自然災害鑑定士に聞いてみた「夏に頻発する豪雨、大雨 水災被害の補償は火災保険で」|コラム|住生活を支える新聞株式会社のWebマガジン
豆知識

2019.08.05

自然災害鑑定士に聞いてみた「夏に頻発する豪雨、大雨 水災被害の補償は火災保険で」

自然災害鑑定士に聞いてみた「夏に頻発する豪雨、大雨 水災被害の補償は火災保険で」
火災保険の補償は火事だけじゃない!

 台風が頻発する8月、9月は、大雨や集中豪雨による住宅被害が急増する時期です。みなさんは、ご自宅が被害受けた場合の備えはどうされていますか?「備えと言ったって、いったい何をすればいいの?」という方は、まずは加入されている火災保険の補償内容を確認してみることをお勧めします。火災保険を、「火災による被害だけを補償するもの」だと思い込んでいる方もおられますが、実は大雨などによる水災被害も補償対象に組み込まれているものがあります。今回は、火災保険の水災補償について見ていきたいと思います。


「集中豪雨で裏の山が土砂崩れを起こして家が被害を受けた」
「大雨で川が氾濫して、家が床下浸水してしまった・・・」

ここ数年、日本ではこうした水災被害が相次いで起こっています。都心部でも“ゲリラ豪雨”による都市型洪水が頻発していることから、水災のリスクは場所を問わず、年々高まりつつあります。
 ご存知ない方が多いのですが、こうした自然災害でご自宅が被害を受けた場合、修理にかかる費用は火災保険で補償されます。「火事だけじゃないの?」と驚かれる方もいると思いますが、実は火災保険の補償範囲は意外と広く、水災や風災なども補償の対象にすることができます(標準で付帯しているものもある)。保険金額は、損害額から免責金額を差し引いて算出されます。ただし、ご自宅が水災に該当する被害を受けたからと言って、すべての損害が補償されるわけではありません。保険金を受け取るためには、いくつかの要件をクリアする必要があります。

すべての床下浸水が補償されるわけではない!

 川近くの低地では、台風や集中豪雨で川が氾濫し、家屋が浸水することがあります。もちろん、これも水災に当たりますが、被害状況によっては保険の適用を受けることができない場合があります。水災の支払要件には、「床上浸水または地盤面から45㎝を超えて浸水した場合」と書かれています。つまり、床上まで浸水した場合はすべて保険の適用を受けることができますが、浸水が床下だけだった場合、地盤面から45㎝に満たないと保険金を受け取ることはできません。こう書くと、「受け取れないケースが多いのでは」と心配される方もいると思いますが、床上が地盤面から45㎝以上ある家はそれほど多くないので、過去の事例を見る限り、浸水被害で保険金を受け取れなかったというケースはほとんどないようです。

補償対象は「建物」「家財」の2種類

 支払要件にはもう一つ、「再調達評価額の30%以上の損害を受けた場合」という項目があります。床上浸水、もしくは地盤から45㎝以上の浸水がなかったとしても、同じ建物を再取得するのにかかる費用3000万円に対し、1000万円程度の損害があると認定されれば保険金は下ります。豪雨で土砂崩れが発生し、外壁や柱が傾くなどの被害は、こちらの要件で保険が適用されるかどうかの判断が下されます。
 それでは、実際にどんなものが補償の対象となるのでしょうか。これについては、保険の対象を「建物」「家財」「建物と家財」のどれにしているかによって異なります。

「建物」
・一戸建て・マンション
・建具(扉、窓など)
・塀、門扉など
・植栽
・畳・床
・物置・車庫
・他

「家財」
・家具
・家電製品
・衣類
・自転車等

保険会社によって、分類に多少の差はありますが、大まかには以上のように分けられます。仮に「建物」のみを補償対象にした保険に加入していた場合、冷蔵庫やテレビの修理・買い替え費用を保険金として受け取ることはできません。逆に「家財」のみの保険で、建具を直すこともできません。浸水は「建物」「家財」の両方が被害を受ける可能性が高いので、どちらか一方を選ぶよりも両方を対象に指定置いた方が無難だと言えるでしょう。
 また、直接の雨で被害を受けても、補償の対象外になるものがあります。例えば、雨の吹込みや漏入による被害は、建物の老朽化が原因であることが多いため、補償の対象外になります。ただし、台風で屋根が破損したり吹き飛ばされたりし、そこから雨水が屋内に侵入した場合は、水災ではなく風災補償の対象となります。よく誤解されるのが車です。勘違いされている方も多いのですが、こちらは家財ではないため火災保険の補償を受けることはできません。また、土砂で自宅の塀が倒壊し、隣家に被害を与えた場合も、水災被害ではあるものの火災保険で補償されませんが、自然災害による不可抗力のため賠償責任も発生しません。
 保険金の請求期限は、事故が起こってから3年です。過去に被害に遭ったにもかかわらず、火災保険が適用されることを知らなかったために申請ができていないという方は、今からでも遅くはありません。速やかに手続きを取ることをお勧めします。自然災害に関するご相談はお近くの自然災害鑑定士まで。