迷走するLIXILグループ 今期業績を大幅下方修正|コラム|住生活を支える新聞株式会社のWebマガジン
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2018.12.03

迷走するLIXILグループ 今期業績を大幅下方修正

迷走するLIXILグループ 今期業績を大幅下方修正
住設大手LIXILグループが混迷を極めている。11月1日、2年以上にわたりトップとしてグループを率いていた瀬戸欣哉氏が突如として社長兼CEOの座を解かれた。事実上の更迭だった。
 瀬戸氏は住友商事を経て、工具のネット販売会社MonotaRO(モノタロウ)の創業に参画。2001年に社長に就任し、同社を東証1部上場企業へと育て上げた。その経営手腕を見込んだLIXILグループ創業家2代目の潮田洋一郎オーナーに招かれ、16年6月に社長の座に就いた。世間ではいわゆる“プロ経営者”として認識されている人物だ。
 実はLIXILが外部から招聘したプロ経営者を解任するのは今回で2回目のことだ。瀬戸氏の前任者で、米ゼネラル・エレクトリック出身の藤森義明氏も志半ばで解任の憂き目に遭った。もっとも藤森氏の場合は、業績不振に加え、中国の孫会社による粉飾決算騒動で約660億円もの巨額損失を出したことが引き金となった。株主の支持も失い、解任は当然の結果だった。
 それでは今回の場合はどうか。業績については依然として厳しい状況が続いていた。瀬戸氏の退任に先立ち、10月22日には今期業績の下方修正を発表。19年3月期の連結純利益は前期比97%減の15億円に、事業利益も前期比40%減の450億円にそれぞれ大幅修正した。潮田オーナーは「決算が解任の直接的な原因ではない」と否定したものの、業績不振が理由であることは誰から見ても明らかだ。このまま経営の舵取りを任せても状況は好転しないと判断されたのであれば、解任は自然の成り行きだったのだろう。
 なぜLIXILはこれほどの不振に陥ってしまったのか。新築着工件数の落ち込みや天候不順・自然災害による工事の遅れ、海外事業の伸び悩みなど、いくつかの要因が考えられる。ある報道によると、瀬戸氏が4月に導入した、取引額に応じて納入単価を決める「新取引制度」によって現場が大混乱に陥った影響も大きいようだ。
 だが根本的な原因は他にもあったのではないか。そもそも、スタートアップ企業を上場に導いたとはいえ、経営再建の実績はないに等しい。年商1兆6000億円を超える超巨大グループの立て直しを任せる人材として、瀬戸氏は果たして適任だったのか。
 これは知名度についても言えることだ。瀬戸氏が有名なプロ経営者であることは間違いないが、「稲盛和夫」「原田泳幸」「澤田貴司」のような圧倒的なネームバリューがあったわけではない。業績不振でモチベーションが低下しているグループを率いるには、カリスマ性が不足していたと言わざるを得ない。これではモチベーションが上がるわけがない。先述した「新取引制度」にしても、もし稲盛和夫氏の指揮下でやるとなったら、もしかしたらうまくいったかもしれない。人選そのものを誤ったとするならば、潮田オーナーの責任も大きいはずだ。
 2代続けてのプロ経営者で失敗したことから、潮田オーナー自身も会長兼CEOに復帰した。来年4月に山梨広一社外取締役が社長に就任するものの、実質的には潮田政権だ。今さらオーナーが経営に参画したところで事態が好転するとはとても思えない。以前のような圧倒的なカリスマ性があるわけでもない。果たしてLIXILはどこに向かっているのか。迷走はまだ続く。