すてきナイスグループ 創業家出身の元会長逮捕! 粉飾決算は6年間にも及ぶとの指摘も|コラム|住生活を支える新聞株式会社のWebマガジン
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2019.09.16

すてきナイスグループ 創業家出身の元会長逮捕! 粉飾決算は6年間にも及ぶとの指摘も

すてきナイスグループ 創業家出身の元会長逮捕! 粉飾決算は6年間にも及ぶとの指摘も
大幅赤字が一転、第4四半期で黒字に転換の謎

 またもや大手企業による不祥事が発覚した。今度は粉飾決算だ。東証一部上場で、建築関連資材の販売や住宅分譲、賃貸管理・仲介などを手掛ける“すてきナイスグループ”の元会長平田浩一郎を含む元経営陣3名が7月25日、2015年3月期の決算を粉飾したとして、金融商品取引法違反の疑いで横浜地検に逮捕された。
 容疑は、平成27年3月期決算で、赤字を隠すために架空の売り上げ約32億円を計上するなどして利益を水増しし、虚偽の有価証券報告書を提出したというもの。15年3月期の有価証券報告書を確認すると、第1四半期は▲10億8600万円、第2四半期は▲17億4400万円、第3四半期は▲26億3300万円と、それぞれ大幅な赤字だったにもかかわらず、通期は一転して4億8800万円の黒字に転換している。合計約55億円もの赤字を、たったの3ヶ月で巻き返し、さらに5億円もの利益を出したことになる。いかに建設・不動産業界を取り巻く環境が好調だとは言え、これは確かに異常だ。
 手口はこうだ。実質的に平田元会長が支配するペーパーカンパニーに不動産を約30億円で売却したと装い、子会社の売上を不正に水増しした。指摘を受けた同社はすぐに第三者委員会を設置してこの件について調査。結果、この売上については会計上認められないとの判断を下された。これを受けて地検は、一連の行為が赤字を隠すために平田前会長の指示によって行われたものとみなし、逮捕に踏み切ったという。
 仮に今回の件が最終的に粉飾だと認定された場合、同社にはさらなる疑惑がかけられることになる。なぜなら、同様に第3四半期まで赤字だったものが最終的に黒字に転換したケースが他にもあるからだ。有価証券報告書を確認すると、驚くことに14年以降毎年のように同様のパターンが確認された。もしこれらも粉飾によるものだとしたら、すてきナイスグループは実に6年にもわたり、不正を繰り返していたことになる。

現社長は「通常取引だった」と疑惑を全面否定

 一連の事態について杉田社長は「通常取引の一環だった」と不正を全面否定している。第4四半期で大幅赤字が突如として黒字に転換した理由については、「不動産、住宅関連事業は年度末に引き渡すことが多いためだ」と説明する。確かにすてきナイスグループは近年、住宅事業に注力している。杉田社長が言うように、年度末にある程度まとまった売り上げが入ることもあるだろう。それでも、毎年のように最後の段階になって数十億単位の赤字がいきなり黒字に転換するという話には無理がある。もしその論理が成り立つのであれば、他の住宅会社も同じような売り上げの変遷を辿っているはずだ。しかし、実際にはそうはなっていない。
 不正はなぜ行われたのか。通常、同社のような東証一部に上場する大企業であれば、しっかりした内部統制が図られているため、こうした不正は起こりにくい。しかし、すてきナイスグループを実質的に支配していたのは創業家出身の恒一郎氏だ。ガバナンスや内部統制は機能不全状態で、実態はオーナー会社とほとんど変わらない雰囲気だったようだ。ある社員によると「人事権も含め、強大な権力を有していた。役員であっても口答えすることは許されなかった」と証言する。「創業家が実権を握り続けるとロクなことがない。もちろんそれでうまくいっている会社も世の中には多くあるが、大手ほど面子(めんつ)にこだわるため失敗するように思う。先のLIXILグループの騒動でもそれは明らかだ」と厳しい意見を口にする有識者も多い。
 住宅・不動産市場で相次ぐ大手企業による不正。住宅・不動産市場が本当の意味で健全化する日は、果たして一体いつ来るのだろうか。