだ正式に成立してはいないものの、阻む問題は何もない。住宅業界では新たなリフォーム需要、建て替え需要につながるとして、期待する声が多い。
改正法が検討されていることは、昨年12月末の経済紙の報道で明らかになった。2018年に時点で全国には849万戸の空き家があるとされ、このうち賃貸・売却用などを除く居住目的のない空き家は349万と、20年前からほぼ倍増している。しかもこのままいくと、2030年には470万戸にまで増える見通しだ。政府は、倒壊の可能性がある住宅の増加を抑制するとともに、リフォームや売却によって中古住宅市場を活性化させたいとの考えから、空き家に限っては固定資産税の住宅用地特例から除外する方針を打ち出した。改正案が正式に成立すれば、固定資産税は今までの4倍になる見通しだ。さすがに課税額が4倍になるとなれば、今までのように放置しておくわけにはいかないと考える所有者が増えるはずだ。おのずとリフォームや売却といった動きは増える。住宅業界が期待するのも当然と言える。
ただ一方で、改正法に対して危機感を募らせる関係者も多い。例えば、相続の際に、相続人間で空き家の擦り付け合いが生じる可能性が指摘されている。東京都内で相続を専門に手掛ける税理士は次のように警鐘を鳴らす。
「空き家は所有しているだけでお金がかかる。これまでは税優遇で何とかなっていたものが、改正法が成立するとできなくなってしまう。金食い虫を相続したいと思う人はそうはいない。空き家をだれが相続するかで揉めるケースは当然、出てくるだろう」
また、改正法が成立したところで空き家問題の根本的解決にはならないとする意見もある。空き家問題に詳しい専門家は、
「そもそも空き家がこれだけ増えたのは、更地にすると納税額が高くなってしまうという問題があるからです。逆に言えば、更地にすれば税金が安くなるようにすれば、空き家は減らせるんです。倒壊する可能性のある放置空き家を減らしたいのであれば、まずはこの問題から対処していくべきだと思います」
と指摘する。
一方で「住宅業界の活性化」という点に対する疑問の声も多い。リフォーム市場に精通するある専門家は次のように指摘する。
「リフォームや建て替えに繋がるのは、比較的立地条件の空き家に限られると思います。逆「最寄り駅から30分以上かかる」あるいは「周りも空き家だらけで住んでいる人がほとんどいない」というような建物は、税金が高かろうが安かろうが、もう空き家にしておくしかないと思います。改正法案の効果は限定的でしかないでしょうね」
果たして空き家特別措置法改正案は、住宅業界が期待するような効果を生み出すことができるのだろうか。今後の動向に注目したい。
3月3日、リフォームや建て替え需要を後押しするかもしれない空き家関連の新たな法案が閣議決定された。改正法が成立すれば、窓や壁の一部が壊れているような管理不全の空き家は、税優遇の対象外となり、増税される。
「もう10年手入れしていないから壁は朽ちてボロボロ。とても人が住めるような状態じゃない。固定資産税はかかるが、税優遇を受けられているので、とりあえずそのまま放置している」
そう遠くない将来、こうしたことができなくなるかもしれない。政府が3月3日に閣議決定した空き家対策特別措置法改正案は、そんな可能性を秘めた法案だ。まだ正式に成立してはいないものの、阻む問題は何もない。住宅業界では新たなリフォーム需要、建て替え需要につながるとして、期待する声が多い。
改正法が検討されていることは、昨年12月末の経済紙の報道で明らかになった。2018年に時点で全国には849万戸の空き家があるとされ、このうち賃貸・売却用などを除く居住目的のない空き家は349万と、20年前からほぼ倍増している。しかもこのままいくと、2030年には470万戸にまで増える見通しだ。政府は、倒壊の可能性がある住宅の増加を抑制するとともに、リフォームや売却によって中古住宅市場を活性化させたいとの考えから、空き家に限っては固定資産税の住宅用地特例から除外する方針を打ち出した。改正案が正式に成立すれば、固定資産税は今までの4倍になる見通しだ。さすがに課税額が4倍になるとなれば、今までのように放置しておくわけにはいかないと考える所有者が増えるはずだ。おのずとリフォームや売却といった動きは増える。住宅業界が期待するのも当然と言える。
ただ一方で、改正法に対して危機感を募らせる関係者も多い。例えば、相続の際に、相続人間で空き家の擦り付け合いが生じる可能性が指摘されている。東京都内で相続を専門に手掛ける税理士は次のように警鐘を鳴らす。
「空き家は所有しているだけでお金がかかる。これまでは税優遇で何とかなっていたものが、改正法が成立するとできなくなってしまう。金食い虫を相続したいと思う人はそうはいない。空き家をだれが相続するかで揉めるケースは当然、出てくるだろう」
また、改正法が成立したところで空き家問題の根本的解決にはならないとする意見もある。空き家問題に詳しい専門家は、
「そもそも空き家がこれだけ増えたのは、更地にすると納税額が高くなってしまうという問題があるからです。逆に言えば、更地にすれば税金が安くなるようにすれば、空き家は減らせるんです。倒壊する可能性のある放置空き家を減らしたいのであれば、まずはこの問題から対処していくべきだと思います」
と指摘する。
一方で「住宅業界の活性化」という点に対する疑問の声も多い。リフォーム市場に精通するある専門家は次のように指摘する。
「リフォームや建て替えに繋がるのは、比較的立地条件の空き家に限られると思います。逆「最寄り駅から30分以上かかる」あるいは「周りも空き家だらけで住んでいる人がほとんどいない」というような建物は、税金が高かろうが安かろうが、もう空き家にしておくしかないと思います。改正法案の効果は限定的でしかないでしょうね」
果たして空き家特別措置法改正案は、住宅業界が期待するような効果を生み出すことができるのだろうか。今後の動向に注目したい。