真説 賃貸業界史 第38回~ 工務店を対象にしたアパート建築FCの歴史~|コラム|住生活を支える新聞株式会社のWebマガジン
豆知識

2021.05.03

真説 賃貸業界史 第38回~ 工務店を対象にしたアパート建築FCの歴史~

真説 賃貸業界史 第38回~ 工務店を対象にしたアパート建築FCの歴史~
業歴10年前後の新興本部が台頭

 賃貸業界には、いくつものフランチャイズが存在する。誰もが頭に思い浮かべるのは、「アパマンションショップ」や「ミニミニ」などに代表される賃貸仲介チェーンだろうが、他にも賃貸管理や社宅仲介、原状回復などのFCもある。最近では任意売却のフランチャイズも登場した。本連載でも以前、賃貸マンションの4大フランチャイズについて紹介した(2019年7月号)。今回はその第2弾として、アパートフランチャイズの歴史についてまとめた。
 以前、紹介した賃貸マンションのFCは、基本的な構造はいずれもRC(鉄筋コンクリート)で、それをベースにしてローコスト化を図ったり、あるいは断熱性を向上させるなどして、特徴的な商品を作り出している。対してアパートのフランチャイズの商品の構造は多様で、木造もあれば鉄骨もあり、中には特殊な構造を採用しているFCもある。
 「リーベハイムFC」は、スチールハウス構造を特徴としたアパートのFCだ。埼玉県所沢市に本社を構える原田工務店(埼玉県所沢市)が発足させた。現在はFCの活動は実質的に停止しているが、かつてはかなり積極的に加盟店を募集していた。スチールハウスの工務店ネットワークと言えば日本製鉄(東京都千代田区)の「NS スーパーフレーム工法」がもっとも有名だが、組織的にはフランチャイズとは異なる。その意味では、原田工務店はスチールハウスのフランチャイズの先駆け的な存在だったと言えるだろう。
 愛知県小牧市に本社を置く三喜工務店も、かつてアパート商品のフランチャイズ本部を運営していた。同社はもともと、愛知・岐阜・三重・静岡などで地主向けの土地活用に注力してきた歴史がある。豊富な経験をもとに「サン・frends」というアパートを開発し、満を持してFC展開に乗り出した。しかし、同社も原田工務店と同様、現在はFCの活動は停止状態にあるようだ。ホームページ等でも、「FC」については確認することができない。
 フランスのプロヴァンス地方の住宅を模したアパートが特徴の「ネイブレイン」は、全国から寄せられた「うちでも取り扱わせてほしい」という声に応える形でスタートしたフランチャイズだ。それまでの常識を打ち破る圧倒的な存在感のアパートは、入居者からも高い評価を受け、施工物件のほとんどが完成前に全室満室になるほどの人気を博した。ただし、残念ながらこちらも、現在は加盟店募集をほぼ行っていないようだ。
 今も積極的に加盟募集を行っているアパートFCとして、よく名前が挙がるのは、GIFT(神奈川県横浜市)が主宰する「プリマCLUB」だ。ヨーロッパ調の外観が特徴のアパートは、オシャレなだけでなく、最新設備やオートロックなどを導入し、安全性にも配慮。特に女性からの支持が高く、退去が出てもすぐに満室になってしまうほどの人気ぶりだという。
 西日本を中心に加盟店開発を進めているのは、TAP(山口県下関市)が運営する「FEEL DESIGN+」だ。構造には、鉄骨やRCと比べて建築コストが安い木造を採用。さらにデザインで差別化を図ることで、高い収益性を実現している。
 唯一無二のガレージ付きアパートをFC展開しているのはLDK(東京都中央区)だ。同社が主宰する「DAYTONA HOUSE×LDK」は構造体に軽量鉄骨を採用。主力商品の「GLB(ガレージ、リビング、ベッドルームの意)」は、1階部分に、スタンダードタイプでもバイク3台、もしくは車1台+バイク1台が駐車できるほどの大型ガレージを配備。郊外地の土地活用にも適しているとして高い評価を受けている。
 現在、業歴の長いアパートFCは実施的に加盟開発を行っていないところが多いが、その代わりに「プリマCLUB」や「FEEL DESIGN+」「DAYTONA HOUSE×LDK」といった、業歴10年前後の新興FCの台頭が目立つ。今後も機会があれば、他のアパートFCについてもとりまとめてみたい。