「三井のリハウス」元部長が懲戒解雇|コラム|住生活を支える新聞株式会社のWebマガジン
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2023.03.06

「三井のリハウス」元部長が懲戒解雇

「三井のリハウス」元部長が懲戒解雇
取引先の脱税行為に関与 数千万円の謝礼が発覚

 2月上旬、またもや大手不動産会社による不祥事が発覚した。報道によると、不動産仲介大手で、「三井のリハウス」のブランドで全国展開する三井不動産リアルティ(東京都千代田区)の元部長が、取引先から裏金を受け取っていたことして、同社から懲戒解雇されたという。
 今回の不正行為が明るみに出たのは、東京国税局が同社の取引先である不動産仲介業者、ビルドを、脱税に疑いで東京地検に告発したことがきっかけだった。元部長はビルドの脱税行為に協力してキックバックを受け取っておきながらそれを税務申告していなかったため、所得税の申告漏れを指摘されたのだ。受け取った金額は数千万円にのぼると見られている。なお、同社は報道があった時点で、ホームページ等で本件に関する発表を一切行っていない。「個人のプライバシーにかかわるため」とし、取材に対し「遺憾である」とコメントするだけにとどめている
 耳を疑いたくなるようなニュースだ。三井不動産リアルティといえば、不動産売買仲介実績ランキングで堂々トップをひた走る大手企業だ(住宅新新報調べ)。全国に290を超える店舗を展開し、その手数料収入は900億円を超える。取扱件数は1986年から36年連続で全国No.1だ。 そんな同社の部長職であれば、当然、かなりの年収を得ていたはずだ。それにもかかわらず、元部長は社内規則違反を犯し、多額のキックバックを受け取っていた。しかも、取引で便宜を図ったことによるものではなく、事もあろうに脱税行為に関わった見返りだったというのだから、救いようがない。「呆れてものも言えない」とはこのことだ。
 なぜ、このような不祥事が起こってしまったのか。言うまでもなく、一番の原因は元部長自身の社会常識に対する意識の低さだ。「日本を代表する不動産会社で働いている」という自覚もなかったのではないか。かなりの収入があったにもかかわらず不正に手を染めたことを考えると、もしかしたら金銭に対して相当強い執着があったのかもしれない。
 一方で「コンプライアンスに対する同社の取り組みが甘かったのでないか」と指摘する声もある。企業コンプライアンスに詳しい専門家によると、

「図体の大きな会社ほど働く人の数が多いため、コンプライアンスの徹底は難しくなります。部長という要職にあった人物が今回のような社内規則違反を犯したということは、社内にコンプライアンスがしっかり浸透していなかった可能性があります」

と分析する。
 気になるのは、元部長の社内規則違反は、今回だけだったのかという点だ。初めてにしては、受け取ったキックバックの金額が大き過ぎる。報道では、キックバックは「現金数千万円」にのぼったとされている。あくまでも想像でしかないが、この表現から推察するに、キックバックは1千万円程度ではなく、少なくとも2千万円、3千万円くらいはあったのではないか。当然、これだけの大金をキックバックとして受け取るとなると、心の準備や勇気がいるはずだ。初めて違反行為に手を染める人間にできるとはとても思えない。すべてをはっきりさせるためにも、元部長が関わった過去の取引や、親しくしていた不動産業者を徹底的に調べる必要があるだろう。
 繰り返される大手企業による不正行為。こうしたニュースを目にするたびに、「大手だから安心」だというバカげた考えはもう捨てるべきだと言いたくなる。