真説 賃貸業界史 第19回「国内初の不動産フランチャイズは38年前に誕生」|コラム|住生活を支える新聞株式会社のWebマガジン
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2019.08.12

真説 賃貸業界史 第19回「国内初の不動産フランチャイズは38年前に誕生」

真説 賃貸業界史 第19回「国内初の不動産フランチャイズは38年前に誕生」
「アパマンショップ」は業界の有力者の支援で急成長

 アメリカで誕生したフランチャイズのビジネスモデルが日本に上陸したのは、今から50年以上も前のこと。洋菓子チェーンの不二家が、1963年に京都でFC1号店を開店したのが最初だと言われている。以降、業種業態を問わずさまざまな企業が、独自のブランドやビジネスモデルを広げるためにこの事業形態を導入。望むような成功を得られないまま消滅してしまったブランドも数え切れないほどあるが、現在でも全国で1200種類を超えるフランチャイズチェーンが存在している。今回は、不動産業界におけるフランチャイズの歴史について振り返る。

-不動産のフランチャイズチェーンでどこを知っているか?-

 こう聞かれてみなさんは、真っ先にどこの名前を思い浮かべるのか。おそらく、多くの人は「アパマンショップ」や「エイブル」「センチュリー21」あたりを想像するのではないだろうか。「ミニミニ」や「ピタットハウス」「ハウスドゥ」などを思い浮かべる人もいるかもしれない。しかし、「日本初の不動産フランチャイズはどこか?」と聞かれて、即座に答えることができる人は、そうはいないはずだ。答えは「住通チェーン」、現在の「ERA(イーアールエ) LIXIL不動産ショップ・LIXIL賃貸ショップ」だ。「すぐに分かった」という方は、おそらくは業界関係者か、過去に何かの縁で業界の歴史について調べたことがあるという方だろう。
 「住通チェーン」が、国内最初のフランチャイズチェーンとして展開を始めたのは1981年。千葉県船橋市に大型ショッピングセンター「ららぽーと」が開業し、紙おむつの「ムーニー」やアイス菓子の「ガリガリ」などのメガヒット商品が数多く誕生した頃だ。ちなみにこの年には、現在フランチャイズ業界で店舗数2位の規模を誇るファミリーマートも事業を開始している。
 当時の賃貸業界は完全売り手市場で、物件情報を多く抱える不動産店の前には長蛇の列ができることも珍しくなかった。不動産業者は、個人経営のいわゆる“不動産屋さん”や、よろず屋やタバコ屋、酒屋などをやりながら副業的に不動産業を営む業者が中心で、全国規模のチェーンはおろか、多店舗展開している業者さえ珍しかった。そうした状況の中で誕生した「住通チェーン」は、閉鎖的だと言われる不動産業界の中で次第に存在感を高めていった。2002年には、全国で510店舗を誇る巨大チェーンに成長した。その後、LIXILグループ入りしたタイミングで、世界32ヵ国に展開するグローバルチェーンである「ERA」に商号を変更。現在は、ERAチェーンの店舗ブランドとして「LIXIL不動産ショップ」と「LIXIL賃貸ショップ」を展開している。
 先述した「ERA」を含め、世の中には世界を股にかける不動産フランチャイズがいくつか存在する。その中の一つである「センチュリー21」は、伊藤忠商事が設立したセンチュリー21・ジャパンがFC本部となって1983年に日本に上陸した。売買を主力とする不動産チェーンとしては、現在、国内最大級のネット―ワークを有する「センチュリー21」は、事業開始当初からフランチャイズに特化した事業展開を行っている。そのため直営店ゼロ。これは、他業種他業態も含めた国内フランチャイズチェーンの中で稀有な存在だ。
 「住通チェーン」や「センチュリー21」が売買を主体にチェーン展開を進める一方で、賃貸専門の不動産フランチャイズとして勢力を拡大していったのが「エイブル」だ。1968年創業の大阪建設を前身とする「エイブル」は、30年近くにわたり基本的に直営展開一本でチェーン展開を進めていたが、95年に満を持して加盟店募集をスタート。直営店未進出エリアの地方都市を中心に加盟店を増やし、瞬く間に全国規模の店舗ネットワークを築き上げた。一時期、加盟店募集をやめていた時期もあるが、現在は再開している。
 「エイブル」と並ぶ賃貸専門仲介チェーンである「アパマンショップ」が誕生したのは1999年。他の不動産チェーンと比べると事業を開始した時期は遅かったものの、賃貸業界で多大な影響力をもっていた面々の後押しもあり、スタート当初から驚異的なスピードで加盟店を進め、店舗数において、瞬く間に業界トップクラスに上り詰めた。初期の頃は、他ブランドからの看板替えも多く、例えば滋賀県で「エイブル」を多店舗展開していたエルアイシーや、仙台市内で「住通チェーン」を出店していた老舗有力不動産会社、松栄不動産の「アパマンショップ」加盟は、当時、業界ではちょっとしたニュースになった。有力加盟店の退会は、その地域におけるブランドの影響力の低下につながるだけに、常に大きな注目を集める。
 賃貸専門チェーンの「ミニミニ」も、不動産業界を代表する一大チェーンの一つだ。同チェーンで特徴的なのは、FC店の多くが関西圏に集中していることだ。特に多いのは大阪、兵庫で、しかも限られた業者で独占的に多店舗展開を進めている。中には1社で20店舗以上を出店している加盟店もあるほどだ。これは他の不動産フランチャイズにはあまり見られない光景だ。理由については第10回(2018年9月号「連綿と続くエイブル人脈」)で執筆しているので、そちらを参考にしてもらいたい。
 ここで紹介したブランド以外にも、「ピタットハウス」や「イエステーション」「ハウスドゥ」、「賃貸館」、「レントライフ」「エリッツ」「リブマックス」「賃貸住宅サービス」「リマックス」など、不動産業界には数多くのフランチャイズチェーンが存在する。最近では、ヤマダ電機の「ワントップ」が特に精力的に加盟店を募っている。一方で、「コールドウェルバンカー」のように、海外では圧倒的な知名度を誇りながらも、日本での展開に失敗して撤退してしまった不動産チェーンもある。機会があれば、これらのチェーンの歴史についても紹介したい。