関西マンション業界の“ドン” プレサンス社長逮捕!|コラム|住生活を支える新聞株式会社のWebマガジン
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2020.02.03

関西マンション業界の“ドン” プレサンス社長逮捕!

関西マンション業界の“ドン” プレサンス社長逮捕!
1万3900平米の土地取得が狙いか!?

 令和最初の新春が迫った昨年の12月16日、関西不動産業界に衝撃が走った。東証1部に上場する不動産会社、プレサンスコーポレーション(大阪市中央区)(※以下プレサンス)の創業者である山岸忍社長(当時)が、学校法人の土地取引に絡み、巨額の横領があったとして大阪地検特捜部に逮捕されたのだ。事件を受けて山岸氏は社長の座を辞任。同月23日付で、副社長を務めていた土井豊氏が新社長に就任した。
 事件のあらましはこうだ。2016年12月、プレサンスは学校法人明浄学院との間で、同法人が大阪市内で運営する明浄学院高校の敷地約1万3900平米を購入する協定を締結。翌年、不動産会社ピアグレースを仲介として手付金21億円を支払った。しかし、同法人の大橋美枝子元理事長は、複数の口座を経由させてこの手付金を再びピアグレースに還流。ピアグレースはさらに、山岸容疑者の口座に21億円を送金した。
 山岸容疑者は横領の容疑を否認しているが、逮捕前の社内調査で、「土地取引を円滑に進めるため」として、自身の口座に21億円を送金させたことを認めている。しかし、この言い分にはどう考えても無理がある。仮に何かしらの事情で返金させる必要があったとしても、それはあくまでも企業間で行われるべきだ。ところが今回のケースでは、21億円が送金されたのは、会社の口座はなく、山岸容疑者個人の口座だった。しかも山岸容疑者の口座に送金されるまでに、わざわざ複数の口座を経由している。これはどう考えても不自然だ。
 それにしても、山岸容疑者はなぜこのような事件に手を染めてしまったのか。一般人にとっては、21億円は一生働いても手に入らない目もくらむような大金だが、東証1部上場の創業者である山岸容疑者からすれば、罪を犯してまで手に入れたい金額ではないはずだ。手口にしても、金の流れ自体はそれほど複雑ではなく、調べられればすぐに解明されてしまうことは、素人目にも明らかだ。ある関係者は証言する。

「目的はお金ではなく、明浄学園の土地でした。事件の舞台となった土地は、あべのハルカス近くの一等地。プレサンスに限らず、マンションデベロッパーなら誰もが喉から手が出るほど手に入れたい一等地です」

 事件を共謀した大橋元理事長に対して山岸容疑者は、学校法人を買収するための資金として、18億円もの大金を貸し付けていたことが、事件発覚後に明らかになった。なぜ、これほどの大金を貸したのか。2人がどの程度の仲だったかは不明だが、普通に考えればこれは不自然だ。実は、この大金の貸付こそが、山岸容疑者が件(くだん)の土地を手に入れるために打った布石だったと指摘する声がある。つまり、18億円を貸した大橋氏が目論見通り明浄学院の理事長になれば、同法人が所有する大阪市内の広大な一等地を、他社と競合することなく手に入れることができるという思惑があったというのだ。しかも貸し付けた資金は、プレサンスが支払った手付金を還流させれば、満額手元に戻ってくる。こう考えれば、すべてはスッキリする。実際、明浄学園の土地にはそれだけの価値がある。仮に事件が発覚せずに、プレサンスが高校跡地を取得し、マンションを開発していた場合、プロジェクトは同社史上最大級のものになる予定だったという。社運をかけた一大プロジェクトのために、是が非でも手に入れたかった土地だったというわけだ。しかし、山岸容疑者の逮捕によって、計画は頓挫。今後、1万3900平米もの土地がどうされるのかは、現時点では不明だ。
 山岸氏と言えば、日本エスリードの荒巻杉夫社長とともに、大京出身者として関西マンション業界を取り仕切っている人物。特に投資用マンション市場では絶大な影響力を持っているとされる。大京時代の後輩で、大阪市内でワンルームマンションデベロッパーを経営するA社長は、

「関西の新興デベロッパーの経営者には大京出身者が多い。そのため、創業期には、プレサンス社の物件を仲介させもらうなど、山岸先輩には色々とお世話になっています。不動産向け融資に積極的な金融機関への影響力も強いため、誰も逆らうことはできません」

と証言する。まさに関西マンション業界の“ドン”だ。それだけに今回の逮捕劇が関西不動産業界に与える影響は計り知れない。好調だったプレサンスの業績への影響も懸念される。今後も関西不動産業界の動向から目を離せない。