フランチャイズ最新事情ルポ~ 競合に悩まされない「熱帯魚水槽メンテナンス」~|コラム|住生活を支える新聞株式会社のWebマガジン
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2019.03.11

フランチャイズ最新事情ルポ~ 競合に悩まされない「熱帯魚水槽メンテナンス」~

フランチャイズ最新事情ルポ~ 競合に悩まされない「熱帯魚水槽メンテナンス」~
高齢化、多様化する社会での潜在的需要も期待

 例えば病院の待合室などに置かれた、色とりどりの熱帯魚が泳いでいる水槽を見て、思わず日ごろの疲れが癒やされたという経験は、誰にでも一度はお持ちではないでしょうか。中には「私も自宅で熱帯魚を飼ってみたい」と思った方もいるでしょう。
 しかしながら、熱帯魚を飼うことや、きれいにディスプレイされた水槽をこまめにメンテナンスすることは、手間も根気も必要です。熱帯魚の水槽を取り入れたいと思ったときに、「リース、レンタルで取り扱っている業者はいないかな?」という需要は少なくないはずです。
 実は、この熱帯魚の水槽をリースとして取り扱っている業者は、決して多くはないのです。今回は広島・岡山を中心に熱帯魚の水槽リースやメンテナンスなどを展開するユーアンドアイの佃育也さんに取材して、創業の経緯や事業の内容、今後の展開などをうかがいました。
 もともと熱帯魚愛好家だった佃さんは、広島では熱帯魚の店が大阪などと比べると規模も小さく数も少ないことや、熱帯魚を飼いたくても飼育が難しいと感じている人が多いことなどに着目し、メンテナンス付きの熱帯魚水槽のリースを事業としてできないかと考えるようになったそうです。
当初はそのような事業をフランチャイズ(FC)で展開している会社のFC資格を取り営業を始めたものの、内実は その会社に熱帯魚の知識を持つ人がいない、指示された営業方法なども具体的でない、当初聞いていた「リース先の紹介」もないなどの困難に見舞われました。そんななかで1996年3月頃から家族や友人の協力を得てテレアポなどを行い、リース契約先を獲得していきました。美容室やスナック、喫茶店、保育園、病院、歯科医院といった業種に営業し、なかでも病院や歯科医院との相性が良かったためそれらに注力するようになり、1年で約40件の契約を獲得しました。当時契約し、今も継続している医院もあるとのことです。
 3年目に入った頃に契約先が70件を超えたため、専門のスタッフを雇用し、その後一時120件以上になり、スタッフを常時2人にしました。現在は約90件のリース先があり、個人経営の医院の待合室や、国立病院、県立病院の緩和ケア施設、幼稚園、保育園、老人福祉施設などで、そのほか個人宅などが主です。
 件数が増えたきっかけというのは、実は佃さんは新規開拓の営業訪問は2年半で数えるほどしか行っておらず、契約者から顧客を紹介されるということがほとんどだそうです。熱帯魚水槽を置いているリース先がショールームの役割を果たし、それを見ての反響を受けることがとても多いとのことです。
 ユーアンドアイのFC店は、エリアは人口100万人規模以上の主要都市や、道路交通門が発達している県を想定し、当然ですが「趣味で熱帯魚を飼育している人や、その趣味が高じてショップを経営しているような人」(佃さん)からの応募を期待しているそうです。
 事業をスタートするには、加盟金と研修費用、20件の顧客獲得のための開業準備指導料、保証金(預かり金)がかかりますが、以降はガソリン代くらいです。その後は1件につき2万円という標準的な月額リース料金のうち、ロイヤリティーは本部から譲り受けた顧客の場合が50%、加盟店が獲得した顧客の場合が10%で、新規を獲得するほどに収益を上げることができます。
 例えば、本部からの指導で得た20件の顧客でスタートし、月に8件ずつ増やしていった場合の半年の収益モデルは下記のようになります。

経過 /リース件数   /収益計算式  /  収益

1ヶ月目 20件    20件×2万円×0.5=20万円
2ヶ月目 28件    20件×2万円×0.5+8件×2万円×0.9=34.4万円
3ヶ月目 36件    20件×2万円×0.5+16件×2万円×0.9=48.8万円
4ヶ月目 44件    20件×2万円×0.5+24件×2万円×0.9=63.2万円
5ヶ月目 52件    20件×2万円×0.5+32件×2万円×0.9=77.6万円
6ヶ月目 60件    20件×2万円×0.5+40件×2万円×0.9=92万円

熱帯魚水槽のリース事業のメリット、デメリットやその解決法について、佃さんは次のように話してくれました。

「当社はリース継続が長くなると、年々料金が安くなるというシステムを採用しているので、一度契約が決まるとだいたいは10年以上続きます。毎月リース料が長期間入ることで、安定した経営が見込めます。また、在庫を多く抱える必要がなく、店舗を持たずに始められるので、簡単に一人でもスタートできます。契約先が60件までなら一人でできるでしょう。また、私の例からもわかるとおり、一度新規開拓すると、その後は顧客からの紹介や電話などの反響に対応するかたちで新規が増えていく、いわゆる『独り勝ちビジネス』といえるでしょう。また、必要なものの仕入れ原価も少なくて済むので、利益率が高いです。
 一方、『誰でも始められる』ビジネスなので競合しやすいのでは?という懸念がありますが、そこは価格競争をせずに顧客との人間関係をしっかり築くことで払拭できます。また、生き物相手のため毎日対応しなければならず、そのため旅行などに行けなくなる、ということも考えられますが、この点はスタッフを雇えば解消できます。逆に、この仕事は自分の都合に合わせてスケジュールを組めるので、時間の自由がきくという点もメリットです」
 また佃さんは、熱帯魚水槽について「高齢化やストレス社会、単身世帯の増加などが言われる現代社会で、非常にニーズの高い存在」と考えています。

「99年7月28日付スポーツ報知に、『アルツハイマー病の患者に色とりどりの魚を見せたところ落ち着いて意識もしっかりし始めた』という米国の大学の研究結果が載っていました。日常のストレスや単身の孤独などについても、熱帯魚水槽を見て癒やしているという方も多くいます。また、時代は『IQからEQへ』というように、自分の子供の教育に情操教育を重んじる親も増えたことから、幼稚園などへの設置も増えました。
 一方で、大型ホームセンターやペットショップが熱帯魚を扱い、熱帯魚専門店はどんどん追いやられています。わたしたちはそのようななかで、熱帯魚の飼育方法や技術を持った専門家として、価格競争に巻き込まれることなく、社会的ニーズに対応して長期で安定的にリース業を展開していければと考えています」(佃さん)

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